八幡side
ルドルフ「………」
八幡「あの〜……ルドルフ、まだ続くのか?」
ルドルフ「あぁ、頼むよ。」
八幡「いやけどよ、もうすぐ入場だぞ?それなのにこんなので良いのか?」
ルドルフ「あぁ、構わない。寧ろ日常的にしてほしいくらいだ。」
八幡「いやそれは難しいな……」
天皇賞・春……この日本で1番長い距離を誇るGⅠレースがいよいよ始まる。ウチからはルドルフが出走するのだが、今のルドルフはその出走する1人としては相応しくない状態だ。
俺達は椅子に座っているのだが、ルドルフは俺のすぐ隣にまで椅子を近付けて両腕を俺の左腕に絡ませ、頭を左肩に乗せている。ついでと言わんばかりに『頭を撫でてほしい。』という要求までしてきている始末だ……これが世間では【皇帝】と呼ばれているシンボリルドルフの姿だ。これをファンの皆が見たらどう思うだろうか?
八幡「………」
ルドルフ「……兄さんの撫で方は気持ちが良いな、緊張が解れていくよ。」
八幡「気も抜けてんだろ。」
ルドルフ「そんな事は無いさ。現に私は走り出したいという衝動を抑えているのだから。私はこれから2冠目の春の盾を獲りに行く、シービーが獲った大阪杯に続いてね。そして先頭で駆け抜け、次のバトンへと繋げる。」
八幡「ライスの宝塚記念か?」
ルドルフ「勝てばチームとして春のシニア3冠を達成する事になる。1人で獲るよりもチームで獲ったという快挙を達成出来る。評価はされないだろうが、私はそっちの方が嬉しいよ。」
八幡「じゃあ今日は負けられないレースになるな。頑張れよルドルフ、春の3冠はお前にかかってるぞ。」
ルドルフ「せっかく解れたプレッシャーを元に戻さないでほしかったんだが……まぁいい。じゃあ兄さん、行ってくるよ。」
八幡「おう。」
ーーー観客席ーーー
シービー「随分時間かかったね……作戦会議?」
八幡「そんなところだ。ライスに言われたところはトレーニングでも出来ていたから、後はレースで出来ていれば問題は無い。」
ラモーヌ「兄様、ルドルフはこのレース勝てると思うかしら?」
八幡「対抗が同期のゴールドウェイと1つ上のスズカコバンくらいだ。けど正直、ルドルフの相手にはならないと思う。」
♪〜♪〜♪〜
八幡「ファンファーレ……もうそんな時間か。」
シービー「八幡がルドルフと長い時間会議してたからでしょ?それとも他に何かしてたの?」
八幡「してないが?」
危ない、消臭剤かけてきて良かった………
八幡「………」
しかし、この場所には何度も来てるのに悪寒が背筋を走るのはライスの宝塚記念から続いている。京都レース場に来たら毎度こうなってしまう……
アルダン「大丈夫です、兄様。」ギュッ!
八幡「っ!」
アルダン「会長さんならきっと大丈夫です。兄様が不安そうな顔をしていたら、会長さんにも影響してしまいますよ?兄様は堂々と、見守っているべきです。」
八幡「………あぁ、そうだな。」
八幡sideout
ルドルフside
ガッコン!!
よし、良いスタートを切れた。天皇賞・春……というよりも京都レース場の外回りで気を付けるのは登り坂と下り坂だ。大きくスタミナを削られる上に2周目以降も同じ坂を走る事になる。故に道中のペース配分と如何にしてスタミナを温存出来るかが勝利の分かれ目だ。今はスタートしたばかりだがすぐに登り坂だ、早めに好位置につかなければバテてしまう。しかし、流石にマークが厳しいな……
実況『1週目の登り坂に向かって各ウマ娘が向かって行きます!14人が位置取り争いをしながら京都レース名物の坂に向かって行きます!』
「縦長のおかげでシンボリルドルフも中に入る事が出来たな。」
「あぁ。マークが厳しいと思ってたが、前のウマ娘達が位置取り争いをしてるのもあって、ちょうど中団が開いちまったな。これはやっちまったかもな。」
「けどまだチャンスはあるよな?」
「まぁまだチャンスはあると思うけど、勝つにはこっから先自分の作戦を全部パーフェクトにして、ルドルフの作戦を全部邪魔させるしか無いけどな。」
「……それって無理じゃね?」
「あぁ、ハッキリ言って無理。っと、そう言ってる内にもう2コーナー回ってくな。シンボリルドルフは変わらず良い位置に居るな……」
実況『さぁこれから第2コーナーを曲がって向正面に向かっていきます!先頭はナンシンエクセラーが進みます!1番人気シンボリルドルフは中団で好位置をキープ!』
2周目、正念場だな。まだ3コーナーの坂ではないが、何処からスパートをかけるか……脚は充分に残っている。
よし、行くかっ!!
実況『さぁこれから3コーナー、坂の登りへと向かって行きますが、後ろからシンボリルドルフが上がって来ました!!速い、これはロングスパートだっ!シンボリルドルフは最後まで持つのかどうか!?』
「おいおい大丈夫かよ、あんな所から!」
「3200mだぞ、菊花賞とは違うのにっ!」
「いくら【皇帝】でもこれは………」
ルドルフ「これならば、最後まで!」
実況『最終コーナーを抜けて直前コースに向いたシンボリルドルフ!独走している!他のウマ娘も既に追い出しているが、果たして届くのかどうか!?』
後ろとの差は充分にある!脚もまだ残ってる、これなら行けるっ!
シービー「すっごい!ロングスパートじゃん!あたしの菊花賞と同じだね!」
ラモーヌ「誰も寄せ付けていない走り……レースに絶対はないけれど、ルドルフの走りには絶対があると思わざるを得ないわね。」
実況『シンボリルドルフ、後ろとのリードが縮まらないままゴールイン!!何という走りだっ!3コーナーからのロングスパートで一気に押し切りましたっ!!』
八幡「………ふぅ。」
アルダン「良かったですね、兄様。」
八幡「あぁ、そうだな。」
兄さん、ホッとしたような顔をしているな……きっと心配してくれていたのだろう。これでシービーの大阪杯と私の天皇賞、残すはライスの宝塚記念だ。
ルドルフ「期待しているよ、ライス。」
シービーの大阪杯で1冠、ルドルフの天皇賞で2冠達成!
残すはライスの宝塚記念!頑張ろうライス!!