八幡side
1日が経って天皇賞当日の日曜日……春のシニア3冠の中でも1番の難所だ。これに勝つ事が出来れば現役最強はルドルフの物になったも同然になる。俺としてもルドルフには勝って欲しいし、ルドルフにとっても欲しい冠だろう。そんな京都レース場だが、最早ルドルフが勝つのが当たり前みたいな雰囲気になりつつある。気持ちは分かるが、負ける事を考えないのだろうか?
スピード「やぁ比企谷君、先日は世話になったね。」
八幡「っ!ご無沙汰しています。」
スピード「どうかな、ルドルフの調子は?」
八幡「万全に仕上げたつもりではあります。昨日もケアをしましたので、不安要素は特に無いですね。」
スピード「ほう……それは走った事の無い3,200mであっても、かい?」
八幡「えぇ。ルドルフのポテンシャルを考えれば天皇賞・春は問題無く走破出来ると確信してます。ライバル達に翻弄されなければ、ですけど。」
スイート「強力な子達が居るの?」
八幡「このレースに出てくる殆どがスタミナ自慢ですからね。まぁそれでも俺は、ルドルフが勝つと思ってますよ。去年のジャパンCと有マ記念を見れば分かると思いますが、シニアクラスであってもルドルフを倒すのは簡単な事じゃないですからね。」
去年の天皇賞ウマ娘は引退してるから、実質的に頭角を現しているのは居ない。新しい世代とも言えるだろうな。
実況『最後に大外15番、注目の1番人気……シンボリルドルフ。』
解説『大阪杯から中3週で天皇賞に参戦。体調も調子も万全といったところですね。距離1200mの延長ですが、どのようなレースを見せてくれるのか楽しみですね。』
スイート「堂々としていますね。」
スピード「あぁ、比企谷君の言っていた事は本当のようだ。不安の表情が一切感じない。」
八幡「………」
ルドルフ『………っ!』ペコリッ
こっちに気付いたか……多分2人に向けてだろうな。しかし、昨日の寝顔とはえらい違いだ。
最上「いやはや羨ましいですなぁ……ルドルフは順調そのもので。」
スピード「……君も来ていたのか。」
最上「えぇ。現役最強のウマ娘の走りともなれば誰だって気になるものですよ。しかし僅か3週間ばかりでこの仕上がり、やはり君の腕前は本物のようだ。それに比べて………」
どうやらシリウスのトレーナーの事を言っているのだろう。若葉賞を勝利したは良かったものの、その後のトレーナーとこの人のゴタゴタで皐月賞の調整が間に合わず、出走を回避したのだ。まぁ原因はほぼこの人だけどな。
毎回毎回トレーニング時間を削るかのようにトレーナー変更の話を持ちかけるもんだからトレーニングや調整どころじゃなかったのだ。だから次は日本ダービーへ直行って事になってる。それでも変更の話は続いてるみたいだが。
最上「それで、比企谷トレーナー?我が娘の担当トレーナーになる件は考えてくれたかな?」
八幡「大阪杯の時にお断りした筈ですが?」
最上「あぁ、確かに聞いた。だが君以上のトレーナーはトレセン学園に……いいや、この日本には存在しない。シリウスを任せられるのは君しか居ないのだよ。」
八幡「そうだとしてもお断り申し上げます。それにそれを聞くのはシリウス本人では?自分1人で全て決まるのであればウマ娘の意思は無いも同然です。最終的に決めるのは当人同士です、外野が口を挟むのはどうかと思いますけど。どうしてもと言うのであれば貴方ご自身がトレーナーになる事を勧めますが、いかがです?」
最上「………君はもう少し話の分かる人だと思っていたんだが、見込み違いだったかな?」
八幡「自分は最初から貴方の話を理解しようとはしていませんよ?」
最上「っ!?」
八幡「当然でしょう?同僚を平気で侮辱するような人の話をどうして理解しなければならないのです?そんな人の言葉に耳を傾けるだけ時間の無駄だと自分は思っていますが、どう思いますか?」
最上「……失礼する。」
よし、行ったな……しかしあの人、本当にスピードシンボリさん達と同じシンボリ家なのか?スピードシンボリさんとスイートルナさんの2人を見てると、とてもそうには思えないし、人柄にも問題があるようにしか思えない。
八幡「すみません、声を荒げてしまって。」
スイート「いいえ、謝るのはこちらの方です。我が家の者が無礼を働きました。申しわけありません。」
スピード「しかし、まだ諦めていなかったのか……自身のせいで皐月賞を回避せざるを得なかったとは考えていないようだな。」
八幡「シリウスのトレーナーも言ってましたよ、『トレーニングの時間が碌に取れなかった。』って。シリウスの為を思うなら口を出さないのが1番とは思わないんでしょうか?」
スピード「【親の心子知らず】と同じように【子の心親知らず】とはこの事だな。最上は今、自身の事しか見えていないように見える。次のダービー、無事に迎えられると良いのだが。」
本当にそう思う、振り回されるシリウスとトレーナー達がすげぇ不憫でならない。
最上、全く懲りてないみたいですね………