比企谷八幡、ウマ娘トレーナーになる!   作:生焼け肉

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こういう事もあるのか

八幡side

 

 

八幡「はぁ………」

 

葵「その、比企谷君……大丈夫ですか?」

 

八幡「何も大丈夫じゃない………また増えた。いや、増やしてしまった。迂闊に走りなんて見るんじゃなかった、これでもう7人目だぞ?」

 

葵「あはは………」

 

 

ブルボンからの逆スカウトを受けた俺。当然その時の返事は保留。他のウマ娘の走りを見たいからという理由で保留にしたが、正直それももう限界だろう。だってこの学園内でも注目されているウマ娘達からの逆スカウトを連続でされてるんだぞ?これでまだ先延ばしにしていたら、他のトレーナーからも叩かれかねない。

 

 

八幡「決めないといけないのかなぁ……」

 

葵「急ぐ必要は無いと思いますけど、のんびりすればするだけ、自身の収入は無いままですからね。最低限の賃金は貰えますが、遊びに行くようなお金は貰えませんから。」

 

 

そうなのである。この学園は普通の会社とは違って、働いてても給料は発生するのだが、それはこの学園の職員だけである。俺はトレーナーだからその括りには入らない。例えば東条さんはトレーナーでもありながら教職員としても働いているから、収入は普通の職員よりも多い。南坂さんや沖野さん、黒沼さんはトレーナー一筋だから収入はウマ娘の成績及び実績に関わってくるのだ。初年度配属のトレーナーは担当が決まっていないから、ある程度の保証はしてくれる。だが2年目以降は担当を持っていなければ、収入は無いどころか、月の給料が発生しなくなるのだ。

 

 

八幡「腹括って決めるしか無いのか………」

 

葵「候補は絞ってるんですか?」

 

八幡「一応8人だな。ルドルフ、エアグルーヴ、ハヤヒデ、ブライアン、オグリ、クリーク、ライス、ブルボンだな。選ぶとするならこの中の誰だろう。」

 

葵「胸焼けしそうな面子ですね………」

 

 

言うなよ、俺が1番そう思ってんだから。

 

 

ーーー食堂ーーー

 

 

八幡「なんかここで食べるのが普通になってきたな。俺も早く自炊してトレーナー室で食わないとな。」

 

 

けど此処の飯って美味いんだよなぁ………流石はトレセン学園、味の付け方も最高みたいだ。

 

 

沖野「よぉ比企谷、此処良いか?」

 

八幡「……どうぞ。」

 

沖野「ありがとよ!んでどうよ、担当ウマ娘の方は?順調か?」

 

八幡「まぁ候補は絞りましたよ、逆スカウトして来た奴等と走りを見て良かったと思った奴の中から決めます。」

 

沖野「まぁそうだろうな。」

 

八幡「……アレ、そういえば沖野さんってゴールドシップを担当にしてましたよね?なんであの日走ってたんですか?」

 

沖野「あぁ、あれはアイツが出たいって言ったから走らせただけだ。別にあの模擬レースは担当が決まってないウマ娘だけしか走ってはならないって決まりは無かったしな。俺は別にこの路線のみって考えはないからな。そのウマ娘が走りたいレースを走らせる為にそのサポートをするだけさ。」

 

八幡「成る程………」

 

 

この人普段はダメダメなんだが、ウマ娘の事になると本当に熱くなる人だ。その部分は本当に尊敬出来る人だ。まぁ普段がダメなのが傷なんだが、それもあるから憎めない人物なのだろう。

 

 

八幡「俺もそろそろ「何故だシンボリルドルフ!?」ん?」

 

沖野「……ありゃ△△とシンボリルドルフだな、何騒いでんだ?」

 

八幡「さぁ?」

 

△△「俺は前からお前に声を掛けていたんだぞ!?なのに何故!?何故……俺ではなく来たばかりの比企谷に逆スカウトなんてしたんだ!?」

 

 

………あのトレーナーは一応、俺や桐生院と同期のトレーナーで、自己紹介した時で分かったが、かなりの自信家のように見えた。それよりもあのトレーナー、どこでそれを聞いたんだ?いや、昨日はルドルフが飯食ってる時に俺に言ってたな。でもあの声量はウマ娘なら聞こえていても、人間には聞こえないくらいだと思うが………

 

 

ルドルフ「その前に1つ質問に答えて欲しい。私が比企谷トレーナーに担当になって欲しいという情報を何処から手に入れたのかな?」

 

△△「昨日、アイツが2人のウマ娘のトレーニングを見ていた時、お前とエアグルーヴ、ナリタブライアンの3人で近寄っていただろう、その時だ!」

 

 

あぁ〜あの時かぁ〜………確かにかなりの人数が居たしなぁ。仕方ないか。

 

 

ルドルフ「成る程、理解した。そして先程の君の質問の答えだが、私の目指す道を叶える為には、比企谷トレーナーと共に歩むのが最も可能性を感じたからだ。君には申し訳ないが、これが理由だ。」

 

△△「くっ、くうぅぅ……!」

 

ルドルフ「スカウトしてくれた事は嬉しく思う、私の才能を見込んでの事だろう。だが、私にも目指す道があるのだ。それを共有できる者でない限り、共に道を、理想を追い求める事はできない。」

 

△△「……こ、このぉ!!」

 

 

っ!!あの野郎!!

