八幡side
店内に入って席へと案内された。やはり先生の正体に驚いたのか、未だ3人の硬直が解けていなかった。まぁこの人を前にして平然としていられるのは片手で数えるくらいだろう。俺も正体を知った時はマジで驚いた。
え?何で俺もってか?トレーナーって職業に興味を抱き始めてからは各国の歴史とかも調べたからな。アメリカも例外じゃない、そしたら先生は未だにどのレコードも破られていない伝説のウマ娘なんだもんな、そりゃ驚くって。
タリアト「……そう肩肘張らなくてもいい、ただの食事なのだからな。」
スピード「いえ、その……何と言いますか、あまりにも予想外だったものでしたので。」
タリアト「済まない。私はあまり注目されるのが好きじゃなくてな、名を隠しながら行動をしている。今回自らの名を明かしたのは愛弟子の担当の親族が来られるという事だったからだ。ならば名を名乗るのは当然、それだけの事だ。ただ、1つ約束してほしい事がある。」
スピード「何でしょう?」
タリアト「私と会った事……というよりも名を広めるのは止めてほしい。八幡という愛弟子を最後に私はもうトレーナー育成から足を洗った。故に知識を教えろと言われたとしても教えてやるつもりも無いからな。」
スピード「承知しました。此処で貴女と会った事は我々だけの秘密に致します。スイート、ルドルフもそれでいいな?」
スイート「はい、母上。」
ルドルフ「私も承知しました。」
タリアト「感謝する。さて……堅苦しい話はここまでにして、シンボリルドルフ。」
ルドルフ「っ!はい。」
タリアト「まずは3冠達成おめでとう、と言っておこう。私も画面越しで見させてもらっていたが、見事な走りだった。」
ルドルフ「ありがとうございます。これも一重に八幡君の尽力あって成し遂げられた事、私1人では叶えられない事でした。」
タリアト「お2人も鼻が高いだろう、日本では類の無い偉業を達成したのだ。素晴らしい事だ。」
スイート「えぇ……我が娘ながら本当に誇らしいです。私は現役の頃に良い成績を収められませんでしたので、喜びも一入という思いです。」
その後も先生から話題を振る事が多かったが、どれもシンボリ家の皆にとって答えやすい内容で、いつの間にか固い空気は何処かへと行ってしまい、楽しくお喋りをしながら食事を楽しんでいる。
タリアト「ところで八幡、シンボリルドルフ。君達は次のレースをジャパンCとしていたな?」
八幡「?はい、そうですけど……」
タリアト「これは一師匠として、1人のウマ娘として告げる事だが……気を付けろ。」
八・ル「っ!」
タリアト「アメリカからは北米路線で常に上位を占めているウイン、3年連続でGⅠを勝っているマジェスティーズプリンスが出走を表明した。恐らくもうすぐ日本に来る事になるだろう。」
八幡「そうですか……ありがとうございます。他の参戦するウマ娘を調べてみます。」
タリアト「あぁ、楽しみにしているぞ。」
っていう事は現地に来てくれるのだろうか?これまではテレビだったみたいだから、生で見せるのならこれはチャンスだ。
八幡「ジャパンCは現地で観戦するんですか?」
タリアト「そのつもりだ。アメリカのウマ娘達を応援するつもりは特に無いが、せっかくの舞台だからな。」
スピード「でしたら是非、我々の所へお越しください。今日のレストランで無理を聞いていただいたお礼とでも思ってください。このくらいの事はさせてください。」
タリアト「おや、いいのか?」
スピード「寧ろさせてください。我々の使用する所でよろしければですが。そうだ、比企谷トレーナーも一緒の方が先生殿も嬉しいだろう。」
八幡「え、俺もですか?俺ならトレーナー席があるので気にしなくても大丈夫ですよ?」
スイート「先生も比企谷さんが居た方が安心すると思うのですが、どうでしょう?」
俺は別に構わない、構わないんだ。けど多分だが、シービーとエースのトレーナーも一緒になると思う……地方にもジャパンC参戦の招待を送ってるみたいだが、拒否られたみたいだし今のところは中央の4人だけだと思う。だから多分、俺はそっち側に招待されると思うんだが……断るのもアレだしいっか。
八幡「……では、よろしくお願いします。」
スピード「あぁ、分かった。ではジャパンCの当日を楽しみにしておくよ。」
タリアト「ふっ、八幡……良いスポンサーが付いたな。これだけ大きい後ろ盾はそう作れるものではないぞ?大切にしなさい。」
八幡「勿論です。それにルドルフに契約を破棄されないように気を付けます。」
ルドルフ「いえ、私は絶対破棄しませんので。」
スピード「ふふふっ、そうか……比企谷君、孫娘もこう言ってくれている。これから先もきっと迷惑をかけると思うが、よろしく頼むよ。」
八幡「……はい。」
スイート「シリウスとクリスエスも偶には構ってあげてくれるかしら?」
八幡「はい、偶にで良ければですが。」
ホント、偶に相手する時あるから大丈夫だと思う。
タリアト「それと八幡、お前に3冠達成の褒美だ。」
八幡「え?」
タリアト「何、身に付けていても邪魔にはならない物だ。その気があればトレーナーバッジの下にでも付けてくれて構わない。」
先生が渡してくれたのは色の違う3つの宝石が付いている蹄鉄型のブローチだった。
八幡「……やっぱり先生ってセンス良いですよね、このネックレスもそうですけど。」
タリアト「それも付けてくれていたのか。」
八幡「勿論です、先生からの贈り物なんですから。」
それにカッコ良いし付けない理由も無いし。
先生、八幡に3冠達成のご褒美!