ウマ娘 ワールドダービーDLCカサマツ編 東海ダービーレギュレーション 作:ウママママ
作者は原案出た時に脳破壊されていました)
中央のレースであればGI、このカサマツの地であればSPI。
それらのレースに出る際、着用しなければならないコスチューム。それが勝負服である。
と言っても、その勝負服は中央のソレと比べるとかなりシンプルである。
中央所属であれば、専属デザイナーにデザイン案を送り、複数回に渡ってそれを推敲。その後、採寸を図るといった工程が存在する。
このように段階的になっている上に、地方とは違って圧倒的な資金力がバックにあるのだから。金をかけられる分、かなり凝った勝負服を作ることができるというのが魅力である。
ただ、それと同等の提供を受けるための資金力がカサマツにあるかという話だが。
当然、専属デザイナーを雇えるほどの資金力は無い。勝負服デザイナーはいるにはいるが、生徒1人1人の対応に答えられるわけではない。トレーナーが専属契約を結べば中央並の勝負服を作ることも可能ではあるが、それもほぼ不可能に近い。
これらの理由も合わさって、地方の勝負服は専用勝負服と呼べるものではなく、強いて言うなら汎用勝負服に近いものになっている。
ベースとなる衣装と色を選び、ワンポイントで自分らしさとなる何かを加える。これが地方勝負服の基本であるが、やはり専属デザイナーがいない分多様性に乏しいのもあり、中央よりも映えないというのは否定できない事実である。
ただ、それはそれとして。自身が考えた勝負服を着用してSPIのレースに出るというのは、ウマ娘誰しもが持つ夢であるというのもれっきとした事実である。
全ての勝負服に製作者の想いが込められ、強い覚悟と夢が結晶となってできているのだから。それは海堂も、フジマサマーチも同じであり。
────東海ダービーに出るんだったら考えなくちゃだ。もう3ヶ月前だし、そろそろ出しとかないと間に合わないよ?
────一応、考えてはいましたよ。どのような感じにするのかだけですが。
こんな会話を交わしたのも、スプリングCの2週間前────3月1日、東海ダービーまで100日を切るか切らないかの時であった。
それから1ヶ月と2、3週間前後の時が経過し、提出した原案が返ってきて。ここで確定をすれば、ここに描いてある勝負服と同じものが作られる。
その最終確認を、2人はトレーナー室で行っていた。
「いいんじゃない? 黒のカサマツの制服も似合ってるし、これならカッコよくて充分似合うと思うよ」
黒い学生服────それを細かく分類するならば、セーラー服を基調とした勝負服。
胸に紅色のスカーフを着用し、肩から二の腕にかけた部分には2つの紋章────カサマツトレセンの校章が付けられている物を、フジマサマーチはチョイスした。
奇しくも、このフジマサマーチが選んだ勝負服のデザインは、永遠のライバルとなるオグリキャップが着る勝負服と対比するようになるのだが。
そうなることは、2人はまだ知らない。
元々、フジマサマーチはモデル体型でもあり。その上、人目を引く美貌も持っている。
正直なところ、何を着せても似合う。ある程度美人であり、それに加えて、目がキリっとしているツリ目であるのだから。
ただ────それにしても、黒色が似合う。以前、お出かけをした時に見た白と赤を合わせた私服も似合っていたが、それ以上に黒色が似合う。
オグリキャップが白色であるならば、そのライバルのフジマサマーチは黒色が似合う、と。無意識に思っていたから、というのが理由であろう。
「まあ、強いて言うなら……何かワンポイントで欲しいかな。自分らしさが出るやつで」
どうしても汎用勝負服の域を脱せない以上、何かしらのワンポイントを加えて自分らしさを象徴するのが基本である。
例えば、制服をモチーフとした勝負服の一部にバッジを付け加える。腕に親譲りの赤いバンダナを巻いて、2世ウマ娘であることを象徴するなど。
レースを走る上で邪魔にならない範囲ならば、何をしてもいい。それがルールというか、資金面の都合あって、古くから受け継がれてきた風習であった。
黒のセーラーに赤色のスカーフ。フジマサマーチらしく上手く纏まってはいるが、やはりそれだと
やはり、顔も美形であるのだから。ライブでも映えるような目立つ勝負服を着用し、観客を虜にして欲しい。それが海堂の、1トレーナーとしての考えでもあった。
