八幡side
さて、1ヶ月と1週間が経って今は9月。もうすぐシービーが出走する神戸新聞杯が迫ってる。夏合宿に行っていた連中も戻って来ていて、ブルボンも夏のハードトレーニングを終えてオールカマーに出走予定だ。そんでフランスのミスターファブルから連絡があったのだが、カーネギーがニエル賞に参戦すると言っていた。それに加えてイギリスとアイルランドの情報もくれた。
イギリスのクローネとアイルランドのクラウロードの次走は………凱旋門賞だと言ったのだ。2人のここ最近のレースを調べたが、長距離がメインだ。それを急に中距離の世界最高峰レースに参戦とは……かなり思い切った事をすると思わずにはいられなかった。それにカーネギーのニエル賞はクラシッククラス限定の凱旋門賞トライアルレース、つまりカーネギーの最大目標は………2人と同じ凱旋門賞だ。
八幡「すげぇな……そう思わないか?」
ライス「うん、1年前に一緒に走った人達が凱旋門賞に出走するなんて………」
八幡「カーネギーはニエル賞次第だな。1週間後にレースだから一緒に見るか?」
ライス「うん、応援したい!」
八幡「そうか……暇してないか?」
ライス「1人の時はちょっぴり。でもお兄様がトレーニングの後も来てくれるから大丈夫だよ。それに、他の人達も来てくれるから。」
八幡「チームメイトや友達か?」
ライス「うん。皆励ましてくれるから元気が出るんだ。早くライスも走りたいなぁ〜。」
八幡「………頑張って治そうな。」
ライス「うん!」
ライスの性格は重々理解しているつもりだが、骨折して2ヶ月経った今でも骨折した脚を治そうと必死だ。ネガティブになる様子も無い、弱気にもなってない、それだけでも凄い事だと分かる。
にしても……
八幡「色んなお見舞い品だな……果物、花束、本、抱き枕に……ダンベルか。ホント色々あるな?」
ライス「皆色々な物を持って来てくれるんだ。持ち帰る時が大変になっちゃうね……」
八幡「その時は俺も手伝うから安心しろ。ライス、ダンベルを使うのは構わないが、あまり身体を動かすような使い方はするなよ?」
ライス「それはしてないから大丈夫だよ。お兄様は平気?毎週この曜日はトレーニング終わりに来てくれてるけど………忙しかったら無理して来なくてもいいんだよ?」
八幡「無理してるわけ無いだろ。俺の大事な担当ウマ娘なんだ、俺の足が骨折したとしても這って来てやるよ。」
ライス「そ、それはダメだよ!お兄様まで怪我しちゃったらライスどうにかなっちゃいそうだもん!」
………はい、それはお兄様が間違ってました。
ーーー病院・駐車場ーーー
八幡「………」
「あっ、トレーナーさん!」
八幡「?」
「こんばんは、僕の事覚えてませんか?フランスのレースので応援に行った時に会った。」
八幡「っ!あぁ、どうもご無沙汰しています。」
「自分はまだ1度もライスさんのお見舞いには行けてませんけど、様子はどうでしょうか?」
八幡「まだ2ヶ月なので何とも……ですがライス自身も全く弱気になっていません。強気な姿勢で療養しています。よければ行ってあげてください。その方がライスも元気が出ると思います。ファンからの言葉なら尚更です。」
「……はい、そうします。今の時間に行ったら迷惑になりますかね?」
八幡「よかったら一緒に行きます?」
ーーーライスの個室ーーー
八幡「ライス〜。」
ライス「ふぇ?お兄様、どうしたの?」
八幡「いやちょっと忘れ物をして。」
ライス「え?でも部屋には何も……」
八幡「いやな、ライスに応援するのを……どうぞ。」
「………こんばんは、ライスさん。」
ライス「お、お兄様……その人は?」
八幡「この人はお前のファンだ。フランスに行った時に会ったんだが、この病院に前から来てたみたいだが此処には来られなかったみたいでな。」
「初めまして、レースをずっと見てました。生で観に行ったり、テレビで見たりしている内にライスさんのファンになっていました。」
ライス「そんなんだ………」
「だから、宝塚記念はとてもショックに思いました………でも、さっきトレーナーさんからライスさんの事を聞けて良かったです。ライスさんが懸命に頑張ってると聞けましたので。ライスさん、復帰に向けて頑張ってください!」
ライス「………ありがとう、とっても嬉しい。初めてファンの人から応援を貰っちゃった。」
「え……初めて?」
ライス「うん。病室に来たのは……お兄様とチームメンバー、友達、病院の先生と看護師だけだったから。ファンの人からは初めて。お手紙はいっぱい貰ったけど、言葉は初めてだったから。」
「そうだったんですか………」
ライス「わざわざ来てくれてありがとう、とっても元気が出たよ。嬉しいです。」
「……もし迷惑じゃなければ、また来てもいいですか?今度はお見舞い品も用意してきます。あっ、僕の友人もよかったら連れて来たいのですが。」
ライス「もちろん!ライスも他のファンの人と会えたら嬉しいから。」
「では次は友人も連れて来ますので!」
八幡「良かったな、ライス。」
ライス「うん!」
これは嬉しい誤算だな。ライスにとっても士気の上がる出来事だ。偶々だがファンに会えて良かった。
ファンからの初めてのお言葉!