八幡side
スピード「済まないね、あまりの嬉しさに感極まってしまった……年甲斐も無く見苦しいものを見せてしまったね。」
八幡「いえ、大丈夫です。祖母も喜んでると思います。」
スピード「クリフジ殿の話は後日ゆっくりと聞かせてもらえる事を楽しみにするとして……本来の議題だ。君が誠実な人柄だというのは先の私の質問で此処に居る全員が理解しているだろう。従って、私スピードシンボリは観戦の中止、つまりは無観客でのレースを実施しても良いと思っている。皆の意見は……聞くまでも無いが聞かせてほしい。」
シンゲキ「副会長、それは愚問ですよ。あの光景を見れば誰しもそう思う筈です。それが分かっていながら誰があの場に我が倶楽部で育てた一員を送りたいと思うものですか!それに言った筈、私は彼の発言を支持すると。皆さんの気持ちを代弁して私が今言いました!」
スピード「……異存は無いかな?」
店の中で沈黙が続いた。つまりは……可決、という事だろうか。
スピード「決まりだな。ではいつからにしようか?」
トップ「その事なのですが副会長、今週は天皇賞が終わって来週からは5月が始まり、GⅠNHKマイルCがあります。タイミング的にはちょうどよろしいかと。5月はクラシックレースが続く上に日本ダービーも開催されます。5月中、つまり1ヶ月間ではどうでしょうか?日本最高峰の伝統ある【日本の祭典】が見られないともなれば、反発は起これど効果は充分でしょう。いかがですか?トレセン学園理事長の秋川理事長にもお聞きします。」
秋川「……反省。私は現地に赴いて実際に見ていたわけでも、中継で観戦していたわけでも無い。故にどのような様子だったのかは不明。しかし比企谷トレーナーが行動したという事はそれ程までに大きな事態だった事を示唆している……故に、決断っ!!我々トレセン学園も貴女方に、いいや……比企谷トレーナーに賛同しようっ!!ウマ娘を愛する者として、此処に居る皆の意志に賛同するっ!!覚悟ッ!!1ヶ月間の無観客レース、実施していただいて構わないっ!!」
トップ「……副会長はどう思われますか?急と言えば急な案ですが。」
スピード「いいや、寧ろその方が良いだろう。人は現実を見せ付けられる事で、初めて今置かれている立場・状態に気付かされるのだからな。我々は手加減を加えてはならない立場にいる、ましてやウマ娘達の未来を考える為ならば加減なんて無用さ。」
俺が発言しておいてアレだが、この人達マジでやるつもりだ。批判が来るのなんて目に見えてるのに、それすらも厭わない覚悟を持ってるのか……俺とは違って責任ある立場に居るってのに。
マサル「おいおい、何シケた顔してんだいトレーナー?アンタがそんな顔する必要なんてないよ!アタシ等はアタシ等でこれが正しいと思ったからこうしたまでだ。寧ろアンタのあの行動で一気に火が付いたくらいさ。」
レディー「フフフ、その通りだよ。君が発言した事で我々が動いた、そしてこの結果が生まれた、それで充分じゃないか。それに有象無象が騒いだところで痛くも痒くも無い、何故なら……君が正しくて、彼等が間違っているからだ。」
タリアト「この者達の言う通りだ八幡、お前があの大観衆の前であんな事をしなければライスシャワーはもとより、他のウマ娘も同じ扱いを受けていたかもしれない。その事を考慮すればお前の心から思っている事を叫んだあの演説は、決して間違いではないのだ、お前は堂々と胸を張れ。意趣返しだと思え。」
マンノウォー「見ていて気分の悪いものだったからな、不快そのものだった。だが八幡が叫んだ事で一気に空気が変わったのも事実、きっと明日から忙しくなるだろう。謝罪文がトレセン学園やURA本部を飛び交い、ウマTUBEには謝罪動画が配信されているだろうな。逆もあるだろうがな。」
