エアグルーヴside
エアグルーヴ「はぁ……はぁ……はぁ……」
フジ「はぁ……はぁ……はぁ……」
シービー「はぁ……はぁ……はぁ……」
タリアト「ふむ、休み休みで走るとこんなものか。だが現役の頃に比べると多少の疲れはあるな。それに2,400mは少し長いな……八幡、このトレーニングをする時は最高でも2,200m、最低でも1,600mにしろ。これでは持たん。」
我々は漸く今日の本メニューを終えたのだが、絶え絶えだった。それに反してタリアト殿は普通に立ったまま八幡と話をしている………しかも全然余裕そうだ。それにだ、様々な脚質を使っていたのだ。我々は全く歯が立たなかったのだ。得意な脚質にも関わらず、最後には追い抜かされて遥か彼方に行ってしまうのだ。
八幡「はい、俺も見てそう感じました。ですが今回は最後まで行かせてもらいました。途中で妥協をする程、俺が見ているウマ娘達はヤワではありませんので。」
タリアト「成る程、良い信頼だな。さてお前達、へたれるのは構わんがせめて立ちながらにしろ。座った状態では乳酸が溜まって立った時が辛いぞ。」
エアグルーヴ「はぁ……はぁ……セ、セクレタリアト殿はどうしてそんなにも、平然としていられるのですか?4回連続で走っているというのに、全く顔色を変えておられない……一体何故です?」
シービー「そ、それあたしも思ってた……何でですか?そんなにも、余裕なのは?」
タリアト「ふむ……まぁ積んでいるエンジンが違うとでも言っておこうか。」
フジ「エ、エンジン?」
タリアト「乗り物で例えよう。見た目は一緒でも搭載されているエンジンが違えば、スピードやエネルギー効率はまるで違ってくるものだ。それは我々ウマ娘やヒトにも同じ事が言える。そして君達3人のエンジンはタイプこそ違えど2,400mには耐えうる力を持っている。しかしそれを連続で、同じ力を維持出来る程のスペックは無い。そして私だが、私も過去には2,600mを走った事がある事を考えれば長距離の適性まではある。だがこれだけ連続で走っても平気な理由が気になるのだろう?」
エアグルーヴ「は、はい。」
タリアト「ふっ、たとえば私のエンジンが普通のエンジンよりも2倍以上の大きさあると言ったらどう思う?」
シービー「に、2倍っ!?でもそれって普通のエンジンが2つあるって事だから………じ、じゃあ………」
タリアト「君達の想像している通りだ。私はある程度の速度ならば持続可能な事に加えて、最後にそれ以上のスピードで追い上げる事も可能なのだよ。故に今回、君達相手に逃げをしなかったのは、君達の様子を観察する為でもある。見た結果は流石は我が弟子が教えているだけはある、とだけ言っておこう。」
そうか……だからあの速さに加えて加速力もあったのか。あんな走りは誰も真似る事など出来んだろう。スズカもきっとセクレタリアト殿について行こうとすれば、途中で息が上がるのは必定。つまりこの走りはセクレタリアト殿だから出来る走り、というわけだな。
八幡「さて、じゃあお前達も息が整ったらダウンに行ってこい。それとエアグルーヴ、トレーニングが終わったら部室に残ってくれ。」
エアグルーヴ「構わないが……何故だ?」
八幡「この前の話だ。怪我の………」
エアグルーヴ「っ!あぁ、分かった。」
八幡「先生もプロフェッサーも時間は大丈夫だって言ってたから、話すなら今日だと思ってな。」
エアグルーヴ「ではトレーニング後はそのまま「水臭いなぁ八幡トレーナーさんもエアグルーヴも。」?フジ?」
フジ「そんな秘密話をされたんじゃ気になって仕方ないよ。私も同席させてもらうよ。」
シービー「あたしもあたしも〜!」
八幡「……一応言っておく。この話はおいそれと出来るようなものじゃない。ましてや俺の師匠が抱えているトラウマの1つを無理にこじ開けてまで話すようなものだ。聞けるなら聞くって感覚なら絶対にやめてくれ。それだと先生に「八幡、構わない。」っ!ですが先生!」
タリアト「構わないと言っている。君の担当であるこの娘達なら、知っておく権利がある。私が許す、それでは不満か?」
八幡「……いえ。」
タリアト「お前の心配はよく伝わっている。それに、お前が選んだウマ娘ならば信用に値する。この事を教えたとしても、無闇矢鱈に言い回るような事はしないだろう。」
エアグルーヴ「無論です。そのような世論に反するような事は致しません。」
フジ「私も自身のプライドに誓ってしません。」
シービー「あたしもそこまでバカな事はしません。」
タリアト「あぁ、君達のその言葉を信じよう。それから八幡、もう1人呼んで欲しい。シンボリルドルフ、彼女にもこの話は聞いておいた方が良いと思ってね。」
八幡「………分かりました。後で伝えます。」
タリアト「頼むぞ。では我々はダウンに行くとしよう。ちょうど身体の怠さが抜けた頃だろう。」
前に話していた八幡が怪我に敏感な理由はセクレタリアト殿が理由だというのはこの前知ったが、一体過去に何があったのか………それに2人を止める八幡の様子もただならぬ雰囲気だった。
ついに、先生のお話が………