八幡side
シービーとのんびり過ごしてから更に1週間。シービーは今日香港に旅立つ予定で、もう準備は出来ているから出発のみとなっている。そして今はというと、平和に感じたあの時の和やかさとは真逆で針の筵状態………何でかはもう分かってくれてると思うが、敢えて説明するなら簡潔に答えよう。俺の隣にラモーヌが居るからだ。コイツはどうしてこうも人の注目を集めるのだろうか?所作もあるのだろうが、学生らしからぬ風貌もその理由に含まれてるんだろうな。
八幡「……あのさ、学園から出発してからずっとこの状態だが、目的地は無いのか?」
ラモーヌ「風の吹く方向へ気のままに、といったところかしら。」
八幡「要は無いって事か。無いのなら俺も帰らせて「ダメよ。」もら……ですよね。」
ラモーヌ「それにこういうのだって良いと思うのだけれど?目的の無い散歩だと思えば、気も休まると思うわ。」
八幡「そういうもんか?」
ラモーヌ「さぁ?けれど、兄様には休息が必要よ。誤魔化しているつもりでしょうけれど、顔に張りが無いし、少し隈もあるもの。」
八幡「気付かれてたのか……」
ラモーヌ「貴方の顔を毎日見ているのだから、少しの変化くらい気付くわ。」
担当ウマ娘に心配されてちゃ世話ないな………
八幡「なら、少し休む時間を増やすとするか。ご指摘として受け取っておく。」
ラモーヌ「何を言っているのかしら、今日がその日よ。」
八幡「………は?」
え……どういう事?今日が休む日って事?
ラモーヌ「アルダンとシービーから色々と聞いたわ。休日にどう過ごしたのかをね。あの子達は希望の通りに過ごせたでしょうけど、兄様はどうかしらね?」
八幡「……まぁ、そうだと言えば嘘になるな。」
ラモーヌ「だから今日は貴方の休日よ。5月に入ってからずっと予定が埋まっている状態で休めていないのは分かっているわ。」
八幡「それでどうしてお前がついてくるって事になるんだ?」
ラモーヌ「……ダメかしら?」
八幡「ダメとは言わんが……付き合わせていいのか?」
ラモーヌ「えぇ。それにメジロ家のウマ娘を1日自由に出来るなんて、滅多に無い事よ。」
八幡「一気に付き合わせたいって気持ちが無くなったんだが……」
大丈夫?後でレンタル料とか請求しないよな?もし発生するんだったら速攻でキャンセルしたいんだが?
ーーー公園ーーー
ラモーヌ「へぇ……こんな所に連れて来て何をするのかしら?」
八幡「別に目的なんてねぇよ。ただ、ゆっくりするなら此処かなって。今日は5月にしては気温は落ち着いてるだろ?だから芝生に手をつきながら風景を眺めるのも良いかもって思っただけだ。」
ラモーヌ「そう……」
此処の丘なんて良さそうだな……おぉ~なんか久々に芝生の上に寝転んだな、気持ち良い………
ラモーヌ「担当ウマ娘を放置して余韻に浸るなんて、やっぱり兄様は罪な人ね。」
八幡「しょうがないだろ気持ち良いんだから。それに俺はお前でどうこうするつもりはこれっぱっちもねぇぞ。」
ラモーヌ「………変な人。」
八幡「どうとでも言え、街ん中で噂されるよりかはよっぽどマシだ。」
にしても本当に気持ち良いな……眼を閉じたらすぐに夢の世界に旅立っちまいそうだ。
八幡sideout
ラモーヌside
ーーー数分後ーーー
八幡「すぅ……すぅ……」
ラモーヌ「呆れた、本当に寝るなんて。これじゃあ取り残された私はどうしたらいいのかしら?」
兄様は気持ち良さそうにしていたけれど、私はメジロのウマ娘。人前でそんな事は出来ないわ。けれどこのまま兄様が起きるのを待っているというのも退屈ね……かといって今日は婆やも居ないから絵を描く事も出来ないわ。
ラモーヌ「……そうね、この前は買い物で夫婦扱いされたのだから、やっても不自然ではないわよね。」
私は兄様を起こさないように頭を持ち上げて自身の膝に置いた。シービーがやっていた膝枕という行為ね。
八幡「すぅ……すぅ……」
ラモーヌ「よく眠っているわね。いつもはその眼で私達を見ているのに、閉じたらこんな表情なのね……」
ラモーヌ「………」ジィ-
ラモーヌ「貴方が頑張っているというのは、私達がよく分かっているわ。けれどその頑張りが無茶に繋がるのは望む事ではないわ。貴方は貴方のぺースで走りなさい、私達もそれに続いて貴方について行くわ。私がレース以外で愛を求めた初めての人……今はその熱を来たる時まで逃がしなさい。」ナデナデ
八幡「ん、んん……ん?何だ?」
ラモーヌ「あら、漸くお目覚め?」
八幡「………最高の枕をありがとう、とでも言えばいいのかこの場合は?」
ラモーヌ「ふふっ、他の人から言われたらどうとも思わない言葉でも、貴方から贈られたら嬉しいわね。」
八幡「じゃあそういう事……っていうか人の数凄くね?」
ラモーヌ「いつの間にか居たのよ。私は気にならないし、何もしてこないから放っておいたわ。」
八幡「そうかよ。まっ、俺は気にするからそろそろ行くか。腹減ってないか?」
ラモーヌ「あら、もしかして作ってくれるのかしら?」
八幡「枕の礼だ、好きなもん作ってやるよ。可能な範囲でな。」
ラモーヌ「じゃあ、お言葉に甘えるわね。」
ーーーおまけ・人が集まった原因ーーー
「ねぇねぇあの2人、夫婦かなぁ?」
「かなぁ〜?でもさ、2人共結構レベル高くない?」
「分かる〜あのウマ娘なんて超美人じゃん!私の女として自信無くなるくらい……」
「寝てる男の人も割と可愛い顔してるよね〜。起きたらどんな表情なのやら……」
「なぁ、アレってメジロラモーヌじゃね?」
「あっ、ホントだ!じゃあ寝てる奴って誰?」
「お前分かんねぇのか?トレーナーだって。ルドルフとシービーを3冠獲らせた比企谷トレーナーだって。」
「あぁ〜あの人がっ!でもこんな所で何してんだ?」
「さぁ?でも羨ま死ねって思わん?メジロラモーヌに膝枕だぞ?」
「それは同意。」
ラモーヌ「……私がレース以外で愛を求めた人、ならこのくらいは許されるわよね。」
チュッ……
「「「「「「「「「「っ!!?!!?!!?」」」」」」」」」」
ラモーヌ「……ふふふっ、意外と良いものね。」クスリッ
そして八幡が起きたのは30分後の事である。