八幡side
ルドルフとシービーが俺の担当として活動するようになってからは、更に有意義なトレーニングを行えるようになった。最初こそライスはやや緊張気味だったが、今では普通に話せているし遠慮せずに自分の意見や反省点等を話し合えるようにもなっている。俺も2人の走りは未担当の頃からよく見ていたから知っている事もあって、そんなに労力を使う事なく底上げを出来ていると思っている。
さて、着々とライスの出走の日が迫ってきている。しかし本人もそれが分かっているのだろうか、日を重ねる毎に良い動きになっているのだ。ルドルフとシービーのおかげもあるのだろうが、1番の理由はブルボンだろう。再戦を楽しみにしていたのはライスや俺も同じだったんだが、右脚の跛行でレースを回避したと思ったら、この前黒沼さんから右足脛骨の骨膜炎を発症したと連絡を受けた。
黒沼さんもブルボンもライスとの再戦に意識をしていたようで、かなりトレーニングに打ち込んでいたようだ。それが原因となったらしく、黒沼さんも『ブルボンには負担をかけ過ぎてしまった。』と言っていたから、かなり落ち込んでいるように見えた。ライスにもその事は伝えてあるから知っているのだが、気にしている様子はあまり無い。しているのかもしれないが、トレーニングを見てると充実一途みたいな感じだから、余計にそう見えないのかもしれないな。
まぁ、今の俺達はこんな感じだ。けどどうすっかなぁ〜ルドルフとシービーのデビュー。正直俺はこの2人を同じ土俵で戦わせたくない。っていうのも、2人はクラシック3冠を獲れるだけの実力が間違い無くあるからだ。それを互いに譲らずに研鑽し合いながらっていうのも悪くはない。だがライスの事もある、少しは考えなければなるまい。やっぱシービーからデビューさせるか?ルドルフの性格的にも万全を期してって感じで行きたいと思うし………
ライス「お兄様、大丈夫?何か行き詰まってるの?」
ルドルフ「兄さん、私の知恵が役に立つのであればいつでも相談に乗る。1人で抱え込まないで欲しい。」
シービー「そ〜だよ八幡、あたし達も八幡の役に立ちたいんだから。」
八幡「そうか……ならお前達、1つ俺の役に立ってくれ。そろそろ離れね?」
ライス「で、でもまだ冷えるでしょ?お兄様に風邪を引いてもらったら、ライス困るから………」
ルドルフ「ウマ娘の体温は人間よりも高いからね、兄さんの身体を温める事だって苦労しないさ。」
八幡「いや、もう電気ストーブ充分に働いてるぞ?ほら、あんなに元気いっぱいでオレンジ色の風を俺達に送り届けてるの見えない?」
シービー「八幡、わがまま言わないでよ。」
八幡「君達って偶に俺の言う事聞かない時あるよね?何がそうさせるわけ?」
今俺はトレーナー室に居る。来たばっかりで部屋の温度は10℃くらいで中々に寒い。そう思ってたらなんの用事かは知らんが3人が現れて急に俺を囲い始めたのだ。理由は今聞いたから一応理解はしたが………君達マジで何しに来た?
八幡「ていうか、お前達何しに来たんだよ……俺に何か用があって来たんじゃないのか?」
シービー「あっ、そうそう!八幡、今日は何の日でしょうかぁ〜?」
八幡「……バレンタインデーか?」
ルドルフ「その通りだよ、兄さん。だから兄さんにチョコを渡したくてね、3人で話し合ってトレーナー室に突入しようって決めていたんだ。」
ライス「お兄様の為に頑張って作ったから、受け取ってほしいなぁ〜。」
八幡「うん、その気持ちは分かった。俺も3人の気持ちを無碍にする気は無いから勿論受け取る。だからさ、受け取る為にも離れてくんない?」
シービー「八幡、だからわがまま言わないでよ。」
八幡「今のはわがままじゃねぇだろ!」
ていうかそれってお前が離れたくないだけだろ!?
