エアグルーヴside
ふぅ……こんなものか、奴の言った通りになったな。競り合う相手も居なかった。だが今日は桜花賞の前哨戦、力を出していなかっただけかもしれん。かく言う私も最後の50mは完全に流したのだがな。
ビワハイジ「貴女……前よりも、速くなってるわね。一体どうやったら、そんなに速く?」
エアグルーヴ「日々の鍛錬を疎かにしなかった結果だ。それ以外に理由など無い。後は………まぁ、私のトレーナーの腕が良いというのもある。」
ハイジ「………何よ、惚気?」
エアグルーヴ「断じて違うっ!!」
カラー「また負けたわ……貴女、速い上にどれだけパワーがあるのよ?阪神って最後の直線には急坂があるのに、全くスピードが落ちてなかったわ………どうなってるのよ、ホントに。」
ハイジ「そういえば確かに………」
……何故だ、何故私は少し引かれているのだ?私はただ普通に走っただけだぞ、それなのに何故こんな目を向けられるのだ?
少し話をしてから私は控え室に戻り、支度を整えてからインタビューへと向かった。今回からは私1人でインタビューを受ける事になっている。
「それでは今回のメインレース、チューリップ賞を制しましたエアグルーヴさんのインタビューを開始します。まずは優勝、おめでとうございます。」
エアグルーヴ「ありがとうございます。」
「今回のレースはいかがでしたか?」
エアグルーヴ「自身の想定していた通りの展開を作り出す事が出来ました。」
「前回は逃げでの勝利でしたが、今回は得意の先行でした。同じ着差でしたが、走りやすさはどうですか?」
エアグルーヴ「後者の先行です。私自身、この走りでここまで来ましたので、今後もこの走りでやっていきたいと思っています。」
「今後は桜、樫、秋華とこれからが楽しみになります。これからの事について何かありますか?」
エアグルーヴ「今はまだ始まったばかりですが、この先のクラシックではさらに強くなった自分をお見せする事をお約束します。そして宣言します、私はトリプルティアラ全てのレースを先頭で駆け抜けます。」
私の発言と同時にカメラのフラッシュが飛び交った。正直このフラッシュはとてつもなく嫌だ。だが仕方ない、これもやらなくてはならない事だ。
「それで、今日は……その、トレーナーが居ないようなのですが、それは何故でしょうか?」
エアグルーヴ「私とトレーナーが2人で相談した結果、今後は私だけが取材に応じるという決断に至りました。何故かは答えるまでもないと思いますが、敢えて言うのであれば前回の記事の事があったからと申し上げておきます。」
すると、後ろに居た何人かの取材班達が苦い表情を浮かべていた。どうやら奴の言っていた先生という人物が本当に何とかしてくれたようだ。
「で、ではこれにて取材を終わります。ありがとうございました、エアグルーヴさんでした。」
取材が終わって漸くフラッシュの嵐から逃れられる。さて、私もトレーナーの所に戻るか。
八幡「ん、よう。」
エアグルーヴ「あぁ、無事に勝ってきたぞ。」
八幡「問題無かったな、これなら次も勝てる。レースが終わった後に言う事でも無いが、今後は坂路中心のトレーニングを行っていく。最大2,000mしか走った事が無いからな、次の次のレースは1番過酷なレースになる。今の内にスピードとスタミナを鍛えるぞ。」
エアグルーヴ「分かった。」
八幡「さて、今日はレースがあったから明日は休みにする。ついでに言うと、桜花賞までの期間は単走にする。少しは併走も取り入れるが、本当に少しだけだ。」
エアグルーヴ「東京はサウジアラビアRCで走ったのが最後だが、あれはどうなのだ?」
八幡「あのレースも勉強にはなったが、最後だけだ。今回のオークスはお前も知ってる通り2,400m。前走ったのよりも800m長い。それにだ、この時期のクラシッククラスのウマ娘にとっては鬼門とも言って良いくらいの距離だ。難なくこなせる奴も中には居るが、大抵は終盤50〜100m辺りでスタミナを切らして減速、もしくは失速する。お前もそういうのはしたくないだろう?だから坂路トレーニングだ。」
エアグルーヴ「阪神には急坂もある、それならちょうど良いトレーニングになるな。」
八幡「あぁ、そういう事だ。」
やはりコイツのトレーナーとしての腕は目を張るものがある。こんな考えは普通は至らん。次走に向けてのトレーニングをするのが普通だが、コイツは次走の次も見据えている。
………い、今なら言えるだろうか?
エアグルーヴ「……おい、そのままでいいから聞け。」
八幡「ん、何だ?」
エアグルーヴ「私は実家に帰省した時にお母様からある指摘を貰ってな、トレーナーを大事にしろ、と。それにだ、貴様にはまだ礼を伝えていなかったと思ってな。」
八幡「………礼?何の?」
エアグルーヴ「私を選んだ事だ。貴様は担当を持っていなかった時、数日かけて私を選んだ。今日まで貴様には何も伝えずにいたが、私を選んでくれた事には……その、感謝している。」
八幡「……お前、俺の言った事忘れたのか?互いに利用するだけの関係だって言った筈だが?」
エアグルーヴ「それでもだ。お前が私を選んだ事実は変わらない。」
八幡「………そうか。まぁ、一応受け取っておく。」
相変わらず反応の薄い奴だ。だが、これで1つ目は達成した。