スピード「そういった者には思い知らせてやれば良いのですよ、我々の本気を。」
その後も細かい内容を詰めに詰め、日付が変わる1時間前くらいで会談が終了した。明日の朝9時にURA本部による【重要なお知らせ】で発表する事になった。トレセン学園でも同じ時間に全校集会で発表する事になっている。
え、確定早くないって?スピードシンボリさんが会長を絶対納得させると息巻いていたから、めっちゃ本気なのだと窺えるからだ。
スピード「さて、遅くまで付き合ってもらって感謝する。時に比企谷トレーナー、君はこれから東京に帰るのかな?」
八幡「いえ、この時間では東京行きの電車はありませんので、何処かの施設に泊まる予定です。」
スピード「であれば、今日は私が懇意にしている施設に来ないか?娘も孫の事で色々と君の口から聞きたいだろうからな。無論ルドルフや君の師匠達も一緒で構わない、どうかな?」
八幡「俺としてはありがたい話ですが、先生達はどうします?宿を取ってたりします?」
タリアト「あぁ、残念ながら京都のホテルを予約してある。スピードシンボリ、ありがたいお誘いだが先約があるので断らせてもらう。八幡、お前は世話になってもらえ。せっかくの厚意なのだからな。」
八幡「はい。ではお言葉に甘えさせていただきます。」
スイート「娘の話、たくさん聞かせてくださいね。明日は遅く起床していただいても構いませんので。」
スピード「私も君からクリフジ殿の話を聞きたい。どんな方だったのか気になっているものでね。」
ルドルフ「……こんなに活き活きとした母上と祖母上を見るのは初めてだよ。やはり兄さんは凄いな。」
八幡「別に俺が凄いわけじゃねぇだろ………」
これはアレだな、夜更かし確定だ。2人の目が『今から楽しみだ。』っていうのがハッキリと伝わるくらいだからな。別に慣れてるから問題無いですけどね、一応言っときますよ?今23時ですからね?もう日付変わりますよ?
ーーーおまけ・車内ーーー
スピード「えぇ、なので今回の事が2度と起きないようにする為にも比企谷トレーナーがあのレース場で放ったレース観戦の中止を実施するべきだと、サクラシンゲキ、ヒシマサル、ハギノトップレディ、そして私スピードシンボリ、合わせて4名は1ヶ月間の観戦中止を要請します。」
八幡「……相手ってきっと会長ですよね?」
スイート「そうね、母上は多忙な方だから。それよりもルドルフ、貴女はトレーナーさんの事を『兄さん』と呼んでいるのね。」
ルドルフ「っ……お見苦しいところをお見せしました。」
スイート「いいのよ、気にしてないわ。それにトレーナーとウマ娘の距離が近いのは良い事だもの。」
ルドルフ「はい。私が全幅の信頼を置けるトレーナーです。」
八幡「強引にメンバーになった奴がよく言う。」
ルドルフ「どうしても君の担当になりたかったのだから仕方ないだろう。」
スイート「ふふふっ、そういうところは変わっていないのね。少し安心したわ、ルナ。」
ルドルフ「は、母上、それは………」
八幡「?何か変な事言ってたか?」
ルドルフ「い、いや、分からないのであればそれで構わない。」
八幡「?」
スイート「ルナは昔のルドルフの呼び方よ。幼名といえば分かるかしら?」
八幡「あぁ、成る程………」
ルドルフ「………母上。」
スイート「そう睨まないでちょうだい。このくらいで悪さをするようなトレーナーではないでしょう?」
八幡「流石にあだ名でイジったりしませんから。」
スピード「よし、会長もこの件は流石に無視出来ないという事で私の話に賛同してくださった。しかも他のメンバーの説得も手伝ってくれるとの事だ。さて、後は文を考えるだけだな。」
八幡「仕事早ぇ………血筋だろうな。」