八幡side
八幡「………」
スイート「何だかとても疲れた顔をしているわね?何かあったの?」
八幡「っ!いえ、お気になされる程の事でも無いんですけど……簡単に言うと極度に懐かれた大型犬に絡まれてましてね、その相手をずっとしていたものなので。」
スイート「それは大変だったわね……それで、その大型犬はもう大丈夫なの?」
八幡「大丈夫……かどうかは分かりませんが、今日のところは大丈夫だと思いたいです。」
スイート「不安になる答えね……」
仕方ないでしょう、来るなと断ったとしても絶対に目の前に居そうな奴なんですから。
実況『注目の1番人気は8枠17番、大外のシンボリルドルフ!』
解説『前走が宝塚記念からのぶっつけ本番となりますが、宝塚記念と同じで調子はかなり良さそうですね。今回は大外枠からのスタートとなりますが、どのようにレースを構築していくかが勝利の鍵になりそうですね。』
八幡「………」
うん、確かに調子は良いみたいだ。さっきの小運動でも確認したが問題は無さそうだ。きっと問題があるとすれば………
スピード「他のライバル達の動きが気になるところだな。」
八幡「……はい。」
スピード「天皇賞・秋は東京芝2,000mのGⅠレース……ここまでは何の問題も無いが、スタートしてすぐに2コーナーを回る事になる故に位置を早めに取りに行かなければ、最初のコーナーで大きなロスとなる。君の事だ、その事はルドルフに伝えているのだろう?」
八幡「はい。最初の内に楽なポジションは確保しておきたいところですからね。」
スイート「では比企谷さんの想定では、インを突いての直線勝負という事かしら?」
八幡「ちょっとだけ違いますね。俺は最終コーナーを抜け出してからの直線勝負を指示しました。」
スピード「ほう……理由を聞いてもいいかな?」
八幡「ルドルフにも言いましたが、天皇賞の次はジャパンCです。同じ東京で開催されるとはいえ、異なる条件が多いですからね。今のルドルフの状態を知る為にも直線だけで使える脚がどの程度なのか知っておきたい、これが理由です。本来であれば前哨戦でそれを知っておくべきなのでしょうけど、京都大賞典はそもそも違うレース場で毎日王冠はマイル戦……どちらも不安の残るレースだったのでぶっつけ本番で見る事にしました。」
スイート「随分と思い切った作戦ね。」
八幡「自覚はしています。もしこれで負けでもしたら俺の采配ミスとしか言い様がありませんからね。けど、それで次のレースに勝てるのなら構いません。天皇賞春秋連覇は逃しちゃいますけどね。」
スピード「だが君は負けるつもりなんて無いんだろう?」
八幡「勿論。俺もルドルフも負けるつもりでこの場に来ているわけではありませんから。」
ーーー控え室ーーー
八幡「作戦は今朝伝えた通りだ、前目の先行で直線になったらスパートだ。」
ルドルフ「あぁ、最高の走りを見せよう。」
八幡「その意気だ。それじゃあ「八幡君。」…ん?何だ?」
ルドルフ「レース後のアレも忘れてはいないな?」
八幡「分かってるよ。分かってると思うがそれのせいで浮かれるなよ?」
ルドルフ「心配ご無用。レースで気を抜いたりはしないさ……それに、負けるわけにはいかないからね。秋の初戦、これを獲らずして秋の3冠はあり得ない……必ず掴み獲ってみせるさ。」
八幡「よし、じゃあ行ってこい。」
ルドルフ「あぁ!」
ーーー観覧席ーーー
今日のレース、もし逃げのスズマッハがハイペースで逃げたらルドルフにはちょっと苦しい展開になるな……後ろのウマ娘達からの圧を感じながら走る事になる上に天皇賞はマイルから中距離を得意とするウマ娘が集まりやすい。夏合宿で鍛えたとはいえ、本当のスピード勝負になったら少し苦しいな………
八幡「逃げのウマ娘と最後の直線勝負次第、か……」
ガッコン!!
……っ!スズマッハとリキサンパワーの2人の逃げ。しかもスズマッハがつられるように逃げてる、マズいな。ルドルフは………先行の5〜6番手辺りか。まぁまだ良い位置に居るみたいだな。大逃げじゃないだけまだマシか。
スピード「あまり望んだ展開にはならなかったね。さて、ルドルフはここからどんな風にレースを展開するのか……」
八幡「………」
展開としては先頭2人が少し飛ばしていて、それ以外の15人は団子のような感じだった。ルドルフは前に居るワカオライデンの後ろにピッタリ張り付いている。これなら………
実況『向正面中間で先頭はリキサンパワーに代わってリードは4バ身!2番手にはスズマッハ2番手で3番手にワカオライデン!その後ろウィンザーノットとシンボリルドルフが並んで4〜5番手!これから3コーナーに向かう所で1,000m通過は59秒で通過していますっ!』
スイート「……母上はこのレースをどう見ますか?」
スピード「少々難しいかもしれないな。ルドルフが直線だけで他のウマ娘達を凌ぎ切れるかどうかだな。」
スイート「やはり同じ考えですか……比企谷さんはどう思われますか?」
八幡「………勝ちます。」
「「え?」」
八幡「勝ちますよ、ルドルフなら。」
実況『第4コーナーを曲がって直線コースに向きましたっ!先頭争いは横一線だが、シンボリルドルフ楽な手応えで先頭に立った!!シンボリルドルフが既に先頭に立っている!!その後ろからウィンザーノットと大外からギャロップダイナが良い脚で追い込んで来ている!!しかし1人抜け出したシンボリルドルフ、3バ身のリード!!ギャロップダイナが1人追い込んで来ている!!どうだ間に合うか!?差し切れるか!?ギリギリ届かないっ!!シンボリルドルフ半バ身のリードでゴールイン!!史上初、天皇賞春秋連覇達成!!このウマ娘、未だ敗北を知らず!!最高連勝記録またも更新!!』
ルドルフさん、今回は辛勝でしたね。