八幡side
クラシッククラスになってからおよそ2ヶ月が経った。あれから俺とエアグルーヴは順調にトレーニングを行なっている。メキメキと力をつけてきているエアグルーヴを見ていると、今のところの敵はあまり居ないように思えてしまう。だが、その慢心が思いもよらない方向から敵を寄せ付けてしまう事だってあるから、そんな事があったとしても油断しないようにしてる。
とはいえ、次はクラシック初戦と同じ条件で桜花賞のトライアルレースのチューリップ賞だ。阪神の1,600mは去年に1度走ってるから、感覚は分かってると思う。今回は前走のような逃げを打たずにいつも通りの先行策でいく。その方がアイツもやりやすいだろうしな。
そして今日は10ヶ月ぶりに走りの分析をしている。大体調整する時期に入ってるから追い込むようなトレーニングは行わない事にしてる。
八幡「………」
ピッ!
………去年と比べると、信じられないくらい良くなってるな。同じ距離を走っているとはとても思えない。当たり前だが、改善点がもう殆ど無い。
エアグルーヴ「……どうだ?」
八幡「去年と比べてもヤバいくらいだ。去年走った時のタイムが1.33.2なんだが、今日測ったら1.31.7だ。1秒以上速くなってる。邪魔がなければレコードを狙える速さだ。良い調子だな。」
エアグルーヴ「そうか……ならば次だ、次はオークスの距離を走るぞ。私はいつでも良い、早く始めるぞ。」
八幡「待て、流石にすぐはダメだ。それにレースの2週間前だ、軽度のトレーニングとはいえちゃんと休み休みで行くぞ。前もそうだったからな。」
エアグルーヴ「……あぁ、分かった。」
八幡「よし、じゃあ次は2,400mだ。時期的には早いがお前が最も欲しい冠だ、早過ぎるという事も無いだろう。さっきのお前の走りなら85点は固い、それ以下を取ればオークスは勝てないと思え。」
エアグルーヴ「無論だ、100点を取るつもりで行く。」
エアグルーヴの気合も乗ってる、良い兆候だ。このままの勢いで桜花賞まで持っていきたいものだ。
ーーートレーニング後ーーー
八幡「総評は……90点、90点、90点だ。どれも最初に比べたら間違い無く成長してる。タイムもそうだが、走り方やコースの位置取り、スパートのタイミング、どれもよく出来ている。前からルドルフから聞いてはいたが、お前のレースセンスはかなりのものだな。これならレースでも充分だ。」
エアグルーヴ「そうか。」
八幡「だが、個人的には100点を取ってくれなくて良かったと思っている。」
エアグルーヴ「……それは何故だ?」
八幡「もしそれを取っちまったら、俺のやる事が無くなっちまうからな。それならまだ90点くらいの方がトレーニングのやりがいも出てくるってもんだ。100点=敵無しでは無いからな。その点を含めたら、お前はまだ伸び代がある。」
エアグルーヴ「つまり、トレーニングのやり方次第ではまだまだ速くなれる、そういう事か?」
八幡「俺の見解では、だけどな。」
エアグルーヴ「……ならば貴様から見て、チューリップ賞はどう見る?私は勝てるか?」
八幡「他のウマ娘の状態を逐一観察してるわけじゃないから分からんが、今のお前程の力を持ったウマ娘は居ないと思う。お前と同じ世代には。チューリップ賞はハッキリ言って圧勝出来ると思う。前の阪神JFと同じくらい。」
エアグルーヴ「あの時は逃げだったな。今回は先行で行くとしても前と同じになると?」
八幡「あぁ。実力を伸ばしてる奴が居たとしても、同じくらいの着差になると思う。」
エアグルーヴ「お前がそこまで断言するのは珍しいな。」
八幡「そのくらい今のお前は順調って事だ。」
お世辞抜きにしても、阪神JFからの成長具合には度肝を抜かれている………っ!あり得ない話だが、本格化か?ウマ娘は本来、本格化を迎えてからデビューするのが普通だ。そうでないと、肉体的な問題があるからだ。もしエアグルーヴのこの状況を本格化と呼ぶのだとすれば………いや、あり得ない。流石に無いだろう。2回目の本格化なんてあるわけ無い。実例だって無いんだしな。
八幡「まぁ兎に角、チューリップ賞に関しては問題無いだろう。来週には枠組も発表されるから、それまでは調子を落とさないようにトレーニングをしていくぞ。」
エアグルーヴ「了解した。」
八幡「よし、じゃあ軽い報告も終わったから今日はこれで終了だ。まだ2月で少し寒いから、風邪引かないようにな。」
エアグルーヴ「お前は私を幾つだと思ってる?体調管理も出来んようでは、生徒会副会長など務まらん。」
八幡「まっ、そうだろうな。」
エアグルーヴ(くっ……まただ、また私はこんな態度を。帰省から帰ってきてもう2ヶ月も経つというのに、未だ奴には礼すら言えてない。お母様から言われた事が全て正しいというわけではないが、流石に礼を言わないというのは周りに示しがつかん!どうすれば………)
ガチャッ!
???「しっつれ〜い!あっ、居た居たぁ〜♪なぁトレーナー、あたし次のレーススプリングS出るんだけどさ、調子どう?どう!?」
八幡「いや、それは担当に聞けよ……」
???「トレーナーじゃないと分からないんだもん!なぁなぁ、今のあたしってどう見える?調子良さそう〜?」
八幡「……まっ、今のお前なら問題無いんじゃね?それにたった200mぽっちの距離延長なら問題無いだろ。自分でも分かってんだろ?調子が良い事くらい。なぁ天才?」
???「へへへっ、やっぱトレーナーなら分かってくれると思ったよ〜!そう、今のあたしは絶好調!このままの勢いで次のレースも勝つし、3冠だって獲ってやるんだから!このバブルガムフェローに任せなさい!」
……最初会った時から思ってたが、元気の良い奴だ。
という訳で最後に思いつき(いつも思いつきで書いてますけどww)で入れてみました、【天才】ことバブルガムフェローです!
朝日杯3歳S(現在の朝日杯FS)と天皇賞・秋を含めた重賞を5勝したお馬ちゃんです!【サンデー四天王】の1頭としてその世代のトップに君臨していました。当然クラシックでも有力候補でしたが、クラシック初戦1週間前にまさかの骨折、春は全休を余儀なくされてしまいました………怪我が治った後は菊花賞では無く、天皇賞秋へと駒を進めました。3歳ながらもこのレースに勝利を収め、史上2頭目の3歳天皇賞制覇を成し遂げました。3歳での天皇賞制覇は現在を含めてたったの4頭!これだけでもどれだけ凄いかが分かりますよね。