八幡side
まさかタキオンを凌ぎ切るとは思ってなかったから、これはちょっと予想外だった。カフェの走り……3コーナー辺りで加速していたんだが、遠心力の影響をまるで受けていなかったかのようなコーナリングだった。最終直線も最後まで走り切っていたし満足の行く内容だと言える。お友達を追い越すまであともう少しってところだったが、抜けなかった。だがそれを抜きにしても充分な結果だ。
だが俺はそれ以前にさっきのレースで気になっている事があった、それは………
八幡「……おい、ちょっといいか?」
同期3「ん?何だ比企谷かよ、優勝おめでとう……んで何しに来たんだよ、笑いにでも来たのかよ?」
八幡「んなわけねぇだろ。そんな事よりも先輩1は何処だ?話がある。」
同期3「先輩なら控え室に行ってるぜ、アグネスタキオンと反省会だとよ。アイツに反省会なんて無駄だってのによ。」
八幡「そうかよ……ところで、お前タキオンのあの走りを見てどう思った?」
同期3「何だよ突然……まぁ素質があるって言われてるだけはあるって感じだったな。負けちまったけど、次の皐月賞では最後の直線で差し切れんだろ。」
ダメだ、コイツさっきの走りを見ておきながらまるで理解してねぇ………あの走りは確実に自分の脚を壊すぞ?それこそ競走能力喪失レベルだ、そんな事になったら後戻りは出来ないんだぞ?
八幡「………お前、一体何見てたんだよ。」
同期3「はぁ!?何だきゅっておいっ!!」
ーーー地下バ道ーーー
カフェ「あ、トレーナーさん……」
八幡「カフェ、よくやったな。」
カフェ「……それにしては何だか、表情が固いです。何かあったんですか?」
八幡「あぁ、ちょっとな……カフェは先に控え室に戻っていてくれ。」
カフェ「分かりました。」
……さて。
コンコンコンッ
先輩1『誰だ?』
八幡「比企谷です、少しいいですか?」
先輩1『比企谷?………入れ。』
八幡「失礼します……」
先輩1「何の用だ比企谷、自慢でもしに来たか?」
八幡「そんなのこれっぽっちも欲しくありませんよ。そんな事よりも……タキオン、あの走りは何だ?」
タキオン「はて、何の事だい?」
八幡「惚けるな、自分の事ならお前が1番よく知ってる筈だ。先輩1、貴方もです。」
先輩1「……何の事かサッパリ分からないんだが?」
八幡「……ならタキオン、お前に質問する。お前、あの走りを次もやるつもりか?」
タキオン「だとしたら何だというんだい?君が口出しをする事じゃないと思うんだけどねぇ?」
八幡「あぁ、確かにそうだ。だがトレーナーとして見過ごせない走りだ……あの走り、もし次もするつもりでいるのなら………お前の選手生命は皐月賞で最後になる可能性が高いぞ。」
先輩1「何っ!?」
タキオン「ほう、興味深いじゃないか……どうしてそんな事が言えるんだい?」
八幡「……あの走りはお前の脚の限界を明らかに超えていた。その証拠にお前の脚は今も震えているままだ。心肺機能は問題無かったとしても、お前の脚の機能はギリギリ保てているような状態だ。きっと次は無いぞ……」
タキオン「ふむ……君の言い分は理解したよ。だが途中で投げ出す気はさらさら無いのだよ。ウマ娘の限界、私はそれが知りたいのだからね。」
八幡「それが自分の脚を破壊する事になったとしても、同じ事が言えるか?」
タキオン「実験に失敗は付き物……君も1度くらいは聞いた事あるだろう?それと同じさ。」
何を言っても答えは変わらない、か……
八幡「………分かった、一トレーナーからの警告と受け取ってくれ。先輩1も……タキオンをよく見ておく事を進言しますよ。後になってからじゃ何もかも遅いですからね。」
言う事を言った俺は、カフェの控え室に向かう事にした。入った時には心配されたが、向こうの事にあれこれ口出しする事じゃないしな。
「では、インタビューを開始します!見事、今年の弥生賞を制しましたマンハッタンカフェさんです!おめでとうございます!」
カフェ「ありがとう、ございます……」
「勝利確実とまで言われていたアグネスタキオンさんを下しての勝利ですが、ご気分いかがですか?」
カフェ「……彼女を意識していませんでしたが、勝てたのは良かったと思っています。」
「レースではどのあたりを意識しましたか?」
カフェ「3〜4コーナーを意識しました。速度を上げながら前に行く事が出来たので、この走りをもっと磨きます……」
「つぎはいよいよ皐月賞、力が入りますね。」
カフェ「………皐月賞には、出ません。」
「「「「「えっ!!!?」」」」」
騒然、といった感じだな。まぁそれもそうだろう、1着を獲って優先出走権を得たのに出ないんだからな。
八幡「その件に関しては自分からご説明します。」
「で、では…お願いします。」
八幡「この弥生賞に出走を決めたのは本人の意思は勿論ですが、今の実力をしっかりと確認する為です。結果は言うまでもなく満足の行く結果でした。しかし、彼女の素質を考えると2,000m………中距離は短過ぎる、自分個人の見解ではそう思っています。なのでカフェの本番は秋の菊花賞とし、このレースは彼女の実力を測る為に出走しました。」
「し、しかし……マンハッタンカフェさんなら良い結果を残せるのではありませんか?」
八幡「確かに今日の走りならばそう思えるでしょう。ですが、良い結果で終わってしまっては意味がありません。ウマ娘達、というよりも現役の彼女達が最も欲しているものは勝利なのですから。それを考えるならば、カフェが最も得意とする長距離の舞台でそれを披露したいと思っています。」
それからも色々と質問をされた。だがどれも予想していた質問だったからすぐに答えられた。しかしホントに驚いたのも事実だ。だってタキオンを凌ぎ切るんだもんなぁ………いや、ちゃんと結果は出すと思っていたんだけどな?それがまさか1着とは思わなかったから。
八幡だったらやっぱり止めに行くでしょうね。
カフェの皐月賞回避には、皆さん驚いてましたね。