八幡side
ガチャッ…バタンッ!
八幡「………ふぅ。」
………ライスを残したまま帰って来てしまった。本当なら俺も京都に残りたかった、だが俺にはライス以外にも担当がいる。ソイツ等を残して京都に滞在するわけにはいかない。ライスの関東への搬送の事だが、未だに目を覚ましていない状態での搬送は難しいとの事だ。どの道、ライスが目を覚ましてからという事になる。
八幡「それまで俺は、残るメンバーのトレーニングか………今はそっちに意識を集中するしかないな。」
6月末日にはラモーヌのSDT、7月はルドルフのデビュー、それが終わればシービーのトライアルレース、これから忙しくなるというのに頭が上手く働かない………
八幡「ふぅ……酒に頼る気分にもならない。走る気分でもないし、本でも食でも運動でも満たされる気がしない。メニュー考えようにも、グチャグチャなメニューにしかならない気がする。」
携帯を見る事すら面倒だったけど、ちょっと見てみるか。どうなってんだろう?
八幡「うわ、何だこれ………」
LANE:156
メール:41
電話:107
すげぇ着信量……
♪〜♪〜
八幡「っ!ミスターファブル?もしもし?」
ファブル『やぁミスター比企谷、そっちは夜の9時か10時くらいかな?お話してもいいかな?』
八幡「……えぇ、大丈夫です。』
ファブル『ありがとう。今朝、宝塚記念を見たよ………あれはとても残念に思った。君の気持ちは察するに余るよ。それとライスシャワーさんの状態だが、君がよければ教えてくれるかい?』
八幡「……分かりました。」
俺はミスターファブルにライスの今の状態を細かく教えた。これを言う度に気分が落ちる……だが相手は世界の大先輩だ。失礼をしない為にも言おうと思った。
ファブル『………そんなにも酷い状態なのか。済まなかったねミスター比企谷、知らなかったとはいえ気軽に聞いていいようなものではなかった。』
八幡「ははは……まぁ、そうですね。」
ファブル『私も今日のレースの事を担当の子達に知らせたよ。皆最初は信じなかったけど、雰囲気で察してくれたよ。映像を見ないようにと言ったけど、カーネギーは見てしまってね……結果的に泣かせてしまったよ。』
八幡「……ミスターファブルも苦労したみたいですね、お疲れ様です。」
ファブル『僕なんかよりも君の方だよ。とても酷い顔をしているよ。』
八幡「えぇ、色んな人から言われました。」
ファブル『そうだろう……話の続きだけど、カーネギーは一頻り泣いた後、ライスシャワーさんを元気づける為に次のレースに向けて頑張ると言っていたよ。』
八幡「………そうですか。」
ファブル『さっき、ライスシャワーさんの復帰は絶望的だと言っていたね。この事はカーネギーには伝えないでおくよ、せっかく出したやる気を削ぎたくないからね。それと、カーネギーの次走はニエル賞だよ。』
八幡「ニエル賞……凱旋門賞のトライアルレースですね。しかもクラシック限定の。出る気なんですか?』
ファブル『既にそう言ってしまったからね。』
カーネギーがそんなにやる気を出しているのか……しかし凱旋門賞か、大きく出たな。
ファブル『ミスター比企谷、これだけは言っておこう。君が折れてはいけないよ。』
八幡「っ!」
ファブル『私から言われても説得力は感じないと思うけど、君には他にも支えるべき担当が居る筈だ。その子達は君を頼りにしている、その子達の為にも君という灯火を自ら消してはならないよ。ライスシャワーさんの事を忘れろとは言わない、そっちは頭の片隅に置いて優先すべき事を考えるんだ。ライスシャワーさんが目を覚さないのであれば、問題は停滞している状態。進められない問題を気にしていても意味が無いんだ。君が今、何をするべきなのかを考えて動く事が求められていると思うよ。』
八幡「………」
今、何をするべきなのかを考えて動く………か。
八幡「ありがとうございます。俺が今、何をするべきなのかが見えた気がします。」
ファブル『それは何よりだよ。そうそう、アイルランドのミスターオライエンとイギリスのミスターアップルとも話をしたんだ。ミスクラウロードもミスクローネも涙を流していたと聞いたよ。ミスクラウロードは再戦に燃えていたらしいけど、ミスクローネは立ち直れていないと聞いたよ。』
八幡「そうですか……3人はライスと仲が良かったですから無理も無いですね。ミスターオライエンとミスターアップルにもよろしく伝えてください。俺は2人の連絡先を知らないので。」
ファブル『分かったよ、伝えておくよ。ミスター比企谷、ライスシャワーさんが目を覚ましたら連絡してほしい。きっとカーネギーはライスシャワーさんの安否を気にしていると思うしね。』
八幡「分かりました。電話をいただけて良かったです、少し頭の整理をする事が出来ました。」
ファブル『うん、それは良かった。それじゃあ、君からの電話を待っているよ。』
八幡「はい、時間を見て電話をしますよ。深夜に電話をするわけには行きませんからね。」
ファブル『それもそうだ……じゃあ、またね。』
………ふぅ。
八幡「心ん中で溜息つくのは何度目だろうか……」
けど………
八幡「【パンッ!!】……うしっ、メニュー作るか!」
今年は夏合宿に参加しないから、色々とトレーニングの幅を効かせる必要があるしな。
ファブルトレーナー……ありがとうございます!!!