八幡side
エ・サ・ハ・ル・ラ「鬼ごっこっ!?」
八幡「そうだ。」
ハヤヒデ「トレーナー君、我々はトレーニングをしに来たのだぞ?遊びでは無いのだが?」
八幡「遊びで言ってるつもりなんて俺もねぇよ。俺は至って真面目だ。アップ前のウォーミングでやらせても良いが、今回はメインでやる。」
スズカ「ですが、どういう事なんでしょうか?これからやるのが鬼ごっこって………」
八幡「距離やタイム、走り方については説明したが、内容はこうだ。まずお前等にはマイルの距離で走ってもらうが、必ず1列で走る事。先頭から4番目までは逃げる側、1番後ろが鬼役だ。仕掛けるタイミングは3、4コーナー中間でそれより前は普通のタイムで走るように。それで鬼だが、捕まえる方法はただ抜くだけだ。手で相手を触るような危険な事はしない。直線に入って印のあるところがゴール。その順位によって順番と鬼が変わる。そんな内容だ。」
ルドルフ「ほう、つまりはコーナー中間までは自分の脚を溜める時間、それ以降は鬼役や他の3人に抜かれないようにする、という事だね?」
八幡「正解だ。此処に居るメンバーはスズカを除いて全員が先行もしくは差しの脚質だ。抜く前に抜かれないようにするのは当然とも言っていい。その為にはコーナーでの差の詰め方や動き方も重要になってくる。今回は1列、つまり縦長の状態でやるが、日によって変えてく。内容は理解したか?」
俺の説明を理解した全員が返事をするか、頷いた。
八幡「よし、じゃあ5人はじゃんけんだ。勝った奴から先頭順に走るからな。負け残った奴が最初の鬼だ。」
エアグルーヴ「まさか高等部にもなって鬼ごっこをする日が来るとは思わなかった。」
ハヤヒデ「今はまだ内容を理解しただけだが、トレーナー君の言った事を理解するのは走ってからかも知れない。」
スズカ「けれどなんか複雑だわ、前に人が居る状態で走るなんて………」
ルドルフ「これもトレーニングだ、サイレンススズカ。もしかしたら君よりも前を走るウマ娘が今後現れるかも知れないぞ?そうなった時のトレーニングだと思えば良い。」
ライス「ラ、ライス達も前の人達を追い抜くトレーニングにもなるから、良いと思うな……」
じゃんけんの結果、先頭からハヤヒデ、エアグルーヴ、スズカ、ライス、ルドルフの順となった。まさかいきなりルドルフが鬼役とはな………
八幡「んじゃ、まずは普通に走ってみろ。そしたらこのトレーニングの難しさが分かるだろうしな。」
エアグルーヴ「貴様の説明がもう少し欲しいところではあるが、この後に説明してくれるのだな?」
八幡「あぁ、そのつもりだ。全員の感想を聞いた上でな。それと、スタートの合図は先頭の奴がやる事。だから1本目はハヤヒデだな。」
ハヤヒデ「心得たよ、トレーナー君。」
さて、どんな走りを見せてくれるのやら………
八幡sideout
ルドルフside
ハヤヒデ「準備はいいだろうか?」
ライス「ライスはいつでもいいよ!」
スズカ「私も大丈夫。」
エアグルーヴ「問題無い。」
ルドルフ「構わないよ。」
ハヤヒデ「よし、では……よーい、スタート!」
比企谷トレーナーの話では、仕掛けるのは3、4コーナーの中間で相手を抜けばいいとの事だったが、この前の模擬レースと比べたら人数は少ない。すぐに抜けると思うのだが………
八幡(さて、そろそろコーナー中間地点だな、ハヤヒデ以外はここで漸く理解するだろう。この鬼ごっこの真の難しさが、な。)
ハヤヒデ「コーナーを越えたか、ならば此処で!」
スズカ「先頭は譲らな……っ!?」
ライス「ま、前が段々壁に!?」
ルドルフ「くっ、外に出るしか……!」
………?外に?っ!!そうか、そういう事か!!
結果、私達の順位は最初と変わらない結果だった。そう、次も私が鬼役だ。
八幡「んで、ハヤヒデとエアグルーヴ以外の3人はどうだった?この状況なら抜くのは簡単だと思ってたか?」
スズカ「はい、抜けると思いました。けど前のエアグルーヴもハヤヒデを抜く為に外に出たので、進路をもっと外に出すしかなかったです。」
ライス「ラ、ライスもスズカさんと同じだよ。前にスズカさんが居たからもっと外に出ないとって思って………」
ルドルフ「………」
エアグルーヴ「?会長、どうかされましたか?」
八幡「どうやら本当の意味でこの鬼ごっこの意味を理解したのは、ルドルフだけのようだな。」
ハヤヒデ「?どういう事だい、トレーナー君?」
八幡「今先頭と2番手を走ってたのは除外するとして、何でもっと内側で足を溜めなかったんだ?どうして内から行こうとしない?」
スズカ「それは前が壁になっていたからで………」
八幡「そうだな、壁になっていた。だがよく考えろ。直線での競り合いなら兎も角、コーナーのカーブだ。そんなところで競り合いをしたって外側の奴が苦労するに決まってる。なんせ距離も長くなるし、外によれたら最大の敵である遠心力が働くからだ。」
エ・サ・ハ・ラ「っ!!」
八幡「だからお前達は今回誰も抜かせないまま、直線を迎える事になっていた。これがもっと普通のレースで駆け引きもコーナー中間だけでなければもっと動けていただろう。だがその固まった概念がこの結果だ、相手を抜く時は外から、内では進路が狭くなるから、それがセオリーだろう。だがこのトレーニングの敵は目の前に居るライバルだけじゃない、自分自身でもある。だが見えない敵も潜んでる。今言った遠心力もその1つだ。お前達に言えるのはただ1つ、手札を増やせ。直線だけが勝負だけじゃない、コーナー中間だけでも相手を翻弄する事は幾らでも出来る。」
ルドルフ「その1つが内側を突く、という事だね?」
八幡「そうだ。それが分かれば他の答えも自ずと出てくる筈だ。じゃあヒントを与えたところで2本目に行くぞ、次は順番が変わる事を期待してるからな?」
………普通の事をこんな風に指摘されるとはな。だが凄いな、ただの鬼ごっこでは無いとは思っていたが………駆け引き、か。次は相手の様子を見つつ追い出してみよう。
八幡「あっ、エアグルーヴに言い忘れてたが、お前はこの鬼ごっこの最中も身体のよれの改善に努めろよ?さっきの走り、抜かれない事に意識し過ぎで動きがまったく出来てなかったからな?だから動きのブレが少ないこのメンバーを呼んだんだからな。」
エアグルーヴ「わ、分かっている!(しまった、その事を忘れていた!なんたる失態だ!!)」
鬼ごっこって真っ直ぐ追いかけるよりも、小さく円を描いた方が早く追いつけますしね。