カフェside
……今日の午前授業も終わりを迎えて、お昼休みの時間となりました。私はこの時間、いつもカフェテリアに行くのが楽しみになっています……理由は気恥ずかしいので口に出しては言えませんが、八幡さんと会えるから……です。ですが今日はオルフェーヴルさんとドリームジャーニーさんも同席するみたいです。何でも、今日渡したお菓子を一緒に食べる事になったみたいなのです。それも、驚いた事にオルフェーヴルさんのご提案なのだとか。
カフェ「八幡さん、今日はどんなお菓子をオルフェーヴルさんに差し上げたのでしょうか?」
ジャーニー「オルがどうかしたのですか?」
カフェ「っ!ドリームジャーニーさん……」
ジャーニー「ジャーニーで構いませんよ。それだと長いでしょう?それで、オルがどうかしましたか?」
カフェ「いえ……今日の昼食、オルフェーヴルさんが八幡さんをお誘いしたと聞きましたので、どんなお菓子を作ったのかと思いまして。」
ジャーニー「あぁ、それで………実のところ私にもどんなお菓子なのか教えてくれなくてですね、お昼時間が少々楽しみだったのですよ。しかし、トレーナーさんとのお時間を奪うような形となってしまってすみません。」
カフェ「い、いえ……気にしていませんので。」
ジャーニー「寛大な心に感謝します。時間が無くなっては困りますし、歩きながらお話しましょうか。」
……不思議な雰囲気の方です。オルフェーヴルさんと姉妹とは思えないくらい落ち着きがあるのに、彼女の瞳の奥にはオルフェーヴルさんと同じ、狂気に満ちた何かを感じます……
ーーーカフェテリアーーー
カフェ「では、私はこちらの席で待っています。」
ジャーニー「ありがとうございます……私は自分の昼食を頼んできますね。」
八幡さんは………調理中でしょうか?此処からだと遠過ぎて見えませんね。でも、きっと調理の最中だと思います。
オルフェ「此処が余の卓か?」
カフェ「……はい、そうです。ジャーニーさんは昼食を頼んでいますので、お好きな席へどうぞ。」
オルフェ「うむ、苦しゅうない。」
……オルフェーヴルさんが珍しくご持参したあの紙袋、きっとアレの中身が八幡さんの作ったお菓子なのでしょう。どんな物を作ったのでしょう?
ジャーニー「おや、来ていたのかいオル。」
オルフェ「姉上か……」
ジャーニー「今日の昼食はこれで良かったかな?トレーナーさんからいただいたソレが気になっているみたいだから、あまり量が多く無いのを頼んでおいたよ。」
オルフェ「構わん、充分だ。」
八幡「おっ、もう既に集まってたか。」
ジャーニー「えぇ、たった今。」
八幡「そうか。カフェはお待ちどうさん、注文のオムライスな。」
カフェ「ありがとうございます、八幡さん。」
ジャーニー「では、これで全員揃った事ですし、いただきましょう。」
八幡さんが席に着いたタイミングで号令と同時に食事が始まりましたが、どうにも落ち着きませんでした……周りからの視線があるからです。きっと、オルフェーヴルさんが原因だと思われます……私は普段、オルフェーヴルさんがカフェテリアで食事をしているところを見た事がありません。なので皆さんはオルフェーヴルさんがカフェテリアで食事をしている事に驚きを隠せないのでしょう……
ジャーニー「そういえばトレーナーさん、カフェさんの次のレースは宝塚記念でしたね。調整は如何ですか?上手くいっていますか?」
八幡「それについては今のところ問題無い。宝塚記念は問題無く調整出来そうだが、問題はその後だな。」
カフェ「後……と言いますと?」
八幡「……カフェに合うレースが無い。最低限で有マ記念くらいだ。これは俺のミスでもあるが、カフェには左回りのレースの経験が殆ど無い。デビュー戦以外全て右回りのレースだ。トレーニングを積めばその辺は何とかなるとは思うんだが、これからの秋の殆どがマイルと中距離がメインだ。長距離がメインのカフェには少し厳し過ぎる。」
ジャーニー「成る程……トレーナーさんはどうお考えなのですか?」
八幡「他のトレーナーから勧められたんだが、オーストラリアのメルボルンCはどうだって話はされた。」
ジャーニー「フレミントンレース場で行われる芝3,200mの長距離レースですね。」
八幡「あぁ、カフェにとってはもってこいの舞台ではあるが、問題は海外になるから長距離の遠征になるって部分だ。カフェはあまり身体が強い方じゃない、爪はジュニアの頃に克服したが、身体までは分からないからな。」
ジャーニー「トレーナーさんの懸念も理解出来ます。でしたら、1度医者に診てもらってはいかがでしょうか?カフェさんの身体が遠征に耐えられるかどうか、確認してから決断しても遅くはないかと。」
八幡「……そうだな。まぁでも今のは勧められただけだから決定したわけじゃない。カフェにも走りたいレースがあると思うし、遠征については今後話し合う事にする。わざわざありがとうな。」
ジャーニー「いえ、オルから聞きました。今日の朝の件のお礼だと思ってください。妹を助けてくださって、ありがとうございます。」
ーーー数十分後ーーー
八幡「食い終わったな。じゃあカフェ、食器片付ける。小皿も用意するから。」
オルフェ「………」
ジャーニー「オル、中身を見せてくれないか?私もずっと気になっているんだ。」
オルフェ「比企谷はルーローショコラと言っていた。ロールケーキに似ているが少し違うと……」
ジャーニー「興味深いね。」
カフェ「………」
オルフェーヴルさんが紙袋から中身を取り出しました。現れたのは筒状のケーキのような、本当にロールケーキのような形をしていますが、全体にチョコがコーティングされていて、満たされた食欲を更に掻き立てられるような見た目をしています。
オルフェ「………」
ジャーニー「コレが、ルーローショコラ……」
八幡「おっ、開けてくれたみたいだな。」
オルフェ「比企谷、切り分けよ。」
ジャーニー「ふふふっ、どうやらオルが待ち切れなくなっているみたいです。」
八幡「らしいな。俺も少しだがオルフェの事が理解出来てきた。」
八幡さんが持ってきたナイフで切り分けると断面も美しく、綺麗な丸を描きながらクリームとスポンジが巻かれています……きっと、作るのに苦労した事でしょう。
八幡「じゃあ、食べてくれ。今日のデザートだ。」
ジャーニー「では、いただきます。」
カフェ「いただきます。」
オルフェ「………」
その後、私達はルーローショコラを食べ終わりました。その時オルフェーヴルさんが
オルフェ『比企谷、王命である……週に1度、この菓子を作って参れ。』
っと言って去って行きました。ジャーニーさんによれば、オルフェーヴルさんのあれは本当に気に入ったという意味らしいです……それにしても、今日もあの人の視線は鋭かったです。
オルフェ様、遂にお気に入りのお菓子を見つけたご様子。