華の軌跡   作:たまもおぜん

3 / 12

キャラ崩壊してたりするかも?


入学式

3月31日 朝

トールズ士官学院、講堂...

 

士官学院に到着した私はモニカと一旦別れて、学院左手側、入学式が行われる講堂に入っていった。持ってきた大きな荷物は、後で学生寮の部屋に届けられるらしい。いきなり手荷物検査とかされないか、少し心配だ。

 

広く、隅まで手入れの行き届いている講堂の中、規則正しく並べられた多くの椅子に、期待に目を輝かせる新入生達が整然と座っている。その新入生達の視線の先、少しばかり高くなっているステージの壇上では、身長2アージュはあろうかという巨躯の老年―――ヴァンダイク学院長が、熱弁を振るっている。

 

「…んむ………はっ…!?と、いけないいけない…。」

 

一方私は、早朝からの出発のおかげか数回程睡魔に襲われかけていて、コックリ行ってしまわない様になんとか抑えている所だ。元より、長く座って人の話を聞き続けるのは得意な方ではないし、そこまで経験したことも無い。やっぱり、身体は動かしてこそだ。

 

「―――最後に、君たちに1つの言葉を贈らせてもらおう。」

 

学院長の演説も終盤に入ってきたらしく、その声に一層の力強さが増す。辛うじて睡魔を振り切った私は、せめて最後くらいはちゃんと話を聴いておこうと、壇上の学院長の方に視線を向ける。

 

 

ここトールズ士官学院は、約220年前に時の皇帝<ドライケルス大帝>が創設した学院だ。そのドライケルス大帝は、エレボニア帝国の内戦<獅子戦役>を終結させた英雄として知られているらしい。最近は、軍の主要部隊の機甲化に伴い戦術・戦略ドクトリンが変化、この学院の役割も変わってきている。と、たった今学院長が言ってた。

 

 

『若者よ―――世の礎たれ。』

 

檀に両手を置いて身を乗り出した学院長が、強調する様に、一際大きく聞こえる様に言う。

 

「”世”という言葉をどう捉えるのか。何をもって”礎”たる資格をもつのか。これからの2年間で自分なりに考え、切磋琢磨する手がかりにして欲しい。―――ワシの方からは以上である。」

 

最後に笑顔を見せる学院長。

 

「世の礎たれ、かぁ…。」

 

学院長の言葉に、思わず考え込む。世とは何か、礎とは何か…導力革命以来、世界は慌ただしく変化してきており、今の”世”を的確に捉える事は極めて困難だと言える。その”世”を支える”礎”とは何か、それに対する自分の答えを見つけるのも目標、という感じか。大帝も、随分と厄介な宿題を遺していったものだ。

 

「以上で、トールズ士官学院、第215回入学式を終了します。以降は入学案内書に従い、指定されたクラスへ移動すること。学院におけるカリキュラムや規則の説明はその場で行います。以上―――解散。」

 

学院長の退檀の後にステージへと上がってきた、モノクルを掛けた男性教官がそう言葉を発する。やっと終わった。私は小さく身体を伸ばしてから立ち上がり、移動する他の新入生達の流れに乗って、講堂の外へと向かった。

その間に、何人か赤制服を着た生徒を見かけた。黒髪の爽やかそうな男子と、オレンジの髪色の小柄な男子、それとメガネを掛けた三つ編みの女子だ。この三人には、特にこれといった特徴のある共通点は見つけられない。では、その赤制服は何なのだろうか。頭の片隅でそう思考しながら、左手にある本校舎へと向かった。

 

 

------------------

 

 

入学案内書に記されている、私が所属する事になったクラスはⅣ組。本校舎の正面入口から入って奥の階段を二階へ、そこから右に少し進んだところにある。平民クラスとはいえ、由緒正しい士官学院なだけはあり、教室の設備や内装は日曜学校とは比べ物にならないと思われる。

どうやら私の到着は少し遅めだった様で、既に教室にある机は殆どが埋まっていた。多少慌てて入学案内書を頼りに、自分の席を探す。

 

「…あった、あそこかな。」

 

私の席は窓際の列、一番後方だった。これは運が良いのか悪いのか、取り敢えず、多少居眠りしてもバレなさそうではある。もっとも、この士官学院に易々と居眠りを見逃す教官は居なさそうだけど。

