八幡side
カフェと契約してトレーニングを開始してからちょうど1週間が経過した。まだ始まったばかりの担当同士だが、割と仲良くやれている方だとは思っている。カフェとのコミュニケーションもそうだが、1番はお友達の存在と言っても過言では無い。俺とカフェだけが見えているお友達、よく3人で話をする事があるのだが、必ずお友達が途中から思い出したかのように俺の頭に乗ってはアホ毛を引っ張ったり、おかしな事をしてはケラケラ笑ったりしているから空気が和むと言って良い。
トレーニングも順調で、コース場にはカフェと併走してくれる【彼女達】が居るのだが、その子達のおかげで想定していた以上にカフェの成長には実りが多くなっているのだ。何かお礼をしてあげたいという気持ちはあるのだが、相手は霊体……何をすれば満足いくのかなんてサッパリだ。
んで話を戻すとだ、カフェが自分から言ってくれた爪の問題もほぼ解消と言って良いくらい問題は起きていない。今のままの状態なら順調にトレーニングを行える。だがそろそろ、霊体達以外とのトレーニングも入れるべきだと考えている。いかに相手を意識出来るトレーニングを組み込んでいるとはいえ相手は生きていない、限界はある。カフェと走ってくれる相手を探そうと思う。
んで今日はトレーニングを休みにして自由に過ごせる日としている。カフェにも今日は羽を伸ばして欲しいと思っている。
八幡「………」
ジャ~……
んで俺は最近コーヒーを作る機会が多かったから、カフェテリアの器具を借りて紅茶を淹れている。どちらかと言えば、俺は紅茶派だから偶に飲みたくなる。コーヒーは………微糖じゃないとまだ受け付けない。
タキオン「おやおや、確か君はカフェのトレーナー君だったかな?」
八幡「?そういうお前は……科学者?」
タキオン「そうとも言うねぇ~。では改めて自己紹介といこうじゃないか、私はアグネスタキオン。よろしく頼むよトレーナー君?」
八幡「何をよろしくすればいいのか分からないから、よろしくは言わないでおこう。」
タキオン「そう警戒しないでおくれよ、別に取って食べたりするわけではないのだから。」
八幡「自分を科学者と肯定した時点で説得力無いぞ?」
タキオン「クククッ………それもそうかもしれないねぇ~!」
お友達が言う科学者はコイツで間違い無いだろう……カフェのコレクションを変な光を出すようにしてしまって、研究資料を燃やされて泣いたという張本人だろう。
タキオン「何やら失礼な事を考えてはいないかい?」
八幡「気のせい気のせいそんなわけ無いだろ。」
タキオン「……まぁいい。ところで、それは君が淹れた紅茶かい?」
八幡「?あぁそうだが?」
タキオン「ちょうど喉を潤したいと思っていたところなんだ、1杯いただくよ。」
アグネスタキオンはそう言うと慣れた手つきで紅茶を淹れ始めた。どうやら紅茶はよく飲むらしいな。
タキオン「……ほう、美味しいじゃないか。君、中々淹れるのが上手いようだねぇ。」
八幡「別に上手いと思った事はねぇよ。回数こなせばそれなりに出来るようになるもんだろ。」
タキオン「その口ぶりから察するに、君は紅茶の淹れ方だけでなく料理にも似たような概念を持っている、っという解釈をしても構わないね?」
八幡「そんなの一般論だろ、誰だって練習重ねれば上手くなるだろ。」
タキオン「ところが!人には才能というものがあるっ!それには限度があると思うのだが、それについてはどう思う?」
八幡「……確かに才能面で優劣をつけられる部分もあるだろう。この学園だって競走社会だから似たようなもんだしな。速い奴が強い、それが節理だ。」
タキオン「……そうか、よくw「だがそれもまた一般論だ。」………何?」
