八幡side
授業の終了を知らせるチャイムが鳴り、放課後となった。16時からいよいよ模擬レースが始まる。俺にとっては1番重要なレースになる。ウマ娘達の走り方やフォーム、脚の使い方をしっかりと観察しておきたいし、めぼしいウマ娘も決めておきたいしな。だが、当日になるまで誰がどのように走るのを知らせないとは、中々に手の込んだ事をする。
葵「比企谷君、時間になりましたね。私達も準備を始めませんか?」
八幡「そうだな。ストップウォッチに出バ表とペン。後は………このくらいか。」
葵「あれ、出バ表ってありましたっけ?」
八幡「いや、これはさっきPCで作った。作ったって言っても、名前欄と記入スペースをエクセルで作っただけの簡単なヤツだけどな。それに走るとしてもあのコースだと最大で10人くらいだろうから、10枠作ってそこに名前を記入するようにしていこうと思ってる。後は走りを見て良いと思った奴だけのタイムを測るって感じだな。」
葵「比企谷君は1着のウマ娘を選ばないんですか?」
八幡「1着だけを選んでも意味なんてない。中には『こんなレースで1着を獲っても意味なんて無い。』なんて思って手を抜くウマ娘だっているかもしれないしな。確かにウマ娘の世界は勝負の世界だが、それは本当のレースでしか意味を成さない。幾らこの学園で良い走りが出来たとしても、本場で出来なきゃ意味が無いしな。模擬レースには出ても、実力を出さないウマ娘もいるかもしれないしな。」
葵「………比企谷君からは学ばされてばかりですね。」
八幡「そうか?ただの自論を述べてるだけだぞ?」
葵「それでも学ばされます。」
八幡「……そうか。」
葵「あっ、比企谷君!その紙、私にもくれませんか?」
八幡「裏表10枚だから上手く使えよ?こんがらがっても知らないぞ?」
葵「分かってますよ!こう見えても私、トレーナーなんですから!」
そんなやり取りがあって、俺は桐生院と共にトレセン学園のコースへと向かった。
ーーーコースーーー
葵「既にいっぱいのトレーナーが居ますね……」
八幡「だな。まぁでも、中堅やベテランのトレーナーは大体決まってると思うぞ。走る奴が出て来たら目の色が変わるだろうしな。」
???「来てくれたようだね、比企谷トレーナー。」
八幡「?おぉ、シンボリルドルフか………その格好、お前も走るのか?」
背後から俺の苗字を呼んだのはシンボリルドルフだった。だが昨日見た制服姿ではなく、ジャージを着ている。
ルドルフ「あぁ、私もトレーナーが決まっていなくてね。この場を借りて専属のトレーナーを得ようと思っているんだ。君にもチャンスはあるかもしれないぞ?」
八幡「まぁ、それはお前の走りを見てからだな。それよりも出バ表とか無いのか?あれば助かるんだが。」
ルドルフ「それなら私が持っているのを貸そう。長く使う予定かな?」
八幡「いや、枠と名前が分かればそれでいい。顔とかは見て覚える。少し借りるぞ、シンボリルドルフ。」
ルドルフ「構わない。それから私の事はルドルフと呼んでくれ。フルネームでは呼び辛いだろう。」
八幡「別に呼び辛くはないが、お前がそういうならそうする。覚えてたらな。」カキカキ
エアグルーヴ「会長、此方に居ましたか。むっ………何だ、やはり貴様も来ていたのか。」
八幡「俺みたいな新人、こうして観にでも来ないとウマ娘なんて来てくれないだろ………ん?お前も模擬レースに出るんだな。」カキカキ
エアグルーヴ「何だ、意外か?」
八幡「いいや別に。」カキカキ
ルドルフ「ところで比企谷トレーナー、こんな噂を耳にしたんだ。新人のトレーナーの組んだメニューをビワハヤヒデが丸写ししていたと。」
八幡「あぁ〜食堂の時な、それ俺だわ。ていうか噂になる程の事なのか?それに思った事だが、それはそんなに凄い事なのか?」カキカキ
ルドルフ「彼女はレースだけでなく食事やトレーニングでも理論を武器にするウマ娘でね、恐らくその頭の良さはこのトレセン学園内随一だろう。そんな彼女が誰かのメニューを自身の持つ手帳に丸写しする事なんて今までに無かった事だ。その意味が分かるかな?」
八幡「さぁ、何でだ?」カキカキ
エアグルーヴ「少し考えれば分かる事だ。つまり中堅やベテランのトレーナーの組んだメニューよりも、貴様の組んだメニューの方が優れているという事だ。」
八幡「そんなの分かんないだろ。俺の書いていたメニューを見て面白いと思っただけかもしれないしな。よし、終わった。助かった。」
ルドルフ「このくらいの事何でもないさ。だが比企谷トレーナー、覚えておくといい。私は君の性格を好ましく思っている。だが時として、君の口から出る謙遜は相手によっては嫌味に聞こえてくる場合もある。用心しておいた方がいい。」
八幡「忠告として受け取っておく。」
ルドルフ「では、我々もアップを始めるので失礼する。」
エアグルーヴ「………ではな。」
謙遜は嫌味、か………少し気をつけるか。ていうか………
八幡「桐生院、お前いつまで固まってるんだよ。起動しろ。」
葵「っ!?わ、私は一体………」
八幡「ほれ、出バ表書いといてやったから今の内に書いとけ。レースになったら間に合わんぞ。」
葵「あ、ありがとうございます!凄く助かります!」
しっかし、あちらこちらから視線を感じるな。大体がウマ娘だが、トレーナーが居る方からも視線を感じる。俺じゃなくてウマ娘を見ろよ。今日1番大事なのはアイツ等だろうに。俺に注目しても仕方ないでしょうが………
次から漸く色々なウマ娘達を出せますよ〜。