ルドルフside
天皇賞から1週間が経過したが、未だ世間は天皇賞の事を引き摺っている。無理も無い事ではあるが、日曜日に行われたNHKマイルCを観られなかった事に憤りを感じている人々は多い。それを見たURAは今日の夜19時に、記者会見を行う旨を発表した。会見の場に立つのは私の祖母のスピードシンボリ、ただ1人だ。
当然、私はその会見を見るつもりだ。因みに生徒会室で見るのだが、兄さん達も共に見るつもりでいる。私にエアグルーヴにシービー、ライスシャワーと兄さんの5人だ。一体どんな事を話すのか、祖母上がどんな発言をするのか、とても気になっている。
ーーー生徒会室ーーー
エアグルーヴ「会長、接続完了しました。」
ルドルフ「ありがとうエアグルーヴ。会見の内容は祖母上から教えてもらっているが、どんな事を言うのだろうか?」
エアグルーヴ「会長、会見の内容は?」
ルドルフ「レース観戦中止の件だ。当然と言えば当然、かもしれないな。」
シービー「けどさ、それって今更だと思うんだけど?聞いたところで意味なんて無いと思うけど。」
ルドルフ「それもこの会見で知る事も出来るだろう、可能性の話だがな。」
ライス「ねぇお兄様、この前まで来ていた取材の人達はもう居ないの?」
八幡「ウチがあんまりにもダンマリ決め込んでるからURAに鞍替えしたのかもしれないぞ。まっ、向こうから聞いてくる時点で俺からしてみれば応じるに値しない連中って評価だからな。」
エアグルーヴ「答えてやらんのか?わざわざ向こうから来ているのだぞ。」
八幡「連中は俺の欲してる答えを持ってなさそうだったからな、聞くだけ無駄だと思うしな。」
シービー「あっ、八幡来たよ!」
テレビの前には我が祖母のスピードシンボリが姿を現した。表面上の笑顔を作ってはいるが、奥底は笑ってはいなかった。
司会『それでは、定刻となりましたので会見を始めさせていただきます。本日のテーマは【5月中のレース観戦中止について】の議題です、テーマに沿った進行をさせていただきます。はじめにURA副会長のスピードシンボリさんより挨拶です。』
スピード『お忙しい中、ご足労いただきありがとうございます。今日はどうぞ、よろしくお願いします。』
司会『ありがとうございます。それでは早速質疑応答に入っていきたいと思います。』
それからの会見は順調に行われていた。祖母上は質問の内容に答えているだけなのだが、それだけなのだ。普通の会見に見えるのだが、私は違和感を感じた。
司会『以上で、今回の会見を終了します。』
エアグルーヴ「普通の会見でしたね。」
シービー「うん、これといって何かあったわけじゃ無かったね。」
八幡「………」
ルドルフ「………」
ライス「……お兄様、会長?」
エアグルーヴ「どうかしたのですか?」
ルドルフ「会見を丁寧に答えている祖母上に違和感を覚えてな、少し不自然に思えたんだ。」
八幡「……多分、こっからだな。」
全員「え?」
八幡「スピードシンボリさん、初めの時よりも感情が表に出てる。」
ルドルフ「何?」
八幡「前に会った時から少し思ってた。スピードシンボリさんは落ち着いてる時は右手を上にして手を重ねるが、高ぶってる時は左手が上になる。今は左手が上になってるからこの記者会見で思うところがあるんだろう。」
そんな細かい所作まで………
スピード『本日はありがとうございました。しかし、私はとても残念に思います。私にとっても、貴方達にとっても、何の意味も持たない会見となった事を。』
……突然の祖母上の言葉にその場は固まってしまった。祖母上の目はとても冷ややかなものだった。
司会『えっと………その、それはどういう意味、なのでしょうか?』
スピード『おや、それを言わなければ分からぬと?』
司会『……………恥ずかしながら。』
スピード『……では1から話すとしよう。この場に居る皆は最初に私、というよりURAに謝罪をした。私にはそれが理解出来ない。我々は貴方達に謝られる事を何1つしていないからだ。』
『で、ですが………』
『今回のレース観戦中止の件はURAの決定で行われた事ですよね?』
スピード『確かにレース観戦の中止は我々URAが決定した事……しかしただそれだけ、我々は1人のトレーナーの意思を汲み取ったに過ぎない。君達が謝るべきは本当に我々かな?』
………
スピード『………そうか、分からぬか。
取材陣『っ!!?』
スピード『もう1度言うが、我々URAに謝罪の動画や謝罪文を送られたとしても何ら意味は無い。理由は先に申し上げた通りだ。本当に謝るべきなのはライスシャワーではないのかな?君達が罵詈雑言を並べ責め立てたのは誰かな?レース観戦を中止になった原因は何かな?』
っ!!そうか、違和感の正体はこれだったのか!
スピード『先日、ライスシャワーの担当トレーナーの比企谷八幡に連絡を取った。内容はライスシャワーに対する謝罪についてだ。その結果に私は驚愕と憤慨を同時に感じた。我々に届けられた文の数は数え切れない程多かった。しかしライスシャワーに届けられたのは、片手で数えても覚えられる枚数だった。今回の件を本当に理解しているのはライスシャワーに謝罪文を送った者達だけだ。』
スピード『この言い方は失礼に値するだろうが、敢えて使わせてもらう。ライスシャワーや比企谷八幡に対して暴言を使った者達の中で、我々URAに謝罪を行った者達は自分達の行いをもっと見直すべきだな、とても道徳的な人格とは思えん。もっと言えば、レース観戦の再開の事しか考えていないというのがよく分かる。』
八幡「言うとは思ってたが、ここまで曝け出すとは思わなかったな……」
スピード『
そう言って祖母上はその場から立ち去って行った……意味が無くなったと知った途端、シービーがテレビを切った。さて、色々と話したいものだ。
理解していた人達=ライスに謝罪した人達(超少数)
理解してない人達=URAに謝罪した人達(超多数)