 

 

△△「黙ってれば良い気になりやがって!!」

 

ルドルフ「っ!?」

 

エアグルーヴ「会長っ!?」

 

 

バコッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………」

 

ルドルフ「ひ、比企谷トレーナー………」

 

エアグルーヴ「お、お前、血が………」

 

八幡「………おいお前、自分が何しようとしたか分かってんのか?年下の女子、しかも学生に手を上げようとした意味分かってんのか?」

 

△△「う、うるせぇ!!ソイツが俺の担当にならないからだろうがっ!!」

 

八幡「担当が誰になるかはトレーナーとウマ娘、両方の同意が必要だ。一方的な契約なんて違反行為そのものだぞ?それどころかウマ娘に手を上げる行為だって厳禁されてる筈だが?」

 

△△「黙れっ!!俺よりも遅く赴任して来た奴が生意気を言ってんじゃねぇ!!」

 

黒沼「生意気言ってんのはテメェの方だろうが。」

 

△△「ガッ!?」

 

黒沼「公衆の面前でこれだけの騒ぎを起こしやがって……ウマ娘を、しかも生徒の長であるシンボリルドルフに未遂とはいえ手を上げようとしたのは黙ってはいられないというのに、同業者に手を出すとはな………この事は理事長にキッチリと報告させてもらうぞ。」

 

△△「くそっ、離せ黒沼!!」

 

黒沼「仮にも俺は先輩なんだがな………まぁいい、このまま大人しくついて来てもらうぞ。おい、お前等手伝え。」

 

「「は、はい!!」」

 

 

黒沼さんは△△トレーナーの両腕を背中に回して自由を封じると、トレーナーを数人連れてそのまま理事長室へと向かっていった。

 

いっつ………唇だけじゃないな、口の中も切れたな。

 

 

八幡「怪我はないか、ルドルフ。」

 

ルドルフ「私は平気だ、それよりも比企谷トレーナーの方が………」

 

八幡「唇と口の中を切った程度だ、別に何でもない。」

 

エアグルーヴ「何でもないわけあるか!!今すぐ保健室へ向かうぞ!すぐに治療しなくては大変な事になる!!」

 

 

ーーー保健室ーーー

 

 

エアグルーヴ「よし、治療は済んだ。」

 

八幡「悪い、助かった。」

 

エアグルーヴ「礼を言うのはこちらの方だ、貴様があの時前に出ていなければ、会長があの男に殴られていた。」

 

ルドルフ「比企谷トレーナー、貴方のおかげで助けられた。おかげで私は無傷だ、身体を張って助けてくれた事に礼を言おう。ありがとう。」

 

八幡「気にすんな、俺がしたかっただけだ。それにどう考えてもアウトだろ、法律的にもそうだが、大人が学生を殴るなんてよ。」

 

エアグルーヴ「私は理事長室へ向かう。恐らくあの男も一緒だろうからな。会長、申し訳ありませんが、このトレーナーの事をお任せしてもよろしいでしょうか?」

 

ルドルフ「うむ、心得た。」

 

エアグルーヴ「ありがとうございます、では失礼します。おい、一応言っておくが、会長と2人きりだからと言って変な気を起こすなよ?」

 

八幡「起こすかよ、早く行け。」

 

 

こんな雰囲気でんな事出来るわけねぇだろ。しかし、居るとは思ってたがスカウトされてたんだな。にしても………

 

 

八幡「俺、お前の目指す道について聞いた事なかったんだけど?」

 

ルドルフ「済まない、あぁでも言わないと納得してもらえないと思ったからだ。勝手な事をしたのは謝罪する。」

 

八幡「いや、別にいい。だが相手を選んで言葉を選んだ方が良いかもな。ああいう手合いには冷静な言葉はかえって逆効果だ。論破したとしてもすぐに手が出る。」

 

ルドルフ「見て来たような言い方だな。」

 

八幡「そりゃさっき見たからな。」

 

ルドルフ「ふふっ、違いないな。」

 

 

………コトッ

 

 

八幡「っ!ル、ルドルフ?」

 

 

ルドルフは俺の俺の胸に顔を埋めるように倒れかかって来た。

 

 

ルドルフ「済まない、少しの間こうさせて欲しい。私も女だ、さっきの事が少し怖くてね……」フルフル

 

 

そういうルドルフの足は少しだけ震えていた。

 

 

八幡「気にすんなよ。そうなって当然だ、むしろ泣かなかっただけ大した胆力だよ。」

 

ルドルフ「君は慰めるのが下手だな。」

 

八幡「ほっとけ。」ナデナデ

 

 

ルドルフ(今、私は頭を撫でられているのだろうか?この感触、とても久しぶりだ………昨日のトレーニング後にミホノブルボンもされていたようだが、このような気持ちだったのだろうか?)

 

 

ルドルフ「だが、その不器用な所も君の長所に感じるよ。続けてくれるかい?」

 

八幡「お前が良いのならな。」ナデナデ

 

 

こんなもんで落ち着けるのなら、幾らでもやってやるよ。もう大丈夫そうだからやらなくても良いとは思うが、そんな野暮な事は言わないでおこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




………ありませんよ?ウマ娘界でこんな事絶対に無いですよ?

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