八幡「人の多くはこう片付ける奴が居る、『やっぱり才能がある。』ってな。だがそれはソイツの表面しか見ていない、裏面を知らない奴が言う事だ。何故それだけの実力を身に付けられたか、何故あれだけのパフォーマンスを披露出来たのか、何故それだけ上手に出来るようになったのか……答えは簡単だ、ソイツの努力が人の努力よりも何十、何百倍も上だったってだけの話だ。」
タキオン「………」
八幡「例え話をする。天才っていうのは生まれつきで備えられた優れた才能の事を指す。それを羨む奴なんてごまんと居るだろう。けどその天才は2つの種類があると俺は思ってる。」
タキオン「ほう?興味深いねぇ~……その種類は?」
八幡「傲慢と努力。」
タキオン「傲慢……努力……」
八幡「傲慢な天才ってのは生まれついての才能がある奴の事だ。全員がそうだと言うつもりは毛頭無いが、人よりもこの分野において負けるわけが無い、そう思い込んでいるような奴だ。それともう1つの努力の天才はごく普通の一般人が何十何百何千何万と努力を重ね続けた奴の事だ。例えばその2人が直接戦ったとする、当然最初は前者が勝つ、それから何十何百と勝負をしても傲慢の連戦連勝。だがある時、2人の差がみるみる縮まって並びそうになるまでに至る。そして初めて努力の天才が傲慢の天才の勝てた……傲慢は『まぐれだろ。』と思いながらそれ以降数回は挑んだが負け続けだった。それ以降、傲慢の天才は勝負するのをやめてしまった。この2人の差は何だと思う?」
タキオン「君の言う努力の天才が傲慢の天才を上回った、それだけの事だろう?」
八幡「表面だけ見るとその通りだ。だが今ので重要なのは負け続けたっていうのが1番のキーポイントだ。努力の天才と傲慢の天才は互いに何回負けたと思う?」
タキオン「……っ!」
八幡「分かったみたいだな。努力は傲慢に何百と負けているのに傲慢はたったの数回、これだけでもどちらの方が努力しているかなんて容易に分かる。努力は何度も何度も折れそうになったり、挫けそうにもなったにも関わらず諦めなかった。一方傲慢は数回の敗北で自身のプライドともいうべきものを粉々にされて諦めた。2つの天才には乗り越えてきた場数が違っていた、という結末にも辿り着く。そして初めて努力の天才はこう口にする、『日々の努力が報われました。』ってな。」
タキオン「………」
八幡「レースも紅茶も料理だって全て同じだ。同じ土俵でも最後に笑っているのはいつだって努力している奴だと俺は思うぞ。」
………っ!!なんかめっちゃ喋っちまった!なんかすげぇ恥ずかしいんだがっ!?
八幡「んんっ!話過ぎたがそういうわけだ。俺の淹れた紅茶は誰かと比べたわけじゃないが、何回も上手くなるように何度も淹れて努力した結果が今のこれだってだけの話だ。一応言っておくが傲慢が努力に劣ってるって言ってるわけじゃないからな?傲慢だって場合によっては努力に染まる場合だってある……知らんけど。」
タキオン「………成る程、確かに私の研究も今に始まった事では無い。そう考えると君の情熱的な説はある意味正しいのかもしれないねぇ。」
八幡「やめろ、熱くなり過ぎただけだ。舌が回り過ぎた。」
タキオン「そう謙遜する事でも無いだろう?そうだろう、生徒会長?」
八幡「は?」
ルドルフ「あぁ、とても参考になる話を聞かせてもらったよ。私も傲慢の天才ではなく、努力の天才となるようこれからも精進する事にしよう。それと君の言葉を一部抜粋して校内の掲示板に飾ろうと思うのだが、構わないかな?」
八幡「……俺の名前を出すなよ?」
ルドルフ「本人の希望では仕方ないね。」
その後、俺の言葉が校内の掲示板に貼られていたのだが、聞いていたウマ娘がそれなりに居たからか、俺だっていうのが瞬く間に広まってしまったのは別の話である。
因みに抜粋されたのは『努力の天才。一般的な者が何十何百何千何万と努力を積み重ね続けた者の事。皆もこの天才を目指すように。』という一文だった。
八幡、珍しく雄弁!