八幡side
撮影会の依頼を承諾しに理事長室に行った俺は、そのまま駿川さんが依頼を受諾する旨を相手側に伝えていた。そして俺が希望していた12月の2週目という要求も割とアッサリ通った。これで撮影会の件は大丈夫だな。後は全員にメールでも送っておくか。
八幡「ありがとうございます駿川さん、わざわざお手間をお掛けするような事をしてしまってすみません。」
たづな「いえ、お気になさらないでください。寧ろお願いしているのはこちらなのですからこのくらいは当然です。それに八幡トレーナーにはいつもご迷惑ばかりお掛けしていますから……」
八幡「いや、あれは駿川さんのせいじゃないでしょ。どちらかといえば理事長の異常行動がそもそもの原因ですから……俺からすると、心中お察ししますくらいしか言えませんよ。」
秋川「し、謝罪……これからは気を付けよう。」
八幡「まぁそれがどの範疇で理解しているのかは不明ですけど、一先ず信じましょう。許容範囲超えてたら駿川さんの頬伸ばしが待ってますけどね。」
でも驚くよな、扉開けたら駿川さんが思いっきり理事長の頬引き伸ばしてるんだから。不思議な事にアレを見ると本当に怒る気が無くなるんだよなぁ………後、面白い事に理事長ジタバタしてるけど何の抵抗にもなってねぇしな。
八幡「では依頼の件も終わりましたので、俺はこれで失礼します。」
秋川「うむっ!!感謝っ!!ご苦労っ!!」
たづな「私も業務に戻りますので失礼します。」
秋川「よろしく頼むっ!!」
バタンッ
八幡「ふぅ……今回は急じゃなくて助かりましたよ。前みたいだったら俺が理事長抓ってましたから。」
たづな「あはは……ですね。しかし八幡トレーナー、今年は海外にも積極的に参戦する方針で行かれたのですね。チーム合計で4戦、そんなに居ないんですよ?海外挑戦を視野に入れてるトレーナーは。」
八幡「確かに国内で収めるのも1つの手法とも言えるでしょう。俺も今年が始まった時は海外なんて考えてもいませんでしたから。でもピルサドからアイルランド3冠の話を貰った時に国内で才能を埋もれさせるのは勿体無い、とも思いましたからね。その証拠にシービーとアローはアイルランド3冠とBCシリーズを勝ってくれた上に海外でも通用するって事を見せてくれましたから。自分の考えが浅はかだった事を悔やみますよ。」
たづな「ですが勝てたから良いのでは?」
八幡「勝ったから良いでは次に繋がりません。俺はシービーのジャパンC後の予定にドバイを視野に入れてます。ドバイでも勝てばシービーは本当の意味で世界でも指折りの実力を持つウマ娘だと知らしめる事が出来る。それにモーリスもマイルでは類稀な才能を持ってます。将来化ける事は断言出来ますからね。ああいう奴こそ海外に挑戦させるべきだと俺は思っています。」
たづな「………」
八幡「昔の人は良い言葉を作りましたよ。【井の中の蛙大海を知らず。】その続きを別の人が【されど空の青さを知る。】もしあの時、ピルサドの返事を断っていたら、俺はただの蛙でした。世界を知る事も無かった。だから今回、アイルランドに挑戦して良かったと思ってます。得られるものが空から札束が降ってくるくらいありましたから。」
正直な話、本当に海外の事なんてこれっぽっちも考えてなかった。それがどうだ?今では次の舞台に海外を選ぶようにまでなってる。そのくらい得られるものが多いって事だ。結果が最下位でも来て良かったと俺はきっと思うだろう。
たづな「……八幡トレーナーはもう少し自己評価を高くした方がよろしいと思いますよ。」
八幡「………何ですか突然?」
たづな「貴方はウマ娘の事を優先に考えられる本当に素晴らしいトレーナーです。貴方のようなトレーナーがチームを引っ張っているから彼女達もあれ程の実績を積めているのでしょう。」
八幡「買い被り過ぎですよ。俺はただのトレーナー、彼女達のお手伝いをしているに過ぎません。本当に素晴らしいのは彼女達ですよ。」
たづな「そういう事にしておきましょう。」
八幡「いや事実なんですけど……まっ、見捨てられないように頑張りますよ。」
たづな「そんな事は万が一、億が一にも起きないと思いますけどね。あら、もう着いちゃいましたね。」
八幡「では駿川さん、失礼します。」
たづな「……八幡トレーナー、もう私達も短くはない時を過ごしているのですから、そろそろ名前で呼んでくれませんか?未だにトレーナーの中で苗字呼びは八幡トレーナーだけなんですよ?」
え、そうなの?皆確かにたづなさんって呼んでるけど……え、トレーナーで苗字呼びって俺だけってマジ?何で皆そんなにフレンドリーなんだよ。
八幡「……分かりました。ですが最初の内は慣れないと思いますので暫くは戸惑うと思いますので、その時は言ってください。」
たづな「分かりました。では早速、名前で読んでみてください?」
八幡「……たづなさん。」
たづな「………ふふっ、少しくすぐったいですね♪」
八幡「やめましょうか?」
たづな「いえ、このままで。ではこれからは名前呼びでお願いしますね、八幡トレーナー。」
変な流れで名前呼びする事になったが、別に断る理由なんて無かったしいいよな。
世は広いですからね〜。