八幡side
ジャパンCまで残り3週間。今俺はマスコミの方達と並ぶように海外のウマ娘のトレーニングを見学している。そして今日は1番注目しているピルサドスキーの見学だ。流石は各国のGⅠを4勝しているだけあって、かなり良い脚をしている。それに来日してまだ1週間だというのにあの切れ味だ、相当遠征に慣れていなければ出せない動きだ。
エアグルーヴ「凄いな、あの動きは………」
八幡「あぁ、普通では出せないような動きだ。」
エアグルーヴ「私でもか?」
八幡「やめておけ、まず筋肉のタイプが違う。お前があの動きを真似ようものなら俺は間違いなく止める。お前の脚には絶対的に合わない。」
エアグルーヴ「そうか……まぁするつもりは無いから安心しろ。私は今の走りのままで良い。お前と共に強くしてきたこの脚のままで、な。」
八幡「………おう。」
最近のエアグルーヴは、少しだけクサい台詞を言うようになったと思う。イタい、とまでは行かないが、前まではこんな事を言わなかったのにどうしてだ?って思うくらいだ。
八幡「しかし、ファインとは似ても似つかない顔立ちだな。どちらかといえばフジとかオペラオー寄りか?男装したら男に見られそうな感じっていうのか?」
エアグルーヴ「………本人達の前では言うなよ?」
八幡「大丈夫だ、宝塚の役者になれるって感じで言っておくから。」
エアグルーヴ「それはそれでどうなのだ?」
八幡「反応確かめてみるか?」
エアグルーヴ「蹴られても知らんぞ?手当てくらいはしてやるが、後は自己責任で頼むぞ。」
手当してくれるのかよ、優しいじゃん普通に。
八幡「にしても、今日はあまり良い収穫とは言えないな。いや、それは失礼か。ジャパンCは3週間後だ、今から追い込んだら確実に足がダメになる。ピルサドスキーにはあまり関係は無いようにも見えるが、用心に越した事は無いだろうしな。」
エアグルーヴ「まぁ無理もあるまい。遠征はウマ娘にとってストレスだ。充分に動けない分、体重の変化も激しい。今のトレーニングで見せてもらった走りで何とか対応策を考えるしかあるまい。」
八幡「そうだな、じゃあ俺達も切り上げるか。」
さて、俺達もここから調整に入らないとな。ジャパンCは今のエアグルーヴの実力を確かめるレースにはもってこいだ。国内屈指ってだけでなく世界のウマ娘とも戦えるんだしな。
八幡「よし、じゃあ「待ちたまえ、そこの麗しい姫君よっ!!」行く……ん?」
エアグルーヴ「な、何だ………?」
俺達が後ろを振り向くとさっきまで向こうにいたピルサドスキーがこっちに向かって走って来ていた……いや待て待て待て!!何だよそのスピードッ!?
ピルサド「あぁ……私は何という幸運なのだ。目の前に立つ美しく麗しい、それでいて可憐な君に会えるなんて!!よろしければ、お名前をお教え願えないだろうか、姫よ!!」
エアグルーヴ「………」
八幡「………」
ピルサド「おっと、自己紹介が遅れてしまったね!我ながらつい先走ってしまったようだ、失敬!!私の名はピルサドスキー。日本に居るファインモーションの姉に当たる者さ。それで姫、お名前を伺っても?」
エアグルーヴ「エ、エアグルーヴといいます……ファイン……いえ、妹さんとは仲良くさせて頂いているばかりか、お世話にもなっています。」
ピルサド「何とっ!!プリンセスからよく話を聞かせてもらっていたよ!!頼れる同級生にしてルームメイトだとね!!これもまた運命なのだろう……このような美しい姫を私の前に運んでくれたのだからね。」
エアグルーヴ「は、はぁ………」
………こんな濃いキャラだったのか。
ピルサドT「殿下、急に走り出したと思ったら何をしてるんですか!?ほら行きますよ、迷惑をかけてはいけません!」
ピルサド「迷惑?君も大概失礼だね?私の前に居るのが、今回のレースの最大の敵になるとしても、同じ事が言えるのかな?」
八幡「対戦相手の事を調べるのは当然、という表情だな。まぁお前のようなウマ娘を無視する方が大物だ。もしくは生粋のバカのどちらかだな。」
ピルサド「……君は?」
八幡「エアグルーヴのトレーナーだ。トレーニングは見させてもらった。まぁ大した収穫は無いがな。」
ピルサドT「貴方が若き天才【clairvoyant】ね?噂はこっちにも届いてるわ。たった2年で担当ウマ娘にトリプルティアラを達成させた凄腕だって。」
八幡「恐縮ですが……クレアヴォイアントとは?」
ピルサド「こちらの国の言葉で透視、千里眼、という意味さ。こちらの国では天眼、というのだろう?」
八幡「なんか、小っ恥ずかしいですね……」
ピルサドT「でも……成る程。殿下、これは強敵です。【天眼】に【女帝】、侮れない相手です。」
ピルサド「そのようだ、姫の目を見れば分かるさ。」
八幡「いや、そちらも同じようなものでしょう。」
エアグルーヴ「あぁ。母国を含めて他国のGⅠを4勝、見事といったところでしょう。」
ピルサド「姫からお褒めの言葉を頂けるとは……いや、今は女帝陛下と呼ぶべきか。今日のトレーニングはもう終わった事だし、どうだろう?今後の交流も兼ねてお茶でも如何かな?」
エアグルーヴ「せっかくのお誘いですが、遠慮します。貴女に勝ちたいので。行くぞ八幡。」
八幡「……あぁ、では次はレース場で。」
初めての対面でしたね。