八幡side
八幡「……こっちに来るのも珍しくないってのに、忙しさを理由に来れなくて悪かった。今日は俺のレースじゃなくて後輩のレースだから時間があってな、やっと来れたよ……言い訳になるけど、どのレースも重要なレースばかりだった上に担当の妹がわがままな奴でな。今日こっちに居るのは俺だけだから、念入りに掃除もしたし供え物や花も持って来た……婆ちゃんが勝ったダービーと菊花賞、俺も勝ったよ。残すはオークスだけだ。まっ、今のは俺が勝ちたいレースを口にしただけだから気にしないでくれ。それに婆ちゃんが出られなかった皐月賞や天皇賞も勝った……婆ちゃんが現役の頃にどのレースに出たくてどのレースを勝ちたかったのかなんて分からないけど、次の有マ記念……もし婆ちゃんが引退する時期を早めていなかったら勝ちたいレースだったんじゃないか?だから今年の有マ記念は勝ちに行く、だから見ていてくれ。」
やっと来られた……ここ数年ずっと来れてなかったからな。親父達が来ているのかどうかは分かんねぇけど、婆ちゃんの墓参りに行こうって連絡も来ないからな。もしかしたらだけど、俺が来るまで本当に誰も来ていないのかもしれない。
八幡「……じゃ、また来る。その時にはまた土産話を用意しておくから。」
さて、俺も京都レース場に向かうか。
八幡「………」テクテク
マイト「っ!」ピタッ!
八幡「どうも。」
マイト「あ、あぁ……」
この人は……参拝かな?けど何だろう、懐かしい感じがする。
ーーー京都レース場ーーー
八幡「失礼します。」
メインT「おう、来たか。」
後輩「お、お疲れ様です!」
八幡「……お前はやっぱり緊張しているんだな。もしかしてどのレースでもそうなんじゃないのか?」
後輩「だ、だってGⅠの舞台じゃないですか。」
八幡「秋華賞に比べたらまだ優しい方だろ、トリプルティアラが懸かったレースに比べたらって言ったら失礼かもしれないが、その通りだろ?」
後輩「いや、何も変わんないです。」
……何かもう、コイツが良い奴だってのが分かっちゃうんだけど。
八幡「クィーンとブエナの調子はどうです?」
メインT「前回は大きく負けちまったからな、今日はそれを踏まえた上で勝ちに行くつもりだ。勿論、調子は良い。」
後輩「僕達も他の誰にも負けないくらいの自信はありますよ。」
八幡「それじゃあ2人の担当がどんな走りをするのかお手並み拝見ってところですね。」
メインT「お前のところはどうなんだ?次は有マ記念だろ、2ヵ月ってのは長くもあっても自覚もあるから少し調整が難しいだろ?」
八幡「有マ記念の日に最高の調整が出来るように組んでますので、今のところは心配ありません。不安があるとすれば、職場見学会だけですね。」
後輩「あっ……」
八幡「ん?おい、何だ今の反応……まさかお前………」
後輩「え、えっと……今日のレースの事ばかり考えていたのですっかり忘れてました………」
メインT「お前………」
八幡「まぁメニューを組んでるのは俺なので大丈夫ですよ。それに、それだけレースやウマ娘に対してまっすぐ向き合ってるって事ですから。まぁ少しの時間だけメインを任せる事にはしてるけどな。」
後輩「が、頑張ります……っ!」
そして、時間は進んで遂にエリザベス女王杯発走の時刻となった。
状況『やや冷気が感じられるようになった京都レース場、ファンファーレが流れました。海外からの参戦を含めた18人の乙女達……2,200mの京都レース場、トリッキーなコースで火花散らします。さぁ今1番人気、16番ブエナビスタが収まりました!次々とウマ娘が収まり、最後に大外のレインダンスが収まりました!さぁ行きましょう、エリザベス女王杯全員のゲートイン完了です!』
ガッコンッ!!
状況『今、スタートしましたっ!!横に広がった、さぁ先行争い!内からクィーンスプマンテが上がって行く。その外からテイエムプリキュアも2番手に上がって行く構え!6万人を超える大歓声に包まれながら1コーナーへと向かって行きます!クィーンスプマンテとテイエムプリキュアがレースを引っ張ります!そしてブエナビスタは此処に居ました!後方3番手よりレースを運んでおります!』
ここまでは想定通り……クィーンが逃げてブエナが控える形になったな。
状況『1コーナーから2コーナーに入って、先頭はクィーンスプマンテ。2バ身後ろにテイエムプリキュア、8バ身開いて怖い所にリトルアマポーラ4番手にチェレブリタ、その後ろブラボーデイジーと内からジェルミナル!』
おいおいどんだけ飛ばすんだあの2人……もう10~15バ身は離してるぞ?メインTさんが言ってたそれを踏まえた上でってこういう事なのか?
実況『3コーナーの勝負所!さぁゴールまで後800mで前2人は後続を千切っている!問題は3番手だ!リトルアマポーラ3番手、カワカミプリンセス早くも4番手。その間にブラボーデイジー!さぁ前2人は600mの標識を通過して20バ身と千切っている!後方集団懸命に差を詰めて、ブエナビスタが3番手に上がってきた!3番手に上がる!直線を向いて、まだクィーンスプマンテとテイエムプリキュアが粘っている!後300mは切っている!ブエナビスタは届くのかっ!?』
ブエナ「くっ……はあああぁぁぁぁぁっ!!」
実況『ブエナビスタは届くのかっ!?これはとんでもない波乱になるのかっ!?これがレースだっ!これがレースの恐ろしさっ!!ブエナビスタ猛追っ!ブエナビスタ猛追っ!しかし!しかしっ!!クィーンスプマンテッ!!!してやったり堂々の逃げ切りっ!!これがレースの恐ろしいところっ!!逃げた2人を侮っていたわけではありませんが、これがレースの怖いところ!クィーンスプマンテとテイエムプリキュアの1着2着、ブエナビスタはどうやら3着か?』
八幡「………」
メインT「よしっ!!」
後輩「………」
まさか本当に逃げ粘るなんてな……久しぶりにこんな手に汗握るようなレースを見たかもしれない……