八幡side
さて、6月も終わりを迎え7月の冒頭。大きなレースは秋に持ち越され、秋に向けて少しでもパワーアップする為に夏合宿を行うのがトレセン学園の伝統イベントの1つとなっている。7〜8月にかけてはやり方次第で大きく成長出来る、謂わば分岐点とも言えるだろう。
俺とルドルフも前々から夏合宿に参加する事を決めていたし、秋は更にパワーアップしたルドルフを披露したいという気持ちもある。だから少々キツめのトレーニングになるだろうとは本人にも伝えてあるのだが、『寧ろ望むところだ、ご指導ご鞭撻の程よろしく頼むよ。』っとやる気充分な様子だった。
八幡「とりあえずシービー、君は早く俺から退きなさい。自分のトレーナーの所に行くように。」
シービー「イヤだっ!!」ギュ∼!!
八幡「イヤだじゃねぇの、俺もやりたい事があるんだから邪魔しないでもらえる?」
シービー「じやああたしも行くからっ!!」ギュ∼!!
八幡「ダメに決まってんだろ……」
ルドルフ「シービー、八幡君にも予定があるんだ。それに彼は私のトレーナーだ、不用意な接触は控えてくれないか。」
シービー「そう言って本当はただルドルフが八幡を独り占めしたいだけなんでしょ?あたし分かってるんだからね!!」ギュ∼!!
ルドルフ「そんな筈無いだろう……(やはりシービーの勘というのは侮れないな。)」
八幡「締めるな締めるな痛いから。お前はいつからそんなに面倒臭い奴になっちゃったの?自由何処行った?俺を束縛しないでもらえませんかね?」
シービー「八幡と一緒が良いんだもん♪」ギュ∼!!
八幡「誰かコイツ引っぺがして………」
エース「何だよシービー……アンタまたやってんのか。相変わらずトレーナーさん好きだよなぁ〜。」
シービー「うん、大好きっ♪」ギュ∼!!
エース「大好きならトレーナーさんの気持ちも汲み取ってやれって。あんまり迷惑かけるもんじゃねぇってあたしは思うぜ。」
シービー「………はぁ〜い。」
八幡「助かったエース。」
エース「いいって事よ、にしてもトレーナーさんも大変だな?シービーみたいな奴に懐かれてよ。」
八幡「分かってくれるか?ホントに大変なんだよ。お前も苦労してんだろ?」
エース「あぁ。コイツの自由奔放さにはあたしもちょっと参っててよ、当てにされるあたしの身にもなってほしいもんだよ。」
………ラーメン同士であるファイン以外にも居たのか、苦労人の気質を感じる。
八幡「エース、お前好きな飯何かあるか?作って食わせてやるよ。」
エース「おっ、良いのかよトレーナーさんっ!?」
八幡「おう、お前さえよけりゃだけどな。」
エース「ルドルフから聞いてっけど、トレーナーさんの料理って美味いんだろ?是非食ってみたいぜ!あっ、好き嫌いは無いから何でもいいぜっ!」
八幡「じゃあこっちで考えとく。」
よし、俺達も部屋に行きましょうか。
ーーー自室ーーー
八幡「さて、とりあえず確認も兼ねて今は俺の部屋に呼んだ。今回の合宿でルドルフが磨くのはスピードとパワー、コレに限る。」
ルドルフ「……それだけかい?他には?」
八幡「あるにはあるが、大まかに分けるとこの2つだな。理由もちゃんとある。スタミナをこれ以上伸ばす理由が無いってのが最大の理由だ。ならば他に何を伸ばすか……考えた結果が今の2つだ。恐らく秋の3冠はお前をつぶしにかかって来る連中が多いだろう。特に最初の天皇賞・秋はな。」
ルドルフ「どういう事だい?」
八幡「お前も知ってると思うが、天皇賞・秋は東京の芝2,000mで行われる。クラシッククラスとシニアクラスのウマ娘で競い合うが問題はそこじゃない、距離にある。」
ルドルフ「………」
八幡「クラシッククラスで強さを求めるなら3冠路線に行くのが普通だが、距離を考えて路線変更するウマ娘だって少なくない。その中にはマイルから中距離を得意とするウマ娘が殆どだ。そのウマ娘達は必ずと言っていいくらい自分のスピードとパワーが武器だ。お前は2,000mのGⅠを2回勝ってるが、中山と阪神、どちらも右回りでこれから走る東京2,000mは経験が無い。1,600mと2,400mとではまた内容が違ってくる。」
ルドルフ「そうか……私に要求されるのはスピード自慢の者達でも追い越す事の出来ないスピードを身に付ける事、か。」
八幡「そんでどんなバ場でも力を発揮する事の出来るパワーを身に付ける、これが今回の合宿の最大の目標だ。3,200m走れるのにスタミナ鍛えてもあんまりなぁ……俺、お前をステイヤーズSやダイヤモンドSにも出す気無いし。」
ルドルフ「私もスタミナ自慢をするつもりは無いから、そのレース2つは遠慮しておこう。」
とりあえずルドルフにも夏合宿の目標は告げた。この期間が秋で勝てるかどうかの鍵になるだろう、それだけは言える。とにかく今はマイルを走ってきた連中にも勝てるくらいのスピードとパワーをつける事、それだけを考えてトレーニングをしよう。
秋に向けて頑張れ、ルドルフ!