八幡side
今日のトレーニングは休みにしているから、この後の予定は無い………筈だったんだが、ライスのご両親が昨日のレースを見て俺と電話をしたいという事をライスに伝言を残していたらしく、今はトレーナー室でライスと一緒に居る。因みに校門前では取材班の連中がまだ残っている。一時は退散したらしいが、多分昼休憩だったのだろう。んで今も粘ってるらしい。絶対昨日の事と観戦中止の件だろうな。
……とりあえず今の話は置いといて、話を戻そう。俺はライスのスマホを使ってご両親と電話をするところだ。昼休みの時にライスが今日の16時くらいに電話をするとご両親に連絡を入れたら、即OKの返事が来た。ついでに言うとテレビ電話だ。
お母様『もしもしライスちゃん?トレーナーさんも聞こえていますか?』
ライス「あっ、お母様!うん、聞こえてるよ!」
八幡「ご無沙汰しております、お母様。お父様はまだご帰宅されていないみたいですね。」
お母様『はい。お父様は今、学校に居るんです。今日の練習をお休みにする事を部員に連絡してから家に帰るからと言っていました。お父様が来てからお話しましょうか。』
ーーー数十分後ーーー
お父様『ライス、トレーナーさん、遅れてしまって申しわけ無い。』
八幡「いえ、それ程待っていませんので大丈夫です。それにこちらもトレーニングがお休みなので時間には余裕があります。それで、お話がしたいとライスから聞いたんですが。」
お父様『はい。トレーナーさん自身がご理解しているとは思いますが、天皇賞が終わってすぐのトレーナーさんの発言の事について、です。』
……まぁ、やっぱそうだよな。
お父様『レースを見ていました。なのでトレーナーさんのお話も聞いていました。トレーナーさんの話をする前の雰囲気は菊花賞とよく似たものを感じていました。またウチの娘がこんな目に遭っているのかと思うと腑が煮え繰り返る思いでした……ですが、トレーナーさんがあんな大勢の前であれだけの行動を取った事に驚きました。それも娘の為にあんなに言ってくれた事も。』
八幡「ライスは俺の担当ウマ娘です。自分の担当が悪く言われているのを見て黙って見ているわけにはいきませんから。」
お母様『でも、そちらは今大丈夫なんですか?昨日の時点でニュースでは天皇賞のトレーナーさんの事で持ちきりでしたし……』
八幡「テレビではかなり大々的に報道されてますけど、実際にはそんなに大騒ぎにはなってないんですよ。それに大きくすればするだけ自分の首を絞めに行くようなものですからね。向こう側は俺達やトレセン学園、URAには下手な行動は出来ないんですよ。ライスも特に悪口とかは……レース場では言われましたが、学園では言われていないみたいなので大丈夫だとは思います。」
ライス「あっ、本当に大丈夫だよ!逆にとっても気を使ってくれるんだ。観に来てくれたライスのお友達は『私達はあんな風に思ってないから!』とか『頑張ってたのを知ってるから!』とか言ってくれたから。」
さっき言ってた俺の話は事実だ。それに今ではウマTUBEに謝罪動画も上がってる。そんでルドルフ経由で聞いたんだが、URAに京都レース場に来ていた人達からの謝罪文が届いているとの事だった。文面からして暴言を吐いていない人達が書いた内容だとスピードシンボリさんが言っていたようだ。
けどライスの話も本当で良かった……学園に帰って入って来た時、俺はいつも以上に周りの声を気にしていた。気にしていた限りではライスの陰口を叩いていた生徒は居なかった。
お父様『そうか……今のお話を聞いて安心しました、とにかくトレーナーさん達に何もなくて良かったです。私の学校でもよく話をしていたのですが、レースが1ヶ月もの間、観戦中止になるんだとか?』
八幡「はい。5月中はレースは普通に行われるんですが、レース場にはトレーナーを含めたURAの関係者、トレセン学園の生徒以外の入場は一切の禁止になりました。俺達よりもそっちの方が今は大きいですね。」
お母様『でも無いわけではないんですよね?』
八幡「まぁ、そうですね。今も学園の校門前で取材班が居ますから。」
ライス「ま、まだ居るの?」
八幡「ああいった連中は諦めが悪いからな。俺かライス、理事長辺りが相手しないと引き返さないだろうな。当然、向こうはこっちに許可を取ってるかどうかなんて、学園の敷地内に入ってない時点で一目瞭然だけどな。」
お父様『……トレーナーさん、1つお聞きしたいのですが、これからのライスの予定というのはお決まりなのでしょうか?』
八幡「天皇賞までのトレーニングが過酷そのものだったので、暫くはレースを控えるつもりです。そうですね……早くとも夏、遅くとも秋を予定しています。」
お父様『でしたら、もう1度こちらにいらっしゃいませんか?改めてトレーナーさんにはライスを守っていただいたお礼もしたいので。』
八幡「ありがとうございます。ですが今はライスの他にも2名程、新しく担当が出来ましたので、都合がつくのは少し難しいと思います。」
お母様『そうですか……でしたらご都合のつく時で構いませんので、お願い出来ませんか?』
ご両親、どうしても俺にお礼がしたいみたいだ。俺自身、ライスの為にやっただけだからお礼なんてしてくれなくてもいいんだが、娘の事ともなれば流石にそのまま流すわけにはいかないんだろう……
八幡「分かりました。時間が出来た時にはライスを経由してそちらに伺おうと思います。」
お父様『はい、是非いらしてください!』
お母様『約束ですからね!他の担当の子達もお連れしていただいても大丈夫なので。』
八幡「分かりました。」
それからはライスのご両親と連絡先の交換を提案されて、交換する事にした。にしても昨日の内に俺と話がしたいって電話をしてくれるなんて、ホントにライスのご両親って良い人だよな。
お父様とお母様が気にしないわけないですもんね。