ルドルフside
私達の周りは目まぐるしく動いていた。叔父上の日本ダービー後の海外遠征発表から始まって現在に至るのだが、ここ最近の八幡君はあまり休めていないように感じる……細かく説明したいところだが、簡潔にまとめよう。まず、八幡君と私が会見を行ったその日の夜に祖母上と叔父上が会見を行った。内容はこのようなものだ。
・シリウスの単独遠征
・私の帯同は白紙
・現地のトレーナー確保
大きく分けられるとこの3つだ。シリウスが予定している次走のレースは8月の第1週という事もあり、すぐに出発するという事も発表された。内容に相違が無かったから祖母上も口を挟むような事はしていなかったが、やはりトレーナーの件については少々突かれてしまった。だがそれは覚悟していた事だったと思う、甘んじて受けるべきだろう。その後は取材の依頼は来ていない。
そして現在、既にシリウスと叔父上は欧州に飛んで日本には居ない。そして私達も宝塚記念に向けてのトレーニングを積んでいるわけだが、今日がそのちょうど1週間前の日曜日の為トレーニングが休みとなっている。私も少し自分の時間を使いたいと思うところではあるが、どうしても八幡君が気になる……しっかり休めているだろうか、食事は摂れているだろうか、睡眠は充分に確保しているだろうか、当たり前の事だが気になってしまう。
ルドルフ「……っ!今日は日曜日、つまり彼の居る場所は恐らく………」
ーーーカフェテリアーーー
ルドルフ「やはり此処に居たか……」
八幡「どうしたんだルドルフ?もう生徒会の仕事は終わったのか?にしたってまだ飯の時間には早いぞ?」
ルドルフ「君がしっかり休めているかどうか気になって来てみたんだ。そうして来てみたら案の定、料理をしていた。」
八幡「休息なら取ってるぞ。今日だって学園に来たのはほんの1時間前だし、来てからずっとこの厨房で調理してるだけだしな。」
ルドルフ「それは休めていると言えるのか?」
私の不安を他所に八幡君は黙々と調理を進めていた。やはり手際は見事なもので見ていて洗練されているのが一目で分かってしまう程だ。因みに八幡君が作っていたのはBLTサンドイッチとポテトというアメリカスタイルだった。ライスシャワーと共に私も美味しくいただいた。
ーーー数十分後・トレーナー室ーーー
八幡「んで?何でお前も此処に?」
ルドルフ「君の行動を観察しているのだが、これではいつもの日曜日と変わらないのでは?」
八幡「まぁそうだな、普段と変わんない。」
ルドルフ「八幡君……休んでくれ。」
八幡「って言われてもなぁ……休んでるつもりだし、それでいったら俺は街に出て何かするとかすればいいのか?」
ルドルフ「君は何かしたい事はないのか?」
八幡「ん〜……最近は息抜きで舞とかやってるし、やりたい事は消化してるつもりなんだが。」
ルドルフ「もっと何か無いのかい?飲食店巡りやスポーツ、趣味、何でもいいから君のこれはやりたいという欲は無いのか?」
八幡「………なんか、割と日常でやっちまってるから思いつかないな。」
ルドルフ「趣味が無いわけではないというのは理解したが、休みに消化しやすいものを見つけてはどうだい?これでは休みにならないだろう。」
八幡「……そう言う君はどうなわけ?」
ルドルフ「私かい?私は………」
これはマズいな……八幡君に言っていた私が言葉に詰まるなんて。
八幡「……無言は無いと受け取るぞ?」
ルドルフ「い、いや!私にはあるぞ!チェスとダジャレを考える事だ!」
八幡「………出た答えがそれか。」
ルドルフ「面目無い……」
八幡「………シービーの真似するわけじゃないけどよ、散歩でもするか?」
ルドルフ「っ!では行こうか!」
ーーー校庭ーーー
八幡「サマーシリーズが始まって北海道の函館に行ってるからか、普段よりも少なく感じるな。来週のレースが終わったら本格的にサマーシリーズだな。」
ルドルフ「スプリント、マイル、2000の各距離でポイントを競い合う夏の伝統だね。」
八幡「お前を出走させるのも1つの手だが、多分そうなったら誰も出走しなくなるだろうな。」
ルドルフ「あはは……しかし北海道か、1度は行ってみたいものだな。」
八幡「観戦で行けばいいじゃねぇか、その辺りの融通は聞くんだろ?」
ルドルフ「その場合、君も一緒に来てもらうぞ?そうでないとつまらないからね。」
八幡「生徒会で行けばいいだろうに。ブライアンは分からないが、エアグルーヴ辺りなら喜んでお前についていくだろ。」
ルドルフ「君と居た方が物見遊山を楽しめそうだからね。函館は市場の海産物や地域で有名なハンバーガーがあると聞いた事がある。他にも赤レンガ倉庫や夜景も美しいと聞く、君の案内があれば行けると思うのだが?」
八幡「言っておくが今年はもう無理だからな?来週の宝塚記念が終わったら夏合宿だし、下半期からは忙しくなるんだからな。」
ルドルフ「そうか、では来年の楽しみに取っておくとしようか。」
八幡「来年も行けるかどうかは分からんぞ?」
八幡ちゃんと休んでね?