エアグルーヴside
翌日の日曜日。今日は京都のメインレースにてフジが走る日だ。本来なら阪神でやるのだが、今年は京都での開催になった。フジには良いイメージトレーニングになるだろう。だがその前に、私達は昨日八幡達が行ったという神社内にある墓に向かっている。八幡の祖母であられる方が眠っているのだが、私にも言ってほしかったものだ………まだオークスという名前になる前に制覇したお方だ、私達の大先輩にあたる人物だというのに。
アルダン「兄様、お婆様の事ですが、当時の記録や写真などは無いのですか?」
八幡「俺の家や実家には無い。俺も親から聞いた話だが、婆ちゃんはそういうのを全てURAに寄付したそうなんだ。優勝した時のトロフィーもだ。だから俺が知ってるのは婆ちゃんの戦績と歳取った姿だけ。走ってる姿が写った写真なんて、何度も探した記憶はあるが見た事は1度もねぇよ。まっ、今なら検索すれば出て来るとは思うけど、やろうとは思わない。」
アロー「……凄い人だね。自分の勝った証を簡単に自分以外の人に渡すなんて、簡単に出来る事じゃない。」
八幡「そうだな。本当ならもっと裕福にもなってただろうし、名家にもなってたと思う。でもその道は通らなかった………変わり者だって思う人も居るかもしれないが、婆ちゃんをよく知る人間なら分かる。婆ちゃんはそんな器の小さい人じゃないってな。」
………八幡が家族の事とはいえ、ここまで他人を褒めるとはな。少し……いやかなり意外だ。
ーーー藤森神社・墓前ーーー
八幡「婆ちゃん、また来ちまった。今度は昨日よりも大勢だ。紹介する、俺が今面倒を見ているチームだ。名前はポラリス、良い名前だろ?」
シービー「昨日ぶりです、ミスクリフジ。でもまた来れて良かったです。」
エアグルーヴ「お初にお目にかかります、クリフジ殿。私はチームのリーダーをしています、エアグルーヴと申します。八幡……失礼、お孫さんから最初に選んでいただいたウマ娘でもあります。いつも良いご指導を受けさせて頂いております。」
それから流れるように挨拶を済ませた。
八幡「婆ちゃん、この青鹿毛のフジキセキっていうのが今回の3冠に王手が懸かってるんだ。だから少しで良いから、力を貸してほしい。俺やフジの力だけじゃもしかしたら届かないかもしれないから、婆ちゃんの力も借りたい。」
フジ「今日はまだトライアルレースなんですけど、菊花賞は3,000mの長距離レース。私は中距離の適性はありますけど、それで何処まで通用するか分かりません。なのでもし、お婆様さえよければ、力を貸してください。」
ーーー午後・京都レース場ーーー
八幡「ふむ、1番人気には支持されているが、やっぱり去年に比べるとちょっと低いな。」
エアグルーヴ「いや、だが逆によくこれだけ支持されていると思った方が良いだろう。ダービーでも1番人気に支持はされていたが、半分は半信半疑だっだろうからな。」
八幡「そうだな。今日のレースでそれを何処まで吹き飛ばせるかにもよるな。後はレース後に抜けさえしなければ、不安材料は距離だけだ。」
実況『さぁ!本日のメインレース、京都11レースの神戸新聞杯です!去年は中京、今年は最後の1冠と同じ京都が舞台となっております!このレースでは上位着3名が菊花賞への切符を手にする事が出来ます!果たして、菊の舞台へ進むのは誰なのか!?』
解説『やはりフジキセキに人気が集まっていますね。夏を越えて彼女も強くなっている事でしょうし、これは期待出来ますよ。ダービー2着のタヤスツヨシも人気の走りをしてくれるでしょう。』
そうなると良いがな……やはり京都のコースが気になるところだ。普通のコーナーではないからな。
実況『さぁ体勢整いました……スタートしました!綺麗なスタートを切って内からネーハイジャパンとオギノカムイワンが行こうとしている!フジキセキは中団やや前目のポジションで1コーナーをカーブして行きました!』
シービー「フジってば外につけてるじゃん!八幡、もしかしてアレって八幡の指示!?」
八幡「そうだ。」
モーリス「ど、どうしてですか!?他のウマ娘の後ろに居た方が体力も脚も温存できるのに………」
八幡「それじゃ意味が無い。このレースでは京都のコースの事は勿論だが、京都2,400mくらいは自分の力で走り切れないと、菊花賞で優勝するなんて夢のまた夢だ。だから今日は前に誰も居ない状態で自分だけの力で走るように言った。もし今までのように走って勝てたとしても、それは駆け引きをしたから勝てたものだ。フジにとって菊花賞はそんな駆け引きだけで勝てる程、甘いレースじゃない。」
エアグルーヴ「……確かに、そうだな。八幡の言う事には納得が行く。」
八幡「それにだ、お前達フジを少しは信じろ。ウチのステイヤー、ライスの扱きを2ヶ月も耐えるどころかノルマ以上の成果を出したんだ。2,400mで終わるような脚のままな筈がねぇよ。」
実況『3コーナーを曲がった辺りで各ウマ娘が動き出しました!後ろからはタヤスツヨシが上がって来る!先頭はスリリングアワーだがリードは殆ど無い!ナリタキングオーとフジキセキは以前並んでいる!そして後ろからやってきたタヤスツヨシ!前を捉えられるのか!?最終コーナーをカーブして直線コースへと向かいました!!』
フジ(軽い……まだ軽い!これなら行ける!)
実況『横一線になったが、フジキセキ真ん中から抜け出して先頭に立った!2番手粘るスリリングアワーと外からタヤスツヨシ追い上げる!フジキセキ先頭!フジキセキ先頭!これは強い!フジキセキ〜!!』
危なげの無い勝利だったな……これならば菊花賞でも走れるかもしれないな!
実況『京都の舞台で菊を咲かせるのはこの私!前哨戦でもフジキセキがやりました!!』
八幡「………合格以上だな。これなら菊花賞でも良いレースが出来るだろう。」
フジさん、トライアル勝利!
そしてチームの皆さん、ちゃんと手を合わせましたか?