八幡side
「さぁどうぞ、お入りください。貴方には是非見せたい物があるんです。」
俺はこの人に言われるがままに部屋に入った。だが中に入った瞬間、目を奪われた………
八幡「すげぇ………」
「やはり、貴方になら理解していただけると思っていました。」
中に入ってあった物、それは絵だった。だがただの絵ではない……その絵には全てウマ娘が描かれており、様々な絵が飾られてあった。例えば日差しに迎えられながら勝利を喜ぶウマ娘、雨の中ライバルと競り合う2人のウマ娘、紙吹雪が舞いながら祝福を受けているウマ娘、本当に色々だ。
八幡「この絵……凄いですね、本当に魂が乗り移っているかのように感じます。どれを見てもそう感じます。それに……こうやって遠目で見ると本当にその時の風景がそっくりそのまま形として出てきているかのように感じます。」
「そう言っていただけて、この絵達も喜んでいる事でしょう。私はこの都内で絵師をやっていましてね、まだ駆け出しの頃はどんな絵を描いて良いか分からず途方に暮れていました。私は誰もが感動を共有出来るような、そんな絵が描きたい。それだけはずっと変えずにここまで来ました。そして出会ったのがウマ娘のレ-スでした。今でも覚えています、あの感動、熱、周りの風景、何もかもに圧倒されました。そして思い知らされました、これまで自分はどれだけ小さな枠の中で飾られていたのかを……」
八幡「………」
「特に、レ-ス後にウマ娘とトレーナーがともに喜びを分かち合う瞬間、あの姿には本当に心を大きく揺さぶられました。あんな素晴らしい光景がこの世に存在していたのかと……それで私は、ウマ娘を専門とした絵師をしているというわけです。」
八幡「そうだったですね……」
この人の熱量が分かる気がする……これだけの絵、本当に強い想いが無ければ描けない物だ。素人の俺にだって分かる。酒飲んでたのに、一気に酔いが覚めた……俺は良い意味で目の前に絵達に酔ってる。
八幡「本当に酔いが覚めました。なんか俺も心が熱くなるくらい、良い絵だなって思います。」
「光栄です。去年の貴方と会話をして瞬時に理解しました。この方になら私の絵を見せても理解してくれるだろうと。貴方にはそれだけのウマ娘に対する熱意を持っている、そう感じたからです。」
コンコンコンッ ガチャッ
「失礼します。どうも初めまして、妻です。」
八幡「トレーナーの比企谷です、お邪魔させていただいてます。」
「どうぞ好きなだけゆっくりしていってください。こちらお茶とお菓子です。」
八幡「わざわざありがとうございます。」
お婆さんはそれだけ持ってくるとすぐに退室した。
「比企谷さん、単刀直入にお聞きします。この絵達に値段を付けるとすれば、どのくらいの価値があると思われますか?」
八幡「……自分には付けられませんよ。一目見ても良い作品だと思えるのですから。自分がもし客だとして、この絵の価格が100万円だったとしても納得出来ます。この絵にはそれだけの価値があると思ってます。自分には絵の価値がどれくらいなのかサッパリなので、このくらいの事しか言えませんけど、どうでしょう?」
「とても嬉しい評価ですね。正しい説明から入りますと、絵や物の価値というのは作者が決める事なのです。この絵にはこの値だけの価値がある、この作品にはこのくらいの価値がある、それを決めるのは購入者でも主催人でもなく、その作品を完成させた本人です。なので貴方が仰った100万円はとても嬉しい評価です。」
八幡「はい、なのでちょっと残念です………
「………」
八幡「………」
「……やはり貴方を招待したのは正解だった。まずは謝罪を、私は貴方を試していた事……申しわけございません。」
八幡「いえ、気にしないでください。俺自身全く気にしてないので。それで、試した結果はどうだったんでしょうか?」
「申し上げる必要は無いでしょう、文句無しの合格です。貴方になら見せる事が出来ます。少し失礼します………」
ガチャッ ガラガラガラガラ
絵師さんは壁に飾られてある1つの絵を傾けた。まさかの隠し扉………からくり屋敷だったのかよ。
「……どうぞ。この奥は私と妻以外、入った方は居ません。貴方が最初の合格者だからです。どうぞ。」
八幡「………」
俺は戸惑いつつも絵師さんの言われた通り、隠し扉の奥へと進んだ。
ピカッ!
八幡「っ………っ!!うわぁ……」
「これが私の人生の中で価値が決められない絵達です。」
目の前に広がっていたのはさっきと同じような景色。なのだが、これは……さっきの絵とは迫力がまるで違う。一目見ただけで吸い込まれそうな、その絵のウマ娘と目が合っただけで魅了されてしまいそうな、そんなすげぇ絵が7枚あった。きっと、言葉にならないってのはこういう時にこそ使われる言葉なんだなってつくづくそう思う。
八幡「すげぇ………」
「そう思われますか?」
八幡「勿論……初めて絵でこんなに感動しました………」
「ふふ、それは何よりです。よろしければ1から説明させていただいても?」
八幡「っ!はい、お願いします。」
俺は絵師さんから説明を受けながら1枚ずつ絵を眺めていた。その中には初代【3冠ウマ娘】のセントライトが描かれていた。この人、本当にすげぇ絵師なんだな……
「最後はこちらの絵です。当時私が……いいえ、今でも最高の瞬間と言っても過言では無い絵です。私がまだ駆け出し近い頃に描いた絵ですが、今でもこの絵を超えるだけの絵は描けていません。タイトルは【未来の為に】です。描かれているウマ娘はクリフジという、私がこれまでの人生で最も魅了されてしまったウマ娘です。」
描かれていたのは京都レース場のゴール板付近で夕陽を眺めているような絵だった。これが、若い頃の婆ちゃん………
メジロ主催で出会ったもう1人の男性の正体は絵師さん!
そして最後にはまさかのお祖母ちゃんが絵として登場!