八幡side
八幡「こうしてお前と隣で歩けるなんてな………感慨深い気持ちだ。」
ライス「うん、お兄様と一緒に歩くなんて1年ぶり。院内だけだけどお散歩が出来るのはとっても嬉しい♪」
八幡「それは俺も同じ気持ちだ。それと、脚に少しでも違和感が生まれたらすぐに言えよ?」
ライス「うん、ありがとう。でも大丈夫だよ、病室の中でも歩いてるから少し歩く程度なら大丈夫だよ。この前まで車椅子だったのに、何だかあっという間に感じちゃうなぁ。」
俺もライスの車椅子を押して散歩した時もあったが、最後に押したのは合宿に行く前の6月だ。それから3ヶ月経った今は隣で歩いてるんだから、分からないもんだよなぁ……まぁでも最初の頃は外出すら出来なかったから、凱旋門賞の外出がいかに異例だったかが分かる。あの頃はまだ脚をピクリとも動かせなかったからなぁ………
ライス「あっ、そうだお兄様。昨日カーネギーさん達とテレビ電話してたんだ。それでね、凱旋門賞出るのかなって思って聞いてみたんだけど、クローネさんとクラウさんは『去年はライスの為に出走したから今年は出るつもりは無い。』って。」
八幡「インタビューでも話してたからな。それに3人の今年のレースを見たが凄ぇよな、カーネギーはサンクルー大賞を勝ってキングジョージでは2着、次のフォワ賞も楽しみだ。勝てば凱旋門賞の優先出走権が取れる。」
ライス「じゃあ連覇を目指すのかな?」
八幡「中距離ではかなり強いからな、そのつもりじゃないか?クローネはドバイのゴールドカップから始まって、サガロS、グッドウッドCを3連勝。次はロワイヤリュー賞に行くみたいだぞ。クラウロードも同じ長距離で活躍してる。サウジのレッドシーターフハンデを勝った後、世界最長距離レースのゴールドCを勝ってロンズデールCも優勝。クローネがグッドウッドCを勝たなかったらステイヤーズミリオン達成だったのにな。」
ライス「2人共言い合いしてたけど、来年は絶対に達成するってクラウさん意気込んでた。」
3人は今や国はおろか欧州を代表するウマ娘となっていた。去年凱旋門賞であれだけのレースをしたのだから当然と言えば当然だが、今年に入ってからも目覚ましい活躍をしている。
ライス「あっ、そういえば会長さん次のセントライト記念に出るんだよね?」
八幡「ルドルフに聞いたのか?」
ライス「うん、この前来てくれたんだ。会長さん早くレースに出たいって言ってたよ?」
八幡「堪え性無いのかアイツは……いや、なんだかんだダービーから4ヶ月だからそう思うのも無理ないか。けど早くレースしたいってライスの前で言う事じゃないだろうに………」
ライス「えへへ、でもその後すぐに謝ってくれたよ。ライスの方がそう思ってる筈なのに口が滑ったって。全然気にしなくていいのに。」
八幡「お前はレースから離れて1年以上経つんだ、気にしない方が難しい。それにルドルフもあの性格だから、謝罪も口にしないと気が済まないんだろう。」
ライス「会長さん、そういう人だもんね。」
それから程なくして俺とライスは病室へと戻った。今ではリハビリとトレーニングを一緒に行い、段々と以前のような生活に戻りつつある。
ライス「早くライスもレースに出たいし、学園にも通いたいなぁ〜……」
八幡「いつになるかは分からないが、もう少し脚の筋力が戻ってからだな。」
ーーー数十分後ーーー
病院を後にした俺は、帰路に着いている。学園に戻ってもいいのだがやる事は特に無いから少しのんびりする時間も欲しい。何せこれから秋が始まるから休めるのは今の内だ、休める時に休めておかないとな。
オグリ「むっ、トレーナーか。奇遇だな。」
八幡「オグリ……1人か?」
オグリ「いや、タマ達と来ていたんだが逸れてしまってな………探しているんだが、見つからないんだ。」
八幡「お前なぁ……出店の焼きそばとたこ焼き食いながらそんな事言われても説得力無いぞ?」
オグリ「不安になるとお腹が減るんだ………」
いや、まぁそれは少し分かるけどよ……今は食い気よりも友達探しが優先じゃね?
八幡「はぁ………心当たりは無いのか?」
オグリ「あるにはあるんだが、行こうとしても辿り着けないんだ。」
八幡「そうだ、コイツ方向音痴だった……」
オグリ「それに食べ物の良い匂いがして、ついそっちに行ってしまうんだ……」
八幡「食い物に気取られんなっ!!お前の頭の中は友達<食い物なのか!?ちょっとは探せっ!!」
オグリ「す、済まない………」
八幡「んで、タマと他に誰が一緒なんだ?」
オグリ「タマとクリークとイナリだ。」
八幡「ふむ……なら多分、あそこかもしれないな。行くぞオグリ、後絶対着いて来いよ。」
オグリ「ん、分かった。」
………ホントに分かってんのか?
ーーー商店街ーーー
八幡「……あっ、居た。」
オグリ「っ!!本当に見つかった……」
クリーク「あっ、オグリちゃん!!タマちゃん、イナリちゃん、オグリちゃんが居ましたよ〜!」
タマ「何やてっ!?ってホンマや!!オグリィ、お前ホンマに何処に行っとったんや!?」
オグリ「す、済まない皆。良い匂いに釣られてしまって、気が付いたら1人だったんだ………」
タマ「犬かいなっ!!何やねんその理由………なんや気ぃ抜けたわ、トレーナーもおおきにな。」
イナリ「オグリらしい理由じゃねぇかい!まぁ何はともあれ見つかったんだから一件落着だって事よ!」
クリーク「でも見つかって良かったです。トレーナーさんもオグリちゃんがお世話になりました。」
八幡「じゃあ、もう大丈夫だな。オグリ、もう逸れんなよ?今日は俺が偶々通りかかっただけなんだからな。ママから離れんなよ。」
オグリ「?母親は故郷に居るぞ?」
八幡「天然にボケは通じねぇか……クリーク、オグリを頼むぞ。」
クリーク「はぁ〜い♪」
同じ散歩でも後半は迷子の親探し。