エアグルーヴside
エアグルーヴ「はぁ……はぁ……ふぅ……よしっ!ジュニア王者の一角、獲ったぞ!」
奴から逃げの指示が出た時はどうなるかと思ったが、自身のペースに持ち込めたのが幸いしたな。それに坂へのアプローチも完璧だった。これならこの先のティアラ路線にも通用する!
「流石は【女帝】だな………」
「あぁ、あの母親の娘なだけはあるな。」
「他のウマ娘とはケタが違う……」
今はまだ女帝ではない。この先に待っているティアラ路線を………私の母が制したオークスを制してこそ、私は【女帝】に大きく近付ける。
エアグルーヴ「どうだ、私はお前の指示であっても勝てて………誰だ、あの隣に居るのは?」
トレーナーの隣にはウマ娘が立っていた……それも学園の人間ではない、成人したウマ娘だった。かなり親しげだ………一体誰だ?奴の交友関係に興味は無いが、これまで関わってきたウマ娘の中であのウマ娘は見た事が無い。
エアグルーヴ「………」
問いただすか?いや、奴の事などどうでもいい。それに我々の契約には何の関係も無い。我々の関係は『レースとトレーニング』のみに限定されている。無駄な事に時間など割く必要は無い。
八幡「よう、お疲れさん。」
エアグルーヴ「あぁ、お前の指示通りに走ったぞ。」
八幡「あぁ、流石だった。」
エアグルーヴ「………1つ、聞いてもいいか?」
八幡「?何だ?」
………いや、あのウマ娘の事やコイツの事は気にするまい。私は私の道を歩む、コイツはその道を作る者に過ぎん。それに、契約の時も言った事だ。互いを利用するだけの関係だ。
エアグルーヴ「………いや、何でもない。忘れろ。インタビューへ行くぞ。」
八幡「あぁ………」
そして、我々は取材陣が待つ場所でインタビューを行った。
「まずは今のご感想はいかがですか?」
エアグルーヴ「また一歩、私の指標とするものに近付けたと感じています。」
「今回のレースでは、エアグルーヴさんの得意な脚質ではなかったように思えますが、それについてはどう思いましたか?」
エアグルーヴ「レースの展開についてはトレーナーからの指示ですが、私も納得した上でレースに臨みました。それに、自分自身の走りが出来ましたので、特に思う事はありません。」
「ではトレーナーに質問します。何故今回のような大舞台で逃げの作戦を切り出したのですか?」
八幡「(俺じゃなく先生の指示なんだが……まぁいい。)今回のレースでは逃げを得意とするウマ娘は1人も居ませんでした。なのでもし、この先のレースで逃げウマ娘が1人も居ない場合の展開も想定しての判断です。」
「エアグルーヴさんの道中はどうでしたか?」
八幡「自分の想定していた通りの走りでした。不安要素の無い見事な展開でした。問題はまだ探せばあるとは思いますが、その点に関しましてはこれからのティアラ路線までに克服し、更なる成長を遂げた彼女をGⅠの舞台でお見せいたします。」
やはり聞かれたな、あのレースでやった逃げの事について。だが何故だ?何故コイツはいきなり逃げなどと言ったのだ?今までの事を踏まえても、コイツがいきなり作戦変更をするとは考えられん。
ーーー電車内ーーー
エアグルーヴ「………」
八幡「………」
エアグルーヴ「………何故、今日は逃げだったんだ?」
八幡「いきなりだな……理由は説明したと思うが?」
エアグルーヴ「お前の行動を考えても不自然だと思った、直前に来て作戦変更なんてお前らしくもない。何故だ?」
八幡「説明した通りだ、今回は逃げ作戦のウマ娘が居なかったから自分の展開を作るのが目的だったってだけだ。他にはねぇよ。」
エアグルーヴ「………そうか。」
私が聞き出せたのはここまでだった。納得したわけではなかったが、それで終わらせた。だが世間はこれだけでは終わらなかった………
ーーー翌朝ーーー
エアグルーヴ「おはようフジ。」
フジ「っ!あぁ、エアグルーヴ………今日の新聞だけど、見るかい?どれもこれも酷いものだよ。」
エアグルーヴ「何?」
『エアグルーヴ完全勝利!!しかし担当トレーナーは大舞台でまさかの作戦変更!!』
『担当トレーナー、GⅠの舞台で得意脚質使わず逃げ指示!!無能の表れ!!』
『エアグルーヴの独走勝利!勝てたは良いが、担当はトレーナーとしての素質を疑う作戦変更!!』
エアグルーヴ「……何だこれは?」
フジ「今朝のだよ。まさかこんな事を書くなんてね……いつもの作戦と違うとはいえ、ここまでトレーナーさんの事を叩くなんてね。」
エアグルーヴ「勝手な内容だ………私は了承した上であの走りをしたのだ。奴が叩かれる筋合いなど無い筈だ!」
フジ「私も見た時は驚いたよ。あの会見は私も見てはいたけど、こんな風に書くなんてね………」
文面を見ると、私に対する非難の言葉は見つからない。それどころか称賛の言葉が多数あった。だがトレーナーに対しては非難、批判の言葉が次々と並べられていた。
エアグルーヴ「……済まん、少しこれを借りるぞ。」
フジ「……うん、気を付けるんだよ。」
きっと奴もこの事については知っている筈だ!こんな事、許される筈が無いっ!!
八幡の評価が大暴落………八幡やってないのに。