何はともあれ、入学案内書を自分の机の上に置き、席に座る。椅子も机も多少大きめで、造りもしっかりしている。且つ、所々に小さく入った優美な意匠が、質実健剛な気風と貴族文化が混ざり合っている帝国らしさを引き出している。この机欲しい。

 

「いいな~一番後ろの席、アタリみたいなものだよね!」

 

不意に話しかけて来たのは、私のひとつ前の席に座っていた女子生徒だ。茶色い、ナチュラルなミディアムヘアのその女子は上半身を捻って両手を背もたれに掛け、人懐っこい笑顔を浮かべながらこちらを向いている。

特に悪意の無い笑顔を向けられるのはまぁ悪い気もしないので、私も笑顔を返した。

 

「でも教官の話が聞こえづらいのはなぁ。ほら、この学院って、授業が結構難しいって噂じゃん。」

 

「んー、確かに…それもそうだよね。あ、ワタシはコレット、趣味はショッピングと食べ歩きだよ。」

 

その女子―――コレットはうんうん頷くと、思い出したかの様に自己紹介を行う。

 

「私の名前はリーリャ。趣味は…射撃競技、かな。これから宜しくね、コレット。」

 

「うん、ヨロシクね♪」

 

私も自己紹介を返す。趣味は咄嗟に考えたものだけど、完全に嘘ではない、はず。前の席のショッピング娘コレット。よし、覚えた。

我ながら酷い覚え方だ、と思っていると、コレットが更なる質問を繰り出してきた。

 

「リーリャは趣味が射撃なんだよね。ってことは、選択武器もやっぱり導力銃なの?」

 

「んー?まぁそうだねぇ、武術科目も銃で行くつもりだし。」

 

私には剣・槍の才能は無かったらしく、これまでそういった刃物や長物を持っても全く使いこなせなかった。剣が得意なある人物に色々と聞いたりしてみた事はあるものの、呼吸法やら足運びやらが全然理解出来なかった。つまり、私は格闘武器を全く使えない。

 

「おぉ…何かカッコイイね。」

 

何故かは知らないが、コレットが羨ましがる様に目を輝かせている。

 

「うーん、格好良いのかなぁ…」

 

正直、導力銃が格好良いとは思えない。剣なら<剣仙>ユン・カーファイを始めとし、<光の剣匠>ヴィクター・S・アルゼイドに、南のリベールには<剣聖>カシウス・ブライト、前に居たクロスベルなら<風の剣聖>アリオス・マクレイン等々、格好良い超人が結構居る上に、様式美的な優雅さは帝国の気風にも合う。それに対して銃はどうか。残念ながら、そういった話は全く聞いたことがないし、単なる一般兵の武器としか見られていない。

だから、銃が格好良いと認知されているとは到底思えない。

 

「何かこうカッコよく導力銃構えてると、出来る女って感じがするよ。」

 

「あーなるほど、そういう…。じゃあ、コレットも銃に?」

 

あぁ、イメージで喋ってただけか。軽く脱力しながら納得する。

 

「いや~ワタシは無難に剣とかで良いかな、って。導力銃は扱いが難しそうだし…。」

 

頭を掻き、苦笑いを浮かべながらそう言うコレット。

そんなものかなぁ?銃は、究極的に言えばトリガーを引ければ良いのに。

 

「確かにメンテは面倒かもしれないけど、使ってみると意外と簡単だったりするよ?小口径の拳銃なら反動も小さいし。」

 

「うーん、そうなのかな…?」

 

「まぁ、自分のやりたいと思った方で良いんじゃないかな?」

 

しかし、嫌がっている所を無理に勧めても仕方がない。これは、本人が決めるべきことだろう。

と、そこで教室の扉が開き、担任教官が入って来た。一斉に前を向いて静まる新入生達。

 

「あ、教官だ。じゃあリーリャ、また後で話そうね。」

 

前を向く直前に、コレットはそう小声で言った。

橋で会ったモニカに、初めてできた同クラスの友達、コレット。やっぱり、友達が出来るというのは悪い気はしない。少なくとも、今私は幸せなんだろう。

そんな事を考えながら、教壇に立った教官が始めたオリエンテーリングに耳を傾けた。

 

 

 

 

 

 

 





はい、一番のお気に入りNPC、コレットさんです。
街のオバちゃんといきなり仲良くなってるコレットは、相当なコミュ力の持ち主だと思われる…

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。