────そんなんだから、にぶトレーナーって呼ばれるんですよ。
どこかのウマドルが、そう漏らしてしまうほどにはにぶであったかもしれない。
「カッコいい、ですか」
「まぁ、勝負服ってなったらカワイイかカッコいいかの二択だからな。俺はどっちでも良いって思ってるけどさ」
「海堂トレーナーは、どっちが良いと思いますか? その……勝負服がカワイイか、カッコいいかで」
────なんか、いつもよりも攻めるな、と。
ポンコツトレーナー海堂真は、自身の愛バであるフジマサマーチが勇気を出してまでカワイイの路線に誘導しているのに、全く気づいてなかった。
カッコいいを軽く強調し、それを踏まえた上でどちらが良いかを尋ねる。
他のヒトミミなら普通にこなすであろう動作を、フジマサマーチは懸命にこなした。それは正しく″成長″と呼べるものであった。
ただ、にぶトレーナー筆頭の海堂真が、そんな真意を読み取れているわけがなく。
1人の男としての意見ではなく、1人の
「可愛くても、カッコよくても。どっちだったとしても似合うだろうって確信してるし、マーチの好きにしたらいいんじゃないかな」
やはり、越えられない。
越えられないというか、海堂が″1人の男性″ではなく″トレーナー″としての視点でいるからこそこうなっている。
これが同級生であったり、兄であったならば。恋する男のためにどうすれば良いかといった相談に、真摯に向き合っていただろう。海堂とて恋愛弱者ではなく、誕生日に花をプレゼントするほどのロマンチストであったのだから。
ただ、海堂はトレーナーであった。その上、君が選ぶものなら何だって似合うよと言ってしまうようなタチの悪いトレーナーであった。
期待にそぐわない反応であったからか、フジマサマーチの耳がぺたんと垂れる────かと思われていたのだが。
フジマサマーチは、必死にそれを押さえ込んだ。ウマ娘の耳は正直であるということを知っていたから、仮に何か言及されたとしても、何とか誤魔化せるラインに持って行けるように押さえていた。
────垂れていたならば、何かを察した海堂が視点を変えて言及していたかもしれなかった。
そう考えると、やはり恋愛弱者は恋愛弱者である。
「赤のスカーフも良いんだけど、もう1個あったら良いんじゃないか? 原案のほとんどはマーチに任せるから、俺はその部分を考えてみるよ」
「大丈夫ですよ。2人で考える方が良い物ができると思いますし」
フジマサマーチ″らしさ″とは。
それを考えるために、海堂は少しばかり考えに耽った。
(……マーチに似合うって言ったって、美人な以上何でも似合う気がするけど)
────それを口に出して言えよ。
海堂の思考を読み取れる人物がここにいたならば、おそらくそうツッコミを入れていただろう。
ただ、これは間違いなく本音である。
一般にぶトレーナーとして考えていた海堂であったが、やはり″何でも似合ってしまう″が、何がふさわしいかを阻害してしまうのだ。
これは自分の担当ウマ娘であるからという理由もあるだろうし、海堂自身も美人であると認識しているからであろうが。
何でも似合ってしまうが故に、一番似合う物が見つからない。
そんな苦難が海堂を襲い、結果────数分考え、海堂が出した結論は。
「レース場のどこを走っていても、マーチの姿が見えるように……スカーフの色をもっと派手な色に。赤というか、ピンク色にして欲しいんだ」
スカーフの色を変えるという、安直な発想で合った。
何かを追加して全体のバランスを崩すくらいならば、何も追加せずに既存の物を変えた方がいいのではないか、と。海堂はそう考えたのだ。
そもそも、必要な要素────カサマツトレセンの校章は揃っているのだから、フジマサマーチが強く追加要素を願わないのなら、何も追加しなくてもいいか、と。こうも考えたのである。
「それならカワイイも両立できるでしょ? 嫌なら断っててもいいけど……」
黒とピンクがどう似合うかはわからないが、ピンクは元の色の赤に近いのだから。おそらく、そこまで絶望的なセンスにはならないはずである。
制服型の勝負服を選ぶほとんどのウマ娘のスカーフの色が赤であるというのは、既にリサーチ済みである。
深紅の赤から、少し明るいピンク色に寄るだけでも見え方は変わる。そこに薄浅葱の髪色と高身長が加われば、まず走りを見落とすことはないのだ。
概ね、問題はない。
