八幡side
5月に近付いて来た頃……所謂4月末の今日この頃、俺とルドルフは京都へ移動している。シニアクラスの春3冠の2冠目、天皇賞・春の出走を控えている。出走は明日なのだが、今回は割と早めの移動にしている。
ルドルフ「八幡君、去年の菊花賞以来の京都だが今回の移動はかなり早いね?何か理由があるのかい?それに荷物もあるみたいだが?」
八幡「まぁそうだな。用事があるから少し早く移動してるってのは間違いじゃない。実家からURA本部に向かう時の事覚えてるか?あの道具について知ってるかもしれない人達に会うつもりだ。」
ルドルフ「確か藤森神社の神主だったね……その人に会いに行くのかい?」
八幡「あぁ。話を聞きに行くチャンスだと思ってな、物を見せて知ってるかどうかだけどな。」
そう、アレを見せても知ってるかどうかなんて保証は無い。知らないって確率の方が高いんだから希望は持たない方が良い。婆ちゃんのファンの神主さんだからと言ってあの道具の事を知ってるのとは別問題だし。
八幡「お前は自由にしてもらって構わない、俺はその神社に行くから。」
ルドルフ「八幡君、私も一緒に行きたいと思っていたのだが?」
八幡「………来るのか?」
ルドルフ「無論、共に行こう。」
八幡「……分かった。」
それから俺達は宿泊するホテルに荷物を置いてから再び車に乗って藤森神社に向かった。
ーーー藤森神社ーーー
八幡「……半年ぶりだな、此処に来るのも。レース前に此処に来られるのも今日が最後だな。俺達のレース予定に今後京都に来る予定は無いし。」
ルドルフ「トライアルは含めないのかい?」
八幡「夏合宿次第かもしれないな。まぁレースの事は置いといて、とりあえず行くか。」
ルドルフ「しかし、どういう知り合いなんだい?」
八幡「婆ちゃんが眠ってる場所と言えば分かるか?」
ルドルフ「っ!成る程………そういう事だったか。無粋な事を聞いてしまって済まない。」
八幡「いいよ、別に気にしてない。こんな所に墓があるとは普通思わないだろうしな。おっ、本堂が見えてきたな。」
ルドルフ「あぁ。」
さて、神主さんは何処だろうか………
「おや、君は……クリフジさんのお孫さんだったかな?久しぶりだね。」
八幡「っ!神主さん……ご無沙汰しています。」
「クリフジさんにお参りかな?」
八幡「まぁ、そんなところです。明日は天皇賞なので婆ちゃんに手を合わせるのと力を貸してもらおうと思っていまして。それから、神主さんにも少しお聞きしたい事がありまして。」
「私に?でしたらお参りが終わりましたら本殿にお越しください。そちらでお待ちしておりますので。」
八幡「分かりました。ルドルフ、婆ちゃんを紹介するから一緒に来てくれ。」
ルドルフ「あぁ、分かった。」
ーーー墓前ーーー
八幡「婆ちゃん、久しぶり。去年ぶりだな……明日レースがあるのと、俺の担当ウマ娘を紹介したいから連れて来たんだ。現役最強のウマ娘なんだ、とんでもなく強いウマ娘だ。」
ルドルフ「八幡君、よしてくれ……んんっ、初めまして。ご紹介に預かりましたシンボリルドルフと申します。八幡君からお婆様の事は色々と聞かせていただいております、お会い出来てとても嬉しく思います。」
八幡「すぐに綺麗にするからな。」
既に綺麗になっている墓石でも、俺は自分でも分かるくらい入念に手入れをした。婆ちゃんには手抜きをしたくないって不思議と思えてしまうんだよなぁ。
ーーー数十分後ーーー
八幡「………」
ルドルフ「………」
八幡「……じゃあ、そろそろ行く。じゃあまた。」
ルドルフ「クリフジ殿、またいつか。」
そんで墓前から離れた俺達は本堂へと向かった。さて、今回の本題だな。
「……お参りは終わりましたかな?」
八幡「はい、しっかりと。」
「それは良かった……それでは参りましょう、お話はそちらで伺いますので。」
案内されたのは本殿の中だった。普通の人は入れないのが常識だが、神主さんが『クリフジさんのお孫さんなのですから、私にとっては大事なお客様。こちらに案内するのは当然です。』という事で案内された。
「それで、私にお聞きしたい事とは?」
八幡「年末近くに実家へ帰って祖母の遺品を見つけました。関連性が分かりませんでしたので、神主さんに見せれば何か分かると思いましたのでお見せしに来ました。こちらがその遺品です。」
「………」ジィ∼…
「間違いありませんね、この細工は私の父が考案して作成してもらったもの。まさかこうして現物を再び見られるなんて思いもしませんでしたよ。」
八幡「それじゃあ………」
「えぇ、この神楽鈴は学生の頃のクリフジさんと私の父が共に考案して作成してもらった物です。この扇も京の老舗に作成を依頼した記憶があります。お手に触っても?」
八幡「はい、どうぞ。」
「………懐かしいですね。」
神主さんのお父さんが婆ちゃんと作った物なのか……色んな人と携わって作った物なんだな。それにしても直接携わってない神主さんが覚えてるって事はそれだけ思い入れが深いって事か。
神主さん、やはり知っていたみたいですね。