八幡side
「スピードシンボリ様、比企谷様、大変長らくお待たせ致しました。ご依頼いただいたクリフジ様の勝負服の修復が完了しました。こちらがその衣類となります。」
俺は今、再びURA本部へと来ている。その理由は今の言葉で察していると思うが、勝負服の件で呼ばれたからだ。1ヶ月もかかったという事はかなり直した部分があったのだろう。そんで今、それが目の前に立っている。要はマネキンに着せているというわけだ。白い布を被せてあるからまだ見えてないけど。
スピード「では、見せてもらえるかな?」
「畏まりました。」
八幡「………」
職人の人が被せてある白い布を取った。目の前にあるのは確かに俺が見た婆ちゃんの勝負服だった……だが明らかに俺が見た時とは見栄えも輝きも違っていた。指摘していた糸のほつれや傷みは何処にも見当たらず、綺麗な絹そのものだった。傷付いていた金細工も交換されていて、酸化していた部分も全て元通りであろう元の状態になっていた。
八幡「………コレが。」
スピード「何と美しい………」
八幡「なんつぅか………本当に綺麗です。」
「お気に召されたようで良かったです。」
八幡「婆ちゃんは……こんな綺麗な服を着て走っていたのか………」
スピード「………比企谷君、それと君も。1つ、映像を見る気はないか?」
……映像?
俺と職人さんはスピードシンボリさんと一緒にプロジェクターで拡大化された映像を見る事になった。そのレースに出ている1人のウマ娘に目が行った。白黒だし昔の映像だからかなり荒さはあるのだが、その1人のウマ娘だけ鮮明に見る事が出来た。俺の婆ちゃん、クリフジだった……レースは菊花賞、そのレース内容はとんでもないものだった。俺も資料では婆ちゃんの強さや凄さは知っているが、映像を見るとその両方のみならず、洗練された走り、その走りの美しさ、美しさに滲み出る情熱、全てが流れ込んでくるように感じた。
スピード「………白黒の映像の筈が、こんなにも色鮮やかに見えるなんてね。」ツー
八幡「………」ツー
「お、お2人共、涙が………」
スピード「あぁ済まないね……」フキフキ
八幡「………」フキフキ
スピード「どうだったかな、この勝負服の持ち主の走りは?美しかっただろう?」
八幡「はい、本当に……」
「自分は職業柄、年中作成している身なのであまりレースは見ないのですが、この走りにはとても魅了されました。」
こんな所で婆ちゃんの走る姿を見られるなんてな……しかし、本当に綺麗な走りだった。俺は年老いた婆ちゃんしか知らないが、この時からなんだな……婆ちゃんの綺麗な栗色は。
スピード「良くやってくれたね、流石は我が家の専門とする勝負服専門家だ。この仕事に加えて完成度の高さ、君達の仕事に改めて感服させられた………これは謝礼とでも思ってくれ。」
「はっ、ありがたくちょうだ……なっ!!?こ、こんなに!?よ、よろしいのでしょうか!?」
スピード「そちらにある勝負服は私の憧憬の存在であるクリフジ殿の勝負服。それを直すのは容易な事では無かっただろう。その小切手ある金額はこの勝負服を作り上げた労力に値する金額だと私は思っている。」
「……あ、ありがたく頂戴致します!」
スピード「これまでの作業、ご苦労だった。今日まで疲れただろう、それを使って職員の皆で美味しいものでも食べるといい。」
「はい!では、失礼させていただきます!」
職人さんは嬉しそうにしながら部屋を出て行った。部屋の中には俺とスピードシンボリさんだけになったのだが、雰囲気は柔らかく和んだ空気だった。
スピード「魅入ってしまうな……憧れの方の勝負服が目の前にあるというだけで心が躍る。これを見つけてくれた君には感謝しなくてはならないな。」
八幡「いえ、こちらこそ貴重な映像を見せてくれた事、感謝しています。トレーナーになってからというものの、自分の祖母の事を知る機会が多くてとても感謝する日が多いですよ。」
スピード「おや、そうなのかい?」
八幡「はい。もしその人がお話してもいいという事なら話しますが、本人の許可無しに語れる事では無いと思っていますので。俺でも知らなかった事ですから。」
スピード「ふむ……ではその話を聞ける事を楽しみにするよ。時に比企谷君、クリフジ殿がURAに寄付してくださった品があるのは知っていると思うのだが、見てみたくはないかな?」
八幡「っ!是非見たいです。」
俺はスピードシンボリさんに案内されて、婆ちゃんが勝ち獲ったGⅠレースのトロフィーと優勝レイを見せてくれた。けど嬉しいよな、こうして大事に保管してくれてるってのは。
八幡「ありがとうございます、有意義な時間を過ごす事が出来ました。」
スピード「いや、それはこちらの台詞だよ。君がクリフジ殿の孫だと知らなければこんな日は訪れなかっただろう。こちらこそ君に感謝だよ。」
八幡「……なんか、恐縮です。」
スピード「どこか脅すように言ってしまうが、君の家に行く理由が増えてしまったな。」
……確かに脅しではないんですけど、本気で来るんですか?いや、来るんだろうなぁ………その内ルドルフも来そう………いや、要らん想像はするもんじゃないな。
ホントにその内、家に行きそうですねww