ただ、問題があるとすれば────海堂が、レース場のどこを走っていてもマーチの姿が見えるようにと言ってしまった点にあるのだが。
「結局はマーチが着るんだし。俺の今のはアドバイスの1つだと思ってくれていいから、自分で考えてみて」
「なら、それにしてみますね。あまり良い案が浮かばなかったので」
────こうなれば、断るはずがないのだ。
フジマサマーチは良い案が浮かばなかったと言っているが、これは半分嘘である。
確かに、あまり浮かばなかったのは事実である。ワンポイントとを追加するといっても、これに拘りたい! というのは存在しなかったのだから。
とりあえず、何か追加するとなれば黒いスラっとした手袋を付けてみようかなど、フジマサマーチは考えていたのだが。
────レース場のどこを走っていても、マーチの姿が見えるようにしてほしい。
こう言われてしまえば、そうするしかないのだ。
「了解。そうするように書いとくよ」
スカーフの色をピンクに寄せてください。原案が描いてあった紙に、海堂はそう書き加える。
それを見ていたフジマサマーチが────何か考えを持っているかのように、海堂に尋ねた。
「あの、海堂トレーナー」
「ん?」
「……海堂トレーナーは、勝負服関連の仕事をしたことがあるのですか?」
ピクリ、と。
一瞬、海堂の体が反応したのを、フジマサマーチは見逃さなかった。
既に何回か行っているかのような手慣れ具合であったが、インタビューを行ったことが無い以上、そうであるはずがないのだ。
おそらく、既に何度か行っていた先輩トレーナーあたりに聞いておいたのだろうと。フジマサマーチは、そう考えをつけていた。
「……一応、昔に考えてはいた。どんな勝負服にしようかとか、どのレースに出ようとか、色んなことをな。それももう3年前の話だ」
どこか未練がましく、海堂は語る。
その声は、ただ暗いだけではない。まるで、その過去を払拭するべく────誰かに対して、贖罪するかのような。そんな意味が含まれているような気がした。
────泣いた理由と、やはり関係が?
ここで、フジマサマーチは確信したのである。
それが確信できたのならば、やることは1つしかない。
「私に、海堂トレーナーの過去を教えてください」
何か理由があったのなら、暗い闇を抱えているのなら。
今度は、私が助ける番であると。フジマサマーチは、そういった想いで言葉を発した。
海堂とオグリキャップに、何度も救われてきたのだから。話して楽になるのなら、聞き手になりたいと。
「……いつか、君には話すつもりでいる。いつかと言っても、東海ダービー直前だと思うけどさ」
いつもの″マーチ″という呼び方が″君″に変わる時。
それが何を示すのかを、フジマサマーチは知っている。
一度、オグリキャップに負けた時。
二度、地方トレセンを選んだ理由を話した時。
三度、それが今のこの場面であり。
君と呼ぶ時は、話が冗談ではなく本気の物であると示す。それと同時に、心に余裕がない時を示す。
それを悟っていたフジマサマーチは、謝った。海堂の内面にあった、地雷を踏んでしまったことを。
「……すみませんでした」
「謝ることはないさ。過去の話はいつか話そうと思ってたんだし、その過去も未練があるってだけだから」
────ウマ娘の聴力は、人より優れている。
故に、不慮の事故が起こってしまった。
誰にも聞こえないと思っていた、海堂の呟きが。
誰にも
海堂が、平静を取り繕っていたという事実が。
「……君の夢を背負うと誓って、何もしてやれなかった。最低の、ド三流のトレーナーの過去ってだけさ」
全て、聞こえてしまったのである。
プリティー要素、どのくらい欲しい?
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たくさん
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おおめ
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それなり
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ほどほど
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すくなめ