ーーー数十分後ーーー
ルドルフ「では2人共、準備はいいかな?」
シービー「良いよ~♪」
ライス「は、はいぃ!」
ルドルフ「では行くぞ、せーのっ!」
ル・シ・ラ「ハッピーバレンタイン!」
俺は3人同時に包装された箱を差し出された。すげぇな、こんなに凝ったの作ったのか………
八幡「ありがとうな、大切に食べる。」
シービー「開けてみてよ!八幡だって中身気になるでしょ?」
八幡「そりゃまぁ……いいのか?」
ルドルフ「兄さんの為に作ったんだからね、開けてもらっても問題無いよ。」
八幡「……じゃあ開けさせてもらう。」
俺は3人が作ったチョコを見る為に箱を開けた。最初はルドルフの……箱を触った時点で分かっていたんだが、多分冷たいからアイスの類だ。そう思ってると予想は当たって中には7つのアイスが乗ったチョコケーキだった。
八幡「コレ全部手作りか?」
ルドルフ「勿論、君には負けてしまうがね。」
八幡「いや、そんな事は無い。ありがとうな。じゃあ次はシービーだな。」
シービー「ど〜ぞっ♪」
シービーは何を作ったんだ?正直予想が出来ない……だってシービーが料理してるところを想像出来ないからだ。んじゃ答えは………ほう、これはまた意外だ。
シービー「あたしはクランチと焼きチョコ!どう、普通でしょ?あんまりお菓子作りとかした事なかったから、マルゼンから教わったんだ。」
八幡「不揃いなところが手作りっぽいな、コレ。ルドルフのが商品みたいに見えてくる。」
シービー「それって褒めてるの?」
八幡「じゃあシービー、ルドルフのコレを見て手作りだって思うか?」
シービー「………うん、思わない。」
ルドルフ「あはは、もっと素朴な感じにすれば良かったかな?」
八幡「いや、どっちにも良さはある。性格が表れてるとでも言うべきかもな。んじゃ最後はライスだな。」
ライス「き、緊張するなぁ〜………」
料理が得意なライスだからな、多分1番作りには拘りを持っただろうな。さて、中身はどんなの………え、何コレ?
八幡「………え、コレって……あの、コンクールに出す為の試作品?」
ライス「ち、違うよ!お兄様に作ったバレンタインのチョコケーキだよ!」
八幡「いや、だってコレは………もう芸術品じゃね?2人はどう思う?」
シービー「ライス、本気出し過ぎじゃない?コレ、食べるの勿体無い………」
ルドルフ「うむ、兄さんの言う事も分かる。確かにこれは芸術と呼んでも遜色無い程の出来映えだ。」
ライスが作ったのはチョコケーキなのだが、ケーキの上に乗ってるのは青いバラと、ホワイトチョコをハート型にしてチョコペンで書いたのか【Happy Valentine's Day】と筆記体で書かれていた。
八幡「ライス、シービーの言う通りだ。なんか、食べるのが勿体無さ過ぎる………」
ライス「ふぇ!?」
シービー「うん、なんかさ……そのままケージの中に入れて飾っておきたいよね。」
ルドルフ「上には上がいるというわけか……ライスシャワー、完敗だよ。」
八幡「ルドルフがお店レベル、シービーが初めての手作り、ライスが芸術品もしくは最優秀作品、俺のこの評価どう?」
ル・シ「異議無し。」
ライス「ふぇ!!?」
八幡「はい、今回の優勝者はライスシャワーさんに決定。マジな話、これコンクールに出してみない?」
ライス「ダ、ダメだよ!これはお兄様に作ったのだから他の為には作れないもん!」
最高のバレンタインになったな、今年は。しかし問題も山積みだ。他の人からも貰ってるんだが、その内2人からはケーキだ………食べ切れるかな、俺。
間違いなくライスのバレンタインチョコは芸術品ですよ。