八幡side
ライスが落ち着くまで俺は控え室にライスと2人で過ごしていた。勿論この後はインタビューやら表彰式やらでバタバタすると思う。だが今は少しくらいゆっくりしてても良いだろう、あんま時間は無いけど。けどまぁ、俺がライスを泣かせちまったようなもんだし、誰かからのお叱りは甘んじて受けようと思う。
ライス「……お兄様、もう大丈夫。」
八幡「大丈夫か?」
ライス「うん!じゃあ行こっ♪」
八幡「あぁ。」
そして俺達は取材陣達が待ってる部屋へと向かい、インタビューを受けた。やはり聞かれたのは『2年ぶりのレース』の事や『今回の勝利』『伝えたい事』と格式ばったものが多かったが、気の利いた質問をしてくれたりもしてくれた。例えば『今日はとてもおめでたい日になりましたね、今後にご馳走の予定もあったりするのではありませんか?』という質問とかな。
まぁそんな感じでインタビューも終わって、表彰式の時間になって再びターフに戻ると、観客からは待ってましたと言わんばかりの大歓声が沸き上がった。
「ライスおめでとう〜!!」
「お帰りライス〜!!」
「待ってたよライスシャワー!!」
「ありがとう〜おめでとう〜!!」
八幡「……数年前とは大違いだな、今ではお前の事を祝福する声に変わっている。もう誰もお前の事を【ヒール】だなんて呼ぶ奴は居ないだろうな。」
俺は記念撮影を行っているライスを見ながらそう思った。誰も祝わない勝利を知っているからこそ、これが嬉しいってのが本当に伝わって来る。
ライス「……っ!」
八幡「?」
ライス「あ、あの……お兄様も一緒に撮らない?」
八幡「……俺も?」
ライス「うん。ダメかな?」
八幡「……あぁ、いいぞ。」
ライス「やったぁ!」
……カメラは嫌いなんだが、まぁ他ならぬライスの為だ。引き受けようじゃないか。
ーーー数時間後・夜ーーー
全てのレースが終わって、最後のイベントであるウイニングライブの時間になった。通例であれば、宝塚記念に出走したメンバーで【Special Record!】を歌い踊るのだが、今回はライスが2年ぶりのレースで優勝したという事もあって、ソロライブを行う事になったのだ。流石に他のウマ娘達やトレーナー達から何かしら言われるんじゃないかと思ったのだが、案外すんなり……というか是非やってほしいみたいな感じな事を言われた。何だか拍子抜けに感じてしまった。
「え〜それでは今から、宝塚記念を優勝したライスシャワーさんによるソロライブを行います!!まずはライスシャワーさん、今日の優勝おめでとうございます!」
ライス「あ、ありがとうございます!」
「2年ぶりの大舞台、とても緊張されたと思います。それを含めての今日の勝利、どうでしたか?」
ライス「とっても緊張したし、宝塚記念に出るって言った時にはお兄……トレーナーさんを困らせちゃったと思いました。でも、ライスの為に今日まで必死に頑張ってトレーニングを見てくれた事にとっても感謝してます!それとライスのチームメンバーの皆や、ライスの友人、ファンの皆が応援してくれた事にすっごく感謝してます!けど!今日のソロライブの曲は、ライスが1番お世話になった人の為にライスが1から作った曲です。ガッカリしちゃうと思いますけど、最後まで聞いてくれると嬉しいです。」
……1から作った曲?何だそれ、俺は知らないぞ?
「成る程、それではライブのスタートです!!」
ステージがライスだけになると、イントロが流れ始めた。ゆったりとした曲調からバラード系だ。
ライス「いつまでも続いてゆくと 僕はずっと思っていたんだよ」
ライス「あの日君がキレイすぎるわけを 僕は何も知らなかった」
ライス「神様って人が君を連れ去って 二度とは逢えないって僕に言う」
ライス「どこに行くんだよ? 僕は何もできなかったよ 美しすぎた人よ」
「わぁ……バラード系だ。」
「ダメだって……俺こういうのダメなんだって。」グッ
「これ絶対トレーナーさんの為に作った曲だよ、聞いてて分かるもん。」
ライス「会いたくて 会いたくて どんな君でも 願い事がもし一つ叶うならば」
ライス「今すぐに 今すぐに 抱き締めたいんだよ ずっと君のそばにだけいたかったんだ」
ライス「心の中は涙の雨のメロディー 君と過ごした日々は忘れるなんてできないんだよ」
………
ライス「僕はカラッポになってしまって、抜け殻みたいになったよ」
ライス「美しすぎた君の姿を 僕は今日も想ってしまうんだ」
ライス「神様って人が君を連れ去って 二度とは逢えないと僕に言う」
ライス「そんなサダメなら聞きたくはなかったよ 美しすぎた人よ」
「この歌詞ってさ、引退とかそういうので騒がれてたからこういう感じになったとか?」
「それはあり得るな。じゃなきゃこんな言葉使わないだろ。でもヤバいな……」
「え、何が?」
「涙腺崩壊しそう……」
「それは分かる。」
ライス「会いたくて 会いたくて どんな君でも 願い事がもし一つ叶うならば」
ライス「今すぐに 今すぐに 声が聞きたいんだよ ずっと君のそばにだけいたかったんだ」
ライス「心の中は君と僕とのメロディー 君と過ごした日々は忘れるなんてできないんだよ」
八幡「………」ツー
ライス「今夜も君の姿 探してしまうよ 思い出の手紙を 捨てられずにいるよ」
ライス「もう声は君には届かない 奇跡が起きるなら もう一度、もう一度だけ」
八幡「………」ツー
何だよ、何だよこの曲……もしかしてこれ俺の為に作ったってのか?やめろよ、何で俺なんかの為にこんな良い曲作ったんだよ………
タリアト「……八幡。」
ライス「会いたくて 会いたくて どんな君でも 願い事がもし一つ叶うならば」
ライス「今すぐに 今すぐに 抱き締めたいんだよ ずっと君のそばにだけいたかったんだ」
ライス「心の中は君と僕とのメロディー 君と過ごした日々を忘れる事なんてできずに」
ライス「だけどそいつが僕のカラッポを埋めてくんだよ」
ライス「Yes love〜 Yes love〜 Yes love〜 Yes love〜」
ライス「Yes love〜 Yes love〜 Yes love〜 Yes love〜」
ライス「Yes love〜 Yes love〜 Yes love〜 Yes love……」
ライス「……○○○○○。」
目を瞑りながら最後の歌を歌い、そして最後に目を開いたライスが何かを呟いた……何を言ったのかは口パクだったから聞き取る事は出来なかった………けど、今はそんな事気にしてる余裕も無い。
八幡「ぐっ……うっ、うぅ……」ポロポロ
タリアト「………良い曲だ、本当に。お前の為に懸命に試行錯誤し、考え、作曲したという意志と思いをこれでもかという程に強く感じる。」
そして、ライスのソロライブは静かな形で幕を閉じた。だが周りの雰囲気は嫌な空気ではなかった。俺以外にも啜り泣くような声や嗚咽が聞こえた。
ずっとこの曲聴きながら書いてました。おかげで目から塩水がたくさん溢れて溢れて………
ーーーおまけーーー
ライス「Yes love〜 Yes love〜 Yes love〜 Yes love〜」
ライス(……病院でいっぱい考えて、たくさん言葉とかを選んだ。見ててくれてるお兄様?お兄様のために作った曲だよ。ライスはお兄様からいっぱい色んなものを貰ったから、ちょっとでもお返しがしたくて曲を作ったんだよ。)
ライス「(お兄様……)……大好きだよ。」