比企谷八幡、ウマ娘トレーナーになる!   作:生焼け肉

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僕も呼ばれたい………


青いバラとお兄様

八幡side

 

 

時刻は15時半となり、ウマ娘達はそれぞれのトレーナーの元でトレーニングをするか、教員達の組んだメニューをするか、お休みで出掛けたり寮でゆっくりする等、行動は様々だ。そして俺も約束がある。それはライスとブルボンの走りを見る約束だ。あくまでも走りを見るだけだ、それ以外は特にない。

 

だが………

 

 

八幡「少しのアドバイスなら、構わないよな。」

 

 

ーーーコース場ーーー

 

 

コース場に来たが、ライスとブルボンの姿はまだ見えない。他の連中がチラホラと居るが、気になる程の人数ではなかった。今日は元々使う人数が多くなかったんだな。

 

 

八幡「まっ、いいか。さて、ライスは3000mだが、ブルボンは………取り敢えず1600mでいいか。昨日も良い走りをしてたってだけで良い部分はそこまで見えてなかったし。」

 

ライス「お兄……トレーナーさ〜ん!!」

 

ブルボン「お待たせしました、トレーナー。」

 

 

おっ、来たみたいだな。ブルボンも一緒か。

 

 

八幡「よっ、授業お疲れさん。」

 

ライス「うん、ありがとう。」

 

ブルボン「労いの言葉を確認、ありがとうございます。」

 

八幡「さて、じゃあ早速走りの方を見ていくわけだが、まずはアップからだ。いつも自分がやってるアップをこなしてくれ。そこから走りを見る。」

 

ライス「えっと……それって先生達が組んでるメニューのアップでも良いの?」

 

八幡「あぁ、構わない。兎に角まずは運動できる身体を作ってからだ。いきなり走ったりなんてしたら筋肉だけでなく筋繊維や骨も痛める。ストレッチも入念にな。」

 

ブルボン「オーダーを受理。」

 

ライス「うん、頑張るね!」

 

 

そこから俺は2人のアップの様子を見守っていた。やはり教員達が組んでいるメニューという事もあってか、内容としては及第点でも物足りなさは感じる。だが俺がこの場で口出しするわけにもいかない。あの2人の正式なトレーナーってわけじゃないからな。

 

 

ーーー30分後ーーー

 

 

ライス「トレーナーさん、準備できたよ!」

 

ブルボン「指示通り、アップを済ませてきました。」

 

八幡「よし、じゃあこれからお前達の走りを見る。まずはライス、お前からだ。距離は3000m、ゴールはあの板だ。」

 

ライス「うん!」

 

八幡「ブルボンは暖まった身体を少しでも維持しておいてくれ。ただし、思い切り走るのは厳禁な。」

 

ブルボン「オーダーを受理。」

 

 

ーーースタート地点ーーー

 

 

八幡「よし、じゃあいくぞ。よぉ〜い………ドンッ!!」

 

 

ダッ!!!

 

 

ふむっ、スタート合図からの反応は良い。だが今回は1人で3000mを走るという事になってるが、ペースメーカーが居ない中でどれだけ走れるかな?

 

だが走りは安定してるな……意外としっかりしてる。長距離特有の体幹がブレない走り方をしている。それにペース配分も分かっているみたいだ。落ち着きがあるし、今は誰も居ないが前に行こうとする仕草もない。だが此処からだ、長距離では中間を過ぎてからのスパートが重要ポイントだ。さぁお前ならどうする?

 

 

ライス(まだ……ココじゃない……ココでもない………………今っ!!!)ダッ!!!

 

 

八幡「っ!ほう………」

 

 

これも中々の逸材だな……

 

 

ピッ!

 

 

ライス「はぁ……はぁ……ふぅ……ふぇ〜……ど、どう、だったかな?」

 

八幡「あぁ、かなり良い走りをしている。日頃から走っていなければあの体幹のブレない走りを身につけるのは無理だ。お前、かなり走り込んでるだろ?それも1日に5,000や10,000なんて距離じゃないな?ランニングでフォームがブレないように意識しながら走ってたりしてないか?」

 

ライス「わぁ………せ、正解だよ!凄いお兄様!ライスのやってる事、まるで見てきたみたいに言い当てたよ!」

 

八幡「当たりか……改善、というよりもお前ならもっと本気を出せていたんじゃないのか?」

 

ライス「はぅ………お兄様には隠し事出来ないね。うん、ちょっと余裕があったかも。」

 

八幡「今話しても意味がないかもしれないが、3000mの競走に出るとしたら、もっと早いタイミングでスパートをかけても問題はないな。取り敢えず総評。」

 

ライス「ドキドキ…ドキドキ…」

 

 

………声に出しながら言うのホント可愛い。

 

 

八幡「長距離の才能はズバ抜けてる。完全なステイヤータイプだな。俺から見てもあれはかなり良い走りだった。正直に言うと、また候補が増えてしまった事が残念でならない。」

 

ライス「ふぇ、候補って?」

 

八幡「俺が担当にしたい候補って事だ。」

 

ライス「………ホント?ライスを担当にしたいってホント?」

 

八幡「あぁホントだ。模擬レースに出てたら絶対声かかってたと思うぞ?今言ってもアレだが、勿体ない事したと思うぞ?走ってたら今頃担当ついていたかもしれないぞ?」

 

ライス「………」ウルウル

 

八幡「まっ、俺としては吟味しなくちゃいけない相手が増えた形になるが、それだけの価値がお前にはある。」

 

ライス「………ふ、ふぇ……」ウルウル

 

八幡「ふぇ?」

 

ライス「ふええぇぇぇぇん!!!」ポロポロ

 

 

え!?な、泣いた!?何で!!?俺何か悪い事でもしたか!?

 

 

八幡「え、ど、どうした!?俺何か気に障るような事言ったか!?」

 

ライス「グズッ……ラ、ライスね……初めて、そんな風に、言って、もらえたの。だ、から、嬉しくて………うぅぅ。」ポロポロ

 

八幡「そ、そうなのか………ま、まぁアレだ。お前の走りを見たら誰もが『自分は節穴だ。』って思うだろ。」

 

 

そうだ。俺も昨日の模擬レースだけしか見ていない。実際には走っていないが、実力のあるウマ娘だって居るかもしれないんだ。だから俺はあのレースだけが全てだとは思わない。

 

 

ライスの嬉し泣きが止んだ頃、顔を上げた彼女はとてもスッキリしたような表情をしていた。

 

 

ライス「えへへ、いっぱい泣いちゃった………でもライス、凄く良い気分なの。全部お兄様のおかげだよ。」

 

八幡「あぁ。ところで、そのお兄様って何なんだ?さっきも言われたが………」

 

ライス「え、えっとね、ライスの好きな絵本に出てくるお兄様がいるんだ!とっても優しくて、穏やかに笑う人!何だかお兄……トレーナーさんがそのお兄様に良く似ていたから………それで………あ、あの、トレーナーさん!」

 

八幡「な、何だ?」

 

ライス「トレーナーさんが嫌じゃなかったらだけど、トレーナーさんの事、お、お兄様って呼んでも良〜い?」

 

 

………多分、ウマ娘にこんな呼び方させてるって噂になったら俺の黒歴史が増えるかもしれない。だが………

 

 

八幡「あぁ、好きに呼べば良い。」

 

ライス「う、うん!じゃあ……お兄様………えへへ♪」

 

 

こんな風に笑うんだ、本人が嬉しそうにするのなら、俺の問題なんて些細なもんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

贔屓してるつもりなんてない(推してる時点でしてる………)のにライスが可愛い〜!!!!!

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