アルダンside
アルダン「………」
天皇賞からちょうど1週間が経ち、今日は私が走る番となりました。クラシッククラスで春のマイル王を決めるNHKマイルCというレースです。私は既に勝負服に着替えて控え室で時間が来るのを待っています。
アルダン「………」
ラモーヌ『アルダン、私よ。入ってもいいかしら?』
アルダン「っ!姉様!?どうぞ。」
ガチャッ
ラモーヌ「……準備は整っているようね。」
アルダン「はい、万全です。」
ラモーヌ「万全……それにしては、貴女の表情からは焦燥が見て取れるのだけど?今の貴女は本当に万全なのかしらね?」
アルダン「っ!」
ラモーヌ「何に悩んでいるのかは興味は無いけれど、今解決しない事を悩むのはやめなさい。走りにも影が生まれるわよ。」
アルダン「……はい、申しわけございません。」
……やはり流石姉様、一瞬で見抜かれてしまいました。兄様から進言された日本ダービー、私自身まだ答えを出せていません。せっかくの大舞台、出来るなら出たい……ですが、もし無様な走りをしてし待ったらと思うと、踏ん切りがつかないのです。
ラモーヌ「1つ、貴女に言っておくわ。」
アルダン「はい。」
ラモーヌ「正直、貴女はマイルでは輝けない……そうね、2,000m以上の距離が貴女の脚には合っていると思うわ。」
アルダン「っ!ね、姉様、それはっ!」
ラモーヌ「どう捉えるかは貴女の自由よ。ただ、私は言っておきたかっただけ。」
それだけ言うと、姉様は行ってしまいました。まさか兄様に言われて?いいえ、兄様が姉様に入知恵したとしても姉様がわざわざ私にそれを言うとはあまり考えられません。
アルダン「……そろそろ、時間ですね。」
ーーー地下バ道ーーー
アルダン「………っ!」
八幡「………」
アルダン「兄様……」
八幡「その様子だと、ラモーヌから何か言われたみたいだな。」
アルダン「……答えは当たらずも遠からず、といった感じです。」
八幡「そうか……まぁ無理には聞かない。初めての大舞台、俺はもう何も出来ないが、良い走りを出来るようにな。」
アルダン「はい……あの、兄様?」
八幡「?どうした?」
アルダン「姉様のドバイ遠征の時、出走前に何かした覚えはありますか?」
八幡「出走前か……特に何もしてないな。けど、それがどうかしたのか?」
アルダン「いえ、何でもありません。」
八幡「………今はダービーの事を考えるな。」ナデナデ
アルダン「っ!」
八幡「今は目の前のレースに集中しろ、お前がこれから出るレースはGⅠだ。油断や気の緩みが命取りになる。思慮深いところがお前の長所でもあるが、考え込み過ぎるのは感心しないぞ?」ナデナデ
アルダン「……分かりました。」
八幡「それに前にも言ったろ?今すぐ決める事じゃないって。そんなに思い詰めるくらい悩むのなら俺に相談するくらいしてもいいんだからな?」
アルダン「………っ!」ダキッ!!
八幡「うおっ!?お、おいアルダン?」
アルダン「………」ギュ∼!!
八幡「………」
アルダン「………もう大丈夫です。では兄様、行って参ります。」
八幡「……おう。(ヤバい、どうしよう………今日は消臭剤持って来てない。コレ絶対バレる。)」
アルダン「わ、私ったらなんてはしたない事を……ですがおかげで色々と吹っ切れました。」
ーーーゲート前ーーー
実況『クラシッククラスのスピード自慢がこの東京レース場に集まりました!このレースを制して秋へステップを刻むのは果たして誰なのかっ!?』
このレースでの私の人気は4番人気。重賞を勝利しているから評価された、という事でしょう。その評価、覆してみせます!
実況『大外16番のメジロアルダンが収まりました!さぁ参りましょう、春のクラシックスピード王を決める一戦、NHKマイルC……』
ガッコン!!
実況『スタート!!一斉のスタート、先頭争い誰が前を取るか?チョウカイパールとギャラントリーダーの2人が前を走っているぞ!後ろにはメジロアルダンが3番手を追走!』
1,600mのこのレース、やはりペースはそれなりに早い。けれど、連日姉様との併走で鍛えられました。ハイペースからスローペースまで色々と……それに何度も姉様には追い抜かれました。このレース、勝って見せます!
実況『4コーナーカーブして直線コースに向きました!外からマイネルグラウベンも上がって来ている!先頭はチョウカイパールだが真ん中からメジロアルダンが良い脚で先頭になった!メジロアルダン先頭!外からはマイネルグラウベンと大外コクサイトリプル!しかし抜けたメジロアルダン強い強い!サッカーボーイは伸びが無い!!メジロアルダン1人抜け出してゴールイン!!メジロアルダンやりました!3連勝でクラシッククラスのマイル王に輝きました!』
アルダン「はぁ……はぁ……や、やりました!」
兄様、私の輝き……見ていただけたでしょうか?
アルダンsideout
八幡side
八幡「……よし、勝ったな。」
ラモーヌ「えぇ、そうね。」
八幡「最後までしっかり伸びてたし、お前とのペース走が功を喫したな。さて、俺も迎え「待ちなさい。」に……何だ?俺はアルダンを迎えに行かなくちゃいけないんだが?」
ラモーヌ「兄様、私達が見逃すとでも?貴方の身体から妹の匂いがしっかりとついているのよ。地下バ道で一体、何をしていたのかしらね?」
シービー「これは少しお話が必要だよね〜。そう思わない八幡?」
ライス「ダ、ダメですよ2人共!お兄様をイジめちゃダメですよ!」
ルドルフ「ライスの言う通りだよ。きっとアルダンを鼓舞していたのだろう、兄さんが不埒な事をするわけが無いだろう。そうだろう兄さん?」
確かにしてはいない。けど何でだろうなルドルフ、お前の顔は穏やかなんだが目が据わってるんだが?ホント、俺の味方ってライスとアルダンだけなんだな。
アルダン、3連勝でクラシッククラスのマイル王にっ!
そして八幡、今日に限って必須アイテムを忘れる……