八幡side
八幡「そういうわけで、今日からはラモーヌとの併走も開始していく。手加減をする必要は無い、向こうもお前に勝つつもりで走ってくるし、これから先のデビュー戦にも勢いをつけたい筈だからな。だからお前も持てる全てで相手しろ。」
ルドルフ「あぁ、承知した。よろしく頼むよ、ラモーヌ。君の助力は心強いよ。」
ラモーヌ「いいえ、こちらこそ……トレーニングがとても楽しみだわ。」
八幡「じゃあ始めていくぞ。あっその前にラモーヌ、一応お前と先輩には昨日の内にメニュー渡してあるからイメージは出来てると思うが、無理はしないようにな。このアップもルドルフに合わせて作ったものだ、まだデビューしていないお前には少しハードな動きになると思う、本トレに入るまでは無理は禁物だからな。先輩もラモーヌが無理そうだったら止めてもらっても構いませんので。」
「あぁ、分かった。そのつもりで俺もトレーニングを見る事にする。」
ラモーヌ「分かったわ。」
ーーートレーニング後・食堂ーーー
予想通り、まだ身体が完全に出来上がっていないラモーヌはルドルフの動きに全てついては来れなかった。だがそれでもメニューの半分以上はこなせていたから大したものだ。それにルドルフの必要としているスピードとパワーの面では大いに役立ってくれると、今日のトレーニングで確信を持てた。今はルドルフが前にいるが、クラシッククラスにもなればラモーヌが前に行く事になるだろう。
八幡「ラモーヌに併走を頼んで正解だったな。しかし、何の心境の変化があったんだ?」
まぁあの頃の事を謝ってくれたのは全然構わないんだが、ラモーヌは自分から進んで謝るような性格では無い……何があったんだ?
まぁ分からない事を考えても仕方ない、か……
八幡「とりあえずルドルフは天皇賞・秋に直行。その後はジャパンCと有マ記念……今年はGⅠのオンパレードだな。今年の初戦だけGⅡの中山記念か………」
八幡「それと今後のトレーニング……もう少しラモーヌにもついて来れそうなメニューにすべきか?いや、それだとルドルフの成長の妨げにもなる。あまりこの手段はとりたくない……」
アルダン「あの、少しよろしいでしょうか……?」
八幡「っ!お前は確か……メジロアルダンだったか?ラモーヌの妹の。」
アルダン「はい。今し方姉の名前を口にしていたみたいですが、何かございましたか?」
八幡「ん?あぁいや大した事じゃない。今お前の姉と俺の担当のルドルフが合同でトレーニングしてるんだが、ラモーヌはまだデビューしていないし、まだ発展途上だ。少しはラモーヌに合わせてやるべきか悩んでいてな……」
アルダン「成る程……でしたら妹の立場から助言させていただきます。姉にそのような気遣いは無用です。恐らく変えてしまえば姉からご指摘が来ると思われます。なのでこれまで通りのやり方でよろしいかと思います。」
ふむ……変えたら不満に思われる、か。ならこの期間はルドルフのメニューをこなしてもらうとするか。
八幡「助言助かった、ありがとうな。やっぱ妹だからか分からんが説得力があるな。」
アルダン「いえ、このくらいの事でしたら何でもありませんから。それに、会長やトレーナーさんの事はメジロ家でもよく聞き及んでいますから。」
八幡「メジロ家が?一体どんな風に?」
アルダン「ふふふっ、ご安心ください。決して悪いお話ではありません。会長の実力は元より、その影で支えておられるトレーナーさんのご采配もよく耳にします。」
八幡「そうだったか……少し安心した。」
アルダン「メジロ家とシンボリ家は古くからお付き合いがありますので、お婆様とシンボリ家のご当主様がよくそのお話をされるみたいなのです。」
スイートルナさんが?俺の話をしてたのか?ルドルフは分かるんだが何で俺まで?
八幡「………自慢話と捉えられたくないからこれ以上は聞かないでおこう。」
アルダン「トレーナーさんとはこれが2回目の会話ですが、そのような方ではないという事くらい分かっております。私も会長のようにトレーナーさんの担当になりたいです。」
八幡「それはアレか?逆スカウトってヤツか?」
アルダン「そのように受け取っていただいて構いません。勿論、私の走りを見ていただいてからの判断となりますが。」
八幡「ならお前の走りを見てから決めるとするか。」
アルダン「ですがその前にお話しておきます、私の足はとても脆く、弱いです。それを加味して判断をお願いします。」
……脚元不安ってヤツか。
八幡「それだけか?」
アルダン「え?」
八幡「いや、だからそれだけかって聞いてるんだが?脚が弱いってのは理解したが、それは将来治していけばいい話だ、他には何も無いのか?」
アルダン「で、ですが普通であれば考えるものではありませんか?私の脚では大きな舞台での活躍は難しい、と申し上げているようなものです!」
八幡「?何か勘違いしているようだが、俺は別にレースの価値とか大きさとかはどうでもいい。走る奴が輝ける状態を作り上げる事が仕事だと思ってる。自分のエゴでソイツを苦しめるような事は絶対にしないし、させたくもない。だから俺はウマ娘の望む道をサポートするだけだ。他には何も無いぞ。」
アルダン「………」
八幡「だから俺はたとえ脚が弱かろうと疾患を抱えていようと俺からすれば問題じゃない。」
アルダン「………素晴らしいお考えだと思います。」
八幡「そうか?別に普通の事だと思うけどな。」
………え?だってそうだよな?自分のタイプや育ててみたい奴がいるに越した事は無いが、トレーナーの1番やるべき事は育てている担当ウマ娘の目標や夢を否定せず、それを叶えさせる為に全力で応える事だと思っている。
アルダンさん、良い助言をありがとう。