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スイート「母上、ご覧になっていたかと思いますが、ルドルフが日本ダービーを獲りました。」
スピード「あぁ、無論観ていたさ。これで我がシンボリ家も漸くダービーウマ娘を輩出する事が出来た。ルドルフにもそうだが、あそこまで育て上げたトレーナーにも感謝しなくてはならないな。」
スイート「えぇ、本当に。デビューする前からあの子には注目している人が居ましたが、それを抜きにしてもデビュー戦からダービーに至るまであれだけの走り、あの子1人で成しえるような事ではありません。」
スピード「やはりスイートもそう思うか?」
スイート「はい、トレーナーの力が大きいかと。」
シンボリ本家。その一室にて当主であるスイートルナとURA現副会長のスピードシンボリが親子2人だけで会話をしている。内容はルドルフのダービー制覇の事だが、トレーナーの八幡についても語られていた。
スピード「恐らくルドルフの担当になったトレーナーが秀でた才能の持ち主なのだろう。デビュー戦の大差勝ちから始まって以降も差をつけての勝利、どれを取っても完璧なレース展開を構築している。ルドルフ1人でもあのようなレースは流石に出来ないだろう。」
スイート「えぇ………トレーナーについて少し調べたのですが、名前は比企谷八幡で去年中央トレセン学園に首席合格で配属されたそうです。」
スピード「ほう、優秀なのだな。それで?」
スイート「学園の生徒だけでなく、教職員や用務員、学園のスタッフからの評価も高いようです。一部トレーナーからは否定的みたいですが、嫉妬によるものかと。」
スピード「……続けてくれ。」
スイート「トレーニング方法も我々の知る方法とは全く異なるやり方を取り入れているようです。一体どのようにしてあのやり方を身に付けたのか……」
スピード「とすると、彼はトレーナー育成学校の出身ではないのか?」
スイート「彼は千葉の私立大学出身なのですが、その大学ではトレーナー合格者は愚か志望者も過去にはありませんでした。なので彼が創設以来最初のトレーナー合格者という事になります。とても独学で得た知識で主席合格をしたとは考えられません。」
スピード「うむ……確かに気になる、他のトレーナーとは一線を画するトレーニング法を有しているのだからな。スイート、ルドルフに近々シンボリ家にトレーナーと一緒に来れないかどうか伝えてもらえるか?」
スイート「それでしたらもう伝えてあります。別の要件でルドルフには来てもらう事になっていましたので……トレーナーさんにも。」
スピード「この前話していた▲▲商会との事かな?」
スイートルナはスピードシンボリがそういう事を予想していたのか、既にルドルフと八幡をこの家に招待していた。▲▲商会の事で。
スイート「ルドルフは約束通り、ダービーを獲りました。なのでルドルフとトレーナー立ち合いの元、▲▲商会との取引の破棄と新しい取引先との契約を見届けてもらいたいと思っていましたので。」
スピード「成る程、確かにそれならルドルフもトレーナーを連れてくる理由にはなるだろう。それで、どう思う?▲▲商会は?」
スイート「先月に新年度のご挨拶と共にこの屋敷に訪問されましたが、噂通りの人柄かと。」
スピード「そうか……ならば私からは何も言うまい。それにスイート、今はお前がこの屋敷の主であり、シンボリ家の指揮を執る長だ。歳ばかりを取る私の事を気にする必要もあるまい?」
スイート「いえ、私は母上に比べたらまだ若輩者。背中はまだまだ遠く影すら踏めておりません。私の目標で越えるべき大きな壁であり、誇るべき背中です。」
スピード「止せ、恥ずかしい。」
スイート「ではお叱りを受ける前に止める事にします。ルドルフとトレーナーを招待する日時ですが、向こうの都合でもよろしいでしょうか?」
スピード「どちらも忙しいのは変わり無いからな、そうしよう。決まったら私にも伝えてくれ、私もその日に合わせよう。」
スイート「分かりました、決まったらすぐにお知らせします。」
スピード「あぁ。ではこの話は終わりだな……さてスイート、久しぶりに親子水入らずで夕食を共にしないか?最近は会食や1人の食事ばかりで味気無くてね。誰かが共に居てくれると楽しく食事が出来そうなのだが……どうかな?」
スイート「他ならぬ母上からのお願いです、聞かないわけにはいきませんよ。それに今日はルドルフのダービー制覇というめでたい日です、何時間でもお付き合いしましょう。」
スピード「今夜はとても美味い酒が飲めそうだな。どんな高級なワインよりも美味しく感じる事だろう。」
その日、シンボリ家は夜遅くまで食堂の明かりが灯っていた。美味い料理に酒が進んだのか、その1日で多くのワインの栓を開ける事になったのはシンボリ家だけの秘密だ。加えてスイートルナとスピードシンボリの粋な計らいで残っていたスタッフもルドルフのダービー勝利を祝う席へと変わっていた。
シンボリ家でも喜ばしい1日になったみたいですね。