比企谷八幡、ウマ娘トレーナーになる!   作:生焼け肉

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盾を手にする為に

 

 

八幡side

 

 

10月の第5日曜日が訪れ、今日は天皇賞・秋の開催日だ。フジキセキ今年5戦目となる。先になるが、この後はよくて1戦出来るかどうかってところだな。まっ、それはこの天皇賞の後に考えるとしよう。

 

フジの調子はスプリンターズSから落とさないように気を付けてたから前のレースと同じくらいの調子と言っても良いだろう。短距離から中距離という大幅な距離変更だが、この距離はフジの得意距離だ。それに東京のコースはこれまで3回走ってるが、全て勝ってる。

 

 

八幡「落とすとは思えないが……万が一って可能性もあるしな。今回はちょっと内で攻めるか。」

 

フジ「八幡さん、独り言聞こえてるよ?それってつまりそういう事で良いんだよね?」

 

八幡「……そう、そういう事。今回は内から攻めていってくれ。7番と真ん中辺りの枠だが、幸い1から6のウマ娘は逃げか追込のウマ娘だ。内に入るのは容易いだろう。だから4コーナーを回ったら一気に前に出られるようにしてくれ。逃げているウマ娘も捉えられるように、な。」

 

フジ「八幡さん、何だか他のウマ娘の自信を削ぐような勝ち方狙ってない?それに私にはこう聞こえるよ?『直線入ったら後ろなんて気にせず千切って来い。』って。私の気のせい?」

 

八幡「はて、何の事だかサッパリだが?」

 

フジ「あはは、誤魔化しが下手だなぁ。」

 

八幡「そんな事言ってるが、春の安田記念では後ろに4バ身の差をつけて優勝したよな?それも誰も寄せ付けてなかったし。」

 

フジ「……ちょっと何言ってるか分からないなぁ。」

 

八幡「何で分かんねぇんだよ。お前がやった事だろうが、しかも鬼気迫る勢いで。」

 

フジ「んんっ!【はて、何の事かサッパリだが?】」

 

八幡「今度は声真似で俺の台詞かよ……」

 

フジ「ふふふっ、今日の天皇賞はどんな【キセキ】を君に魅せようかな?」

 

 

フジは俺の目をジッと見つめてそう言った。俺に何かを期待しているような、言ってほしそうな目で訴えているように感じた。何を言ってほしいのかは分からないが、俺の答えはこうだ。

 

 

八幡「そうだな………皆を魅了させるような【キセキ】と言ったらどうする?」

 

フジ「皆を、かぁ……それはかなり難しいね。」

 

八幡「だろうな。まっ、気にするな。つまらんただの戯言だと思ってくれ。だから気を張り詰めなくても良いからな。」

 

フジ「そうなの?やろうと思ってたんだけど……」

 

八幡「それでいつもの走りが出来なければ元も子も無い。ならいつものようにやってくれた方がマシだ。鬼みたいな顔で走られでもしたら、皆引くだろうし。」

 

フジ「八幡さん、ちょっと失礼過ぎない?」ジィ∼

 

八幡「冗談だ。そんな目で俺を見るな、頼むから。」

 

フジ「本当にそういう顔で走ろうか?フォローは八幡さんがしてよ?」ジトォ∼

 

八幡「頼む、やめてくれ。俺が悪かった。」

 

フジ「………あはは、大丈夫だよ。そんな事しないから。それにそんな顔で走ったら全身の力が強張っちゃって走れなくなっちゃうしね。」

 

 

とりあえずは怒っていないみたいだから良かった。けどフジが怒ったような顔かぁ………見た事ないかもしれんな。いや、あの時に1度見てたっけか?でもあれは怒りっていうよりも悲しさの方が強かったか?

 

いやいや、こんなネガティブな考えをするのは止そう。レース前なんだからちゃんとしないとな。

 

 

フジ「じゃあ八幡さん、そろそろいいかな?」

 

八幡「?何がだ?」

 

フジ「行く前にやる事があるでしょ?」

 

八幡「………済まん、分からん。」

 

フジ「この前のスプリンターズSでもやったのに?」

 

八幡「………ひょっとして、これか?」

 

 

俺は両手を少し広げてみた。するとフジは途端に嬉しそうな表情を浮かべて俺に抱き着いてきた。シービーもよくやってくるのだが、フジもそれと同様に俺の胸に頭……額?を押し付けるかのようにスリスリグリグリしてくるのだ。

 

 

フジ「……八幡さんの匂いってやっぱり落ち着くなぁ。私ならずっとこうしてても飽きないよ。」

 

八幡「だからってずっとはやめろ。」

 

フジ「分かってるさ。けど、後もう少しくらいなら良いでしょ?」

 

八幡「……後もう少しだからな?レースまであまり時間ない上にもうすぐ入場時間なんだから。」

 

フジ「うん♪」

 

八幡「後さ、頭押し付けるの止めてくんない?」

 

フジ「ちょっと何言ってるか分からないなぁ。」

 

八幡「だから何で分かんねぇんだよ。」

 

 

さっき俺に誤魔化すの下手って言ってたが、お前も大概人の事言えないと思うんだが?

 

 

フジ「……うん、もう充分♪これで今日のレースも大丈夫そうだよ。」

 

八幡「これが無かったらどうなるんだよ。」

 

フジ「普段の力の30%しか出せないかな。これがあれば100%の力を出せるから良かったよ。」

 

八幡「マジかよ、この行為だけで70%も違いがあるのかよ。半分以上も力を持ってかれるとは思わなかったぞ。どうなってんだよ……」

 

フジ「それだけ私にとって大切な事って意味だよ。だから八幡さん、これからのレースでもよろしくお願いするよ。」

 

八幡「……周りにバレないようにしないとな。」

 

 

特にシービーには。ていうか全員にだな。こんなやる気の出し方があるとは思えないが、全員から要求されたらレースの度にやらなきゃならんのだろ?流石に精神削れるから無理だよな。

 

 

 




レース前に何をしとるんだか……
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