ライスside
八幡「よし、じゃあ今日のトレーニングはこれで終了だ。アルダンとシービーはあんまり根を詰め過ぎないようにな。シービーは問題ないと思うが、アルダンはデビュー戦だから過度なトレーニングはしないようにな。」
シービー「分かってるよ〜。」
アルダン「かしこまりました。」
八幡「ん、じゃあ解散。」
ライスもトレーニングに参加するようになって2週間。お兄様が退院した事を皆に言ったら驚かれて、会長さんから退院祝いのお花を貰っちゃった。他にも寮の皆から退院おめでとうって言ってもらえたし、ロブロイさんからは抱き着かれた上に感激で泣いちゃったくらいなんだ……ライスがお部屋で待ってたのもあるんだけど、お帰りなさいって言われたの、嬉しかったなぁ。
ライス「ねぇお兄様、ちょっといいかな?」
八幡「ん?どうした?」
ライス「えっと、ライスの次走の事なんだけど……」
八幡「……俺の部屋に行こうか。」
ーーートレーナー室ーーー
八幡「ほい、ココア。」
ライス「わぁ、ありがとう!」
八幡「……それで?次走の話だったな?」
ライス「う、うん!お兄様はライスの次に走るレースって決めてるのかなぁって……」
八幡「ふむ……一応決めてはいるが、相談はしようと思っていた。レースは目黒記念か鳴尾記念にしようと考えてる。」
ライス「あ、あのね。ライス出たいレースがあるんだけど、言ってもいいかな?」
八幡「それは構わないが、流石に天皇賞なんて言わないよな?流石に期間が短いから仕上がりきれないからな?1番早くても5月の後半だからな。」
ライス「うん、それは大丈夫だよ。ライスが走りたいレースは6月のレースだから。」
八幡「そうだったか……そんで、ライスの走りたいレースってのは?」
ライス「うん、じゃあ言うねお兄様。ライスね……宝塚記念に走りたいんだ。」
ライスの希望を言った途端、お兄様の表情から優しさが消えた……理解出来ない、信じられない、そんな顔をしながらライスを見ていた。
八幡「………ライス、お前何バカな事を言ってるんだ。正気なのか、お前が……あんな目に遭ったレースに出たいって言うのか!?しかも今年から阪神は改修工事が始まる、宝塚記念は京都で開催されるんだぞ!?お前はそのレース場、そのレースに本気で出たいって言うのかっ!?」
ライス「………」
お兄様に反対されるのは分かってた……会長さんから聞いたんだけど、お兄様はライスが怪我をしてから1度も宝塚記念と京都レース場の話をしなかったんだって。だからライスも会長さんと話した時にも思ったんだけど、お兄様はきっと怖いんだと思う。でも………
ライス「……本気だよ、ライスは出たい!」
八幡「……他のレースじゃダメなのか?6月以降でも夏レースが始まるし、2,000mがメインになるがお前なら充分だと思う。宝塚記念じゃなくても良いだろ?」
ライス「ううん、ライスは宝塚記念に出たい!」
八幡「………」
お兄様は息を吐くと俯いちゃった……凄く悩んでるように見える。お兄様を悩ませちゃってるのは分かってる、ちょっと心苦しい………
八幡「………なぁ、どうしてもそのレースがいいのか?それ以外考えられないのか?」
ライス「っ!うん。」
八幡「そうか………少し、考えさせてくれ。急には決められない………」
ライス「……うん、分かった。ごめんねお兄様。」
ーーー校門ーーー
ライス「……お兄様、大丈夫かなぁ。」
きっと何日も悩むと思う……ライスがお兄様の立場でも同じ事を考えると思う。2度と出たくないって思うのも無理も無いと思うし。
タリアト「浮かない顔をしているな、ライス。」
ライス「あっ、先生さん!」
タリアト「せっかくトレーニングを始められたというのに何故そんな顔をしている?嫌な事でもあったのか?」
ライス「えっと…そうじゃないんですけど、お兄様にすっごく悩ませるような事をしてしまって……」
タリアト「……聞かせてくれるか?」
ライスは先生さんにもお兄様にお話した事を話した。先生さんは理解したような、納得したような顔をしていた。それでいて少しだけ辛そうな顔も。
タリアト「成る程な、そういう事か……道理で八幡が悩むわけだ。」
ライス「あの……先生さんはどう思いますか?ライスのした事って………」
タリアト「そうだな……お前の決断も重いものだと思う。自身の怪我をした場所でもう1度走るのは並の覚悟で出来る事ではない。それ以上に八幡は色々考え込んでしまうだろう。」
ライス「え、どういう事ですか?」
タリアト「……君も知っていると思うが、八幡はウマ娘の希望を優先させる方針でレースを決めている。だが今回お前は怪我をしたレースに出ると聞いた八幡の心中はきっと穏やかなものではなかっただろう。きっと八幡は宝塚記念というレース名自体もトラウマになっている。八幡は間違い無く葛藤するだろうな………」
ライス「………」
タリアト「それにアイツは優しいからな、その優しさのせいで決断が鈍っているのだろう。」
ライス「……じゃあ、ライスは「いや、それは違う。お前は希望を言っただけだ。最終的に決めるのはトレーナーだからお前が責任を感じる必要は無い。」そ、そうですか?」
タリアト「まぁ、全く感じるなと言えば嘘になるがな。私も出来ればお前に宝塚記念は出てほしくはない、思い出したくも無い事をフラッシュバックしてしまうからな。」
先生さんもやっぱり反対みたい………やっぱりやめた方がいいのかな?でもライスが宝塚記念に出たいのは本当だし、けどお兄様の辛い顔は見たくない。うぅ、どうしたら良いんだろう………
確かにこんな事を言われたら悩んじゃいますよね。