カフェside
……本日は晴天。バ場のコンディションも良く、とても良いレース日和でしょう。本日はクラシック3冠路線の最初のレース、皐月賞の開催日です。最も速いウマ娘が勝つと言われているこのレース……1番可能性があるのはタキオンさんですが、ポッケさんも自信があるご様子。
カフェ「……八幡さん、何だか心此処に在らずという表情ですが、何かあったのですか?」
八幡「………まぁな。」
カフェ「……それは、他人には言いづらい事……なのですか?」
八幡「言いづらい……のかもしれないな。他のウマ娘の事だからな。ましてや今日走る奴の事だから尚の事言いづらい。」
カフェ「………教えてもらっても、いいですか?」
八幡「………」
カフェ「大丈夫です、誰にも言いませんので。」
八幡「………この前の弥生賞、覚えてるか?」
カフェ「……はい。」
八幡「その時のタキオンの走り、お前に迫る勢いだった。素人の目線からすればとてつもない脚を使っていたという評価だろう。だがその裏では、自身の選手生命を危ぶむ程の危険な走り方をしていたんだよ。」
カフェ「……タキオンさんが。」
八幡「あぁ。だから俺はタキオンにその事を伝えたんだが、受け入れてもらえなくてな。恐らく今日もあの無茶苦茶な走りをするんじゃないかって懸念をしててな……」
カフェ「そんな走りをしていたんですね。」
八幡「だから今日の内容次第だが、アイツは2度とこの舞台に戻ってこないかもしれない。」
カフェ「っ!………それ程の、走りを?」
八幡「……もっと言えば、アレはまだ序の口だったのかもしれないな。今日でどうなるのか……」
……八幡さんの目は、とても心配しているような感情が見て取れました。表情は真剣そのものですが、目には不安が大きく写っていました。他の担当のウマ娘でもそんな表情が出来るんですね、トレーナーさんは。
先輩1「よぉ比企谷、今日は見物のようだな?」
八幡「……どうも。タキオンの調子はどうです?」
先輩1「あぁ、最後に見た時はかなり仕上がってたぞ。調子も上向きだから、こりゃ皐月はいただきって感じだな。」
八幡「………そうですか。それで、トレーニングはどうだったんです?」
先輩1「それがアイツ、効率的なトレーニングじゃないと受けてくれなくてな〜。だから調整とか追い切りも全てアイツの組んだメニューでやってた。まぁ結果的には良い状態になったから文句はねぇけどな。」
八幡(それはトレーナーとしてどうなんだよ。少しでも自分のを押し通せよ。)
八幡「……じゃあ今日のレース、何も起きずに終われる……そう捉えていいですよね?」
先輩1「まさかお前、この前の弥生賞の事を言ってるのか?あんなのはお前の言いがかりだろう?それにたかが新人のお前の言う事を信じると思うか?こっちは10年以上の経験があるんだぞ?経験も場数も違うんだよ。」
同期3「先輩1の言う通りだぞ比企谷!この前タキオンに勝てたからってあんまり調子に乗るなよ!」
八幡「……何もない事を祈ります、行くぞカフェ。」
カフェ「……はい。」
あの人達がタキオンさんの……恐らく、利害関係だけで契約している。そんな気がします。それに八幡さん、何だか………怒っているような、そんな顔になっています。
カフェ「………八幡さん、大丈夫ですか?」
八幡「……あぁ、流石にあの物言いは腹が立ったな。トレーナーとしての自覚も何もあったもんじゃない。」
カフェ「………」
八幡「とりあえず見える場所に行くか。」
そして私と八幡さんはレースが見える所へと移動して、観戦する事にしました。そして………
実況『さぁ、いよいよ始まります皐月賞!今年の本命は昨年のホープフルSの優勝者アグネスタキオン!前走は惜しくも2着に敗れましたが、今度こそはと言わんばかりの仕上がりです!対するは共同通信杯からの本レースに参戦、ジャングルポケット!ホープフルSでは涙を飲みましたが、クラシックの舞台では負けられないっ!さぁ全員がゲートに入った!いよいよ始まります、今年の最速王者は誰だ!?』
ガッコン!!
実況『スタートしましたっ!!』
タキオンさんは予想通り先行……ポッケさんはスタートの影響で後ろになりました。
カフェ「………」
八幡「………」
実況『さぁこれから3コーナーのカーブに行きますが、後ろからジャングルポケットとダンツフレームが並びながら前へ前へと徐々に上がって来ている!!更にはボーンキングも上がって来た!さぁアグネスタキオンはどの位置から仕掛ける!?いや、もう仕掛けているのか!?4コーナーから直前コースへと向きました!!』
タキオン「さぁ、とくとご覧あれ………」
ズサァ!!!
八幡「っ!アイツ………」
カフェ「っ!八幡さん?」
八幡「アイツ、弥生賞の時よりも更に負荷の強い脚を使ってやがる……あんな走りをした後、どうなってるのか俺にも想像がつかねぇ………」
実況『アグネス先頭アグネス先頭!!後ろからはダンツも来ているが、これはもう大丈夫!!中山2,000m、まずは繋ぎました!!』
タキオン「はぁ……はぁ……はぁ……」フルフル
八幡「………」
カフェ「あの、八幡さん……タキオンさんは?」
八幡「……此処からじゃ分からない。だがあんな走りをした後だ、無事で済んでるわけがない。とりあえず、俺達はいつも通りにするだけだ。」
カフェ「……そう、ですね。」
そして皐月賞から1日経った翌日、タキオンさんは緊急会見を開きました。その内容は………レースへの無期限停止という内容でした。
史実ではこの時点で引退………ホント、これだけの走りが出来るのにどうしてって思ってしまいますね。