ルドルフside
7月に入って約3週間が経過した。時が経つのは早いものだ。今年は夏合宿には参加せず、トレセン学園に残留という形でトレーニングを積んだ。兄さんはチームを設立した段階で夏合宿の参加は考えていなかったのだそうだ。恐らく私とメジロアルダンとライスの事を考慮しての事だろう。合宿に参加してしまったら、気軽にお見舞いには行けなくなってしまうからね。エアグルーヴとブライアンには迷惑を掛けてしまうが、頑張ってもらおう。
そして私達チーム・カペラは今、新潟レース場に赴いている。その理由は………私のデビュー戦だ。
八幡「いよいよだな、ルドルフ。」
ルドルフ「あぁ、漸くだよ兄さん。この脚も早く走らせろと疼いているよ。この私の初陣、勇猛無比の走りを見せるとしよう。」
八幡「デビュー戦でそんな走りを見せられたら、今後の走りはもっと凄いんだろうな?」
ルドルフ「ふふふ。さて、それは兄さん次第だな。」
八幡「まぁいい。じゃあ作戦だが、先行策で行くぞ。逃げでなければどの位置でも構わないが、すぐに抜け出せる位置を取る事だ。直線が長いからってのんびりし過ぎないようにな。もし1着獲れなかったら、今日1日ルナって呼ぶからな。」
ルドルフ「成る程、背水の陣というわけか。いいだろう、であれば兄さん。私が1着を獲ったらラモーヌとメジロアルダンにやったアレを所望するよ。約束でもあったしね。」
八幡「……まぁいいだろう。」
ーーー観客席ーーー
八幡「ただいま~。」
シービー「
八幡「早速食ってんのかよお前は……それ絶対タレかつ丼だろ。食欲そそるモン食いやがって。」
シービー「んっ……あぁ~美味しっ♪八幡も1口食べる?あ~ん♪」
八幡「要らん要らん、俺は別のを食うから。」
アルダン「因みに何をお食べになるのですか?」
八幡「背脂ラーメン。」
ラモーヌ「……胸焼けしそうな名前ね。」
八幡「お前達姉妹には縁の無い料理かもな。ましてや背脂なんて1口食って終了だろう。写真取ってファインに自慢してやる。」
シービー「性格悪いね~八幡。」
八幡「進行形で飯テロやってるお前に言われたくねぇよ。2人は何か食べるか?よかったら買ってやるぞ。」
ラモーヌ「そうね……ありがたいけれど遠慮しておくわ。貴方の作る料理の方が美味しそうだもの。」
八幡「そんな事言っても作らないからな?此処には調理器具なんて一切無いんだからな。帰ったら考えるけどよ。」
ラモーヌ「なら今日のディナーは兄様の手料理かしら?」
アルダン「っ!それはとても美味しそうですね♪」
八幡「んじゃあ帰ったら食材揃えるか。言っておくがメニューは俺の独断で決めるが、それで良いか?」
ラモーヌ「えぇ、構わないわ。」
アルダン「お願いします。」
シービー「よろしく八幡!」
八幡「……要らん奴が居た気がするが、まぁいっか。そろそろ始まるぞ。」
ーーーコース場ーーー
ふむ、バ場はそんなに良い状態ではないか。だが問題無い、私は私の走りをするだけだ。【皇帝】の走り、見せるとしようか。
実況『新潟第3Rが間も無く発走されます。このレースにはトレセン学園生徒会長、シンボリルドルフが参加しています。デビューする前から【皇帝】という異名を持ち、漸くこのターフへと姿を現しました。満を持してのデビュー戦!どんなレースを魅せてくれるんでしょうか!?』
解説『このレース圧倒的1番人気ですからね、期待してしまいますね。』
実況『さぁ各ウマ娘が揃いました、体勢完了です新潟第3Rメイクデビューです!!』
ガッコンッ!!
実況『スタートしました!揃ったスタートを切りました!先ずは先頭争い、どのウマ娘がハナを切るのか!?ヘイアンローズがグングン行きました!一気に先頭!少し離れた位置にブロークンヒルとタカノビジャン、シンボリルドルフは4番手の位置でレースを進めています。新潟名物の向正面950mがお出迎えです。10人のウマ娘が軽快に走っております!』
この位置ならば前も後ろも見られる……さて、直線を向いたとしても直線距離は658m。スパートをかけるにしては長い距離だが、ライスはそれをデビュー戦でやってのけた。ならば私も勇猛無比なる走りをすると誓った以上、それに見合う走りを全うしよう!
シービー「ねぇ八幡、ルドルフは先行策みたいだけど、他にはどんな事を伝えたの?」
八幡「すぐに抜け出せる位置に居ろとは伝えた。この新潟レース場の作りからして、差しや追込が後ろから伸びやすい。差される前に前に行けるようにポジションは取っておかないと抜け出せなくなるからな。それは避けたい。」
アルダン「それもそうですね。ライスさんに私は先行が脚質なので勉強になります。姉様も逃げ以外でしたら素晴らしい脚をお持ちですから、その走りは今でも魅せられます。」
ラモーヌ「それは嫌味かしら?私の場合は不利を受けてそうせざるを得なかったのよ。」
アルダン「それでも勝てたのですから素晴らしいと私は思いますけれど?」
八幡「その辺にしておけ、そろそろ直線に入るぞ。」
シービー「……ねぇ八幡、あたしの勘違いかもしれないんだけどさ、ルドルフもうスパートかけてない?」
八幡「………かけてる。」
実況『4コーナーを曲がってすぐにシンボリルドルフが既に先頭に立っている!!しかしまだゴールまで600~700mあるぞ!大丈夫なのか!?後ろからは2番手の位置にブロークンヒルが上がってきているが、前との差は開いている!!』
「何なの、あれ………」
「あれで本当に私達と同じジュニアクラスなの?」
「どんどん離れてく………」
実況『シンボリルドルフ先頭!シンボリルドルフ先頭!!後ろを大きく引き離した!!これはもう決まったか!!後ろのウマ娘は遥か後方っ!!強過ぎるっ、シンボリルドルフ今ゴールインッ!!!なんというレースだっ!!自分を除いた9人を、直線寄せ付けもせずにゴール板を駆け抜けました!!』
八幡「……勇猛無比の走りをするとは言っていたが、これは凄いな。しかもちゃっかりレコード叩き出してるし。」
シービー「ルドルフ、やり過ぎ………しかも見てよ、涼しい顔してるよ?」
はぁ……まだ走り足りないと言っているような気がする。ふふっ、これも兄さんの影響か。これだけ全力で走ったのに、まだ物足りないと感じるとは………
ルドルフ「さて、帰るとしようか。」
ルドルフ……ホンマにやり過ぎや………