八幡side
ライスの決意を聞いてから1週間が経った。その後は学園に戻って会見を開きたいと言ったらすぐに手配してくれた。内容はルドルフのデビュー戦の事やシービーの次走、そしてライスの今後についてだ。ハッキリ言えば1つ目と2つ目は問題なく終わった。問題はやはりライスの件、想像通りではあったが目の前の取材陣にも驚きを与えた。きっと聞いていた視聴者にも衝撃を与えたと思う。何せあの怪我で現役を続けると言ったんだ、驚かない方が不思議なくらいだ。勿論、俺の考えも伝えた。トレーナーとしては絶対反対だと。しかし本人の意思もかなりのものだったので、俺も取材陣や見ている人達にこう言った。
八幡『確かに皆さんの反応は至極当然のものだと自分も思っています。それに現実的ではない上に、彼女のこれからの事を考えれば引退をした方が身の為にもなります。私自身も彼女に引退を強く進言しました。しかし彼女の意思は固く、レースの復帰を望んでいましたので、その気持ちを汲み取る事にしました。』
これだけでは世間が納得しないのは分かっている。しかし時間の関係もあってそれ以上の事は聞かれなかった。当然ながら同僚のトレーナー達からは怪訝や懐疑を含んだ顔で俺を見ていた。トレーナーとして非常識な行動を取ったんだ、当然だ。
そんで今の俺はというと………
八幡「……それで、お話とは?」
先輩2「お前、あの会見はどういう事なんだ?」
八幡「……見たままと言うしかないのですが?」
先輩2「ライスシャワーの脚が限界なのは誰が見ても明らかだろ!それなのに現役続行!?お前はバカか!!本人の意思を汲み取ってと言ってた結果がアレかっ!?」
八幡「指摘は当然だと思ってますよ。あの怪我で現役を続行なんて何を考えているんだと言われても仕方ない事だって分かってます。ですがもう決めた事です、変えるつもりはありません。」
先輩2「………お前、ライスシャワーをどうするつもりなんだ?」
八幡「当面は現役復帰出来るように治療とリハビリですよ。それからの事はそれから考えますよ。」
今のライスはそれしか出来る事は無い、当面の間はリハビリに専念してもらう事になる。
先輩2「……今のお前に味方なんて居ないぞ。」
八幡「だから何です?誰かに対して味方になってくれなんて言った事ありませんよ。欲しいとも思ってませんし、なってくれと頼むつもりもありません。」
その後は特に何も無く、先輩2は何処かに行ってしまった。特別何かするような時間では無かったからよかったが、これがトレーニング前でなくて良かった。
ーーー部室ーーー
八幡「………」
アルダン「あの、大丈夫ですか兄様?」
八幡「ん?あぁ、大丈夫だ。済まない。」
シービー「最近ボーッとしてる事多いよ?」
ルドルフ「会見の後、やはり兄さん宛に手紙が届いているのかな?」
八幡「それは否定しないが、色々と考えるようになってな……お前達の事も勿論だが、今後の事もな。」
アルダン「今後、と言いますと?」
八幡「あぁ………今の俺は世間からも同僚からも評判は良いとは言えない。作ったチームを解体して他のトレーナーに「八幡、あたしは絶対に残るからね。」……シービー。」
シービー「あたしは八幡が良いから八幡の担当になったんだから。抜けるつもりなんて全く無いよ。」
ルドルフ「私もだよ兄さん、先を越されてしまったが、シービーの言った通りで私も抜けるつもりなど毛頭無い。」
アルダン「私も同じです。それにチームを解体したとしても、兄様の担当であり続けます。」
ラモーヌ「私も抜けるつもりは無いわ。貴方も此処に居る皆がその気持ちだというのは理解しているのではなくて?」
………やっぱり答えはこうだったか。
八幡「いいのか?お前達まで何か陰口を言われるかもしれないぞ?」
ラモーヌ「そんな事で私達が動じると思って?それに、その程度の戯言なんて放っておけばいいわ。有象無象の小言程、無駄な事は無いわ。」
八幡「……随分な言い様だな。」
ラモーヌ「だってそうでしょう?貴方に聞くわよ、好きの反対は何か知ってる?」
八幡「……よくある答えなら『無関心』だろうが、この場合の答えは『嫌い』だろ?」
ラモーヌ「………ふふふっ、流石は兄様ね。その通りよ、私はそんな人達に興味は示さないけれど、そういう人達は嫌い。」
ルドルフ「君らしい答えだな、ラモーヌ。」
シービー「まぁでもその気持ちは分かるよ。八幡の事を陰でコソコソと悪口言う人なんてあたしも大っ嫌いだしね!」
八幡「……ありがとうな、お前達。」
ラモーヌ「そういう事だから兄様、気を遣ってあげた妹にお礼をするべきではなくて?」
八幡「………何すればいいんだよ。」
ラモーヌ「………」ジィ∼
八幡「(つまり自分で考えろと……)メジロのウマ娘に対して気軽に何かをするわけにいかないのだが?」
ラモーヌ「そんな事気にしなくていいわ。」
八幡(どうすりゃ良いんだよ?ラモーヌはあぁ言ってるが、ラモーヌは令嬢だ。下手な事は出来ない。だが確実に言えるのは………前にアルダンにやったのだけは絶対にやめておこう。」
ラモーヌ「………それをやりなさい。」
八幡「……は?」
ラモーヌ「アルダンにした事を私にもしなさいと言ったのよ。」
八幡「……何で俺の心の声が「八幡、途中から声に漏れてたから。」………俺の悪い癖、何でこんなタイミングで出るんだよ。」
ラモーヌ「いいから、やりなさい。」
八幡「………はぁぁぁ、後で文句言うなよ。」
俺はアルダンにやった、耳を五指でなぞるように撫でてみた。耳に敏感なウマ娘だが、ラモーヌはあんまり効果が無いと思っていた、のだが………
ラモーヌ「………///」フルフル
アルダン「そうなりますよね……」
ラモーヌ「……兄様、この前のSDTで私が優勝したわよね?」
八幡「え?あ、あぁそうだな……」
ラモーヌ「今度、屋敷の私の部屋に来なさい。」
八幡「何で!?」
ラモーヌ「………鈍い人。今の流れで分からないのかしら?」
………え、今のをやれって?しかもメジロ家で?そんな事出来るわけねぇだろ。
ルドルフ「兄さん、もしデビュー戦で勝利を上げる事が出来たら、ラモーヌと同じ事を所望する。」
シービー「じゃああたしは3冠獲ったら!!」
アルダン「では私は2人の時にお願いします。」
八幡「何でやる流れになってんだよ………」
先輩2、何故出張ってきた?
八幡、チームの為にチーム解体を考えるも皆も抜ける気持ちは無いみたいですね。