スピードside
京都に到着し、夜が明けて日曜日となった。京都レース場ではGⅠ、エリザベス女王杯の開催当日となっている。私もURA副会長としてレースの観戦をするつもりでいる。当然、八幡君とルドルフも我々の席で観戦してもらうつもりだ。だがその前に私は八幡君の祖母、クリフジさんの墓前で挨拶をする予定となっている。夢の中で会っているとはいえ、現世での邂逅は叶っていない。ならば今を生きるウマ娘として本人にもご挨拶に伺いたい。
スピード「ところで八幡君、我々は今何処へ向かっているんだい?こちらの方向にあるのは確か、商店街だったと思うが?」
八幡「はい、その商店街に行きます。」
スピード「君の用事かい?」
八幡「いえ。祖母の墓前に花とか色々供えようと思っているだけです。この前の駿大祭で舞を踊りましたが、祖母に頼まれなかったら今も中途半端に続けていただけかもしれませんので。それに……あれだけの人に喜んでもらえたって事は婆ちゃんの舞ってのは本当に人々の記憶に残る良い舞だったんだなって感銘も受けました。死んで尚ここまでしてくれたせめてものお礼ってだけです。」
ルドルフ「そうだったか……でしたら祖母上、いかがでしょう?我々も見て回って良い物をお供えするというのは。」
スピード「そうだな、我々もお供え物を選ぼう。」
商店街に到着した我々はクリフジさんに向けたお供え物を吟味して回った。八幡君にクリフジさんの好物を聞いて良さそうな品を購入した。私も毎年のお盆には先代達の墓標に手を合わせ花を添えた事は多々あるが、このように供え物を吟味した事はあまり記憶に無い……この機会に自身で供え物を吟味するのも良いかもしれないな。
ーーー花屋ーーー
八幡「おはようございます、店主さんは居ますか?」
「おぉ、クリちゃんのお孫さん!春の天皇賞以来やろか?」
八幡「えぇ、今年2回目です。」
「そかそか!ほんなら待っとってな、今すぐ用意するから!」
スピード「八幡君、このお店は?」
八幡「俺が懇意にしている花屋です。この辺りで1番品揃えが良いのと、祖母のファンだという人が経営をしているんです。自分はお金は払うと言ってるんですけど、祖母から一生分の代金を貰ってるからと言って受け取ってもらえないんです。」
スピード「ほう、そんな方々が………」
「はい、コレいつものね!クリちゃんによろしくなっ!」
八幡「ありがとうございます。それと、やっぱり代金は受け取ってはもらえないんですよね?」
「あぁ~あかんあかん!クリちゃんのお孫さんにそないな事させられん!ええから受け取っておくれ、な?」
八幡「はい、ではお言葉に甘えます。」
八幡君の言った通りだな……しかし何故だろう、この店主の目からは悲しみの感情が感じられる。
ーーー藤森神社ーーー
ルドルフ「やはり、参拝しているウマ娘は多いようですね。」
スピード「あぁ、我々ウマ娘にとっては縁深い場所だからね。私も現役時代の頃はこの場所によく脚を運んだものだ。」
「あっ、会長!会長も参拝ですか?」
ルドルフ「いいや、所用があって立ち寄らせてもらっているんだ。君は参拝後かな?」
「はい、次のレースに勝てますようにってお祈りと絵マを描いたんです!」
ルドルフ「そうか、良い心掛けだ。では君のレースを楽しみにしているよ。」
「はいっ!では失礼します!」
ルドルフ、随分と慕われているようだ。前までは『生徒達との距離感と友好を深められないか模索しています。』っと言っていた時期が懐かしいな……
神主「おぉ、比企谷さん。先日はとても綺麗な舞でした。今日はお参りですか?」
八幡「ご無沙汰しています、来る機会が出来ましたので手を合わせようと思って。」
神主「クリフジさんもお喜びになる事でしょう。邪魔してはいけませんので、私は失礼しますね。」
八幡「邪魔にはなりませんよ、絶対。」
ーーークリフジの墓前ーーー
八幡「半年ぶり……っていうか夢の中で会ったと思うけど、こっちの世界では半年ぶりだよな。約束通り、今日はお供え物たくさん持ってきたから。それと、知ってるだろうけどルドルフとスピードさんも一緒だ。」
ルドルフ「半年ぶりでございます、クリフジ殿。この度は貴女がかつて踊ったとされる奉納舞を受け継ぐ事が出来て、とても嬉しく思っています。若輩ながらこれからも精進して参ります。」
スピード「先日はとても貴重なお時間をいただきました事、大変感謝しています。この度改めまして、ご挨拶に伺いました。」
八幡君は墓石の掃除に取り掛かり、私達も彼の見様見真似でお手伝いをさせてもらった。八幡君は今の若者の類では珍しいであろう、隅々まで綺麗に掃除をしていた。きっと少しの汚れも彼は見逃さないだろう。そして掃除が終わった後は線香を立てて手を合わせた……私達は数秒で目を開いたが八幡君は長い時間手を合わせていた。
ーーー数分後ーーー
八幡「すみません、長く手を合わせてしまって。」
ルドルフ「いいや、相手は君の祖母なのだ。邪魔をする程、私も祖母上も無粋では無い。」
スピード「ルドルフの言う通りだよ八幡君、君とクリフジさんは我々が思っていた以上に特別な関係だとこの場で再認識したよ。」
……暇があれば、先代達の墓前に手を合わせに行こうか。
お参り出来て良かった良かった。
それと、花屋さんの大伯父さんも久しぶりの登場。