何か勇者(一族)と間違われるんだけど   作:ココナッツ春雨

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モノホン勇者と偽勇者

「起立、気をつけ。 神樹様に、拝」

 

 

 5、6限を終え、讃州中学は放課後に入った。

 この中学は全校生徒のほとんどが何らかの部活に在籍している。そのため、帰りの会後教室に残る者はほぼ居ない。

 例の乃木さんの席を見るも、既に空席だった。

 毎度放課後になるとすぐに荷物をまとめ、教室を後にする乃木園子。彼女が在籍している部活は、校内で知らない者はいない「勇者部」。噂によれば四国を守る本物の勇者のみで構成された部だとか。

 四国の勇者が全員この讃州中学にいるのもおかしな話だが、金は同じクラスの乃木園子しか面識が無く、他の勇者とは無縁の生活を送っている。

 

「おーい、金さん?いつまで座ってるんですかー?早く帰りましょー」

 

 帰りの会が終わったのにいつまでも席から立とうとしない金を変に思った石上だが、

 金の目線を辿って、石上も金の考えていることを理解する。

 

「乃木さんいつも帰り早いよなー。そんなに部活が楽しいのかね」

 

「さあな。でも、帰宅部が一番という事だけは確かだ」

 

「おっ、それな。帰宅部を超える部活など存在しない!」

 

「フッ...今日は珍しく意見が合うじゃないか」

 

 金も荷物をまとめ、部活(帰宅)の準備をする。

 

 

 誰も居なくなった放課後の教室を後にする。廊下を歩きながら、響き渡る吹奏楽部の音色と共に、他の教室に目を移す。

 もぬけの殻なクラスもあれば、数人残ってたわいもない会話を紡いでいるクラスもある。皆思い思いのことをしている。この中学は放課後以降放任主義なのか、職員室以外で先生を見かけない。まぁそこが生徒主体の部活が盛んな理由でもあるのだろう。

 

「なぁ金。帰ったら何する?エペやるか?」

 

「いや、今日はモンハンの気分だ。ひと狩りいこうぜ」

 

「えぇ...昨日ひと狩りどころか300狩り位したのにまた行くのか?」

 

「PAPICO半分やるよ」

 

「ひと狩りいこうぜ!!!」

 

 

 やっぱ帰宅部って最高だわ。

 

 

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 石上と帰路についた金は、歩きの石上に合わせて自転車を押しながら歩を進めていた。

 

 ちょうど河川敷を通りかかった辺りで、川の側に同じ讃州中学の制服を見かけた。どうやら2人組の女子のようだ。

 こんな何でもない河川敷で何してるんだか。

 

「なぁ石上。あれ何やってると思う?」

 

 困ったらとりあえず石上に聞くのが金の定石である。

 

「え、なになに?

 ....何か探しているように見えるけど、河川敷で落し物でもしたんかね。でも、にしては探す範囲が限定的すぎるというか...

 ただ、地面に手を付きながら探してるし、必死さは伝わってくるな」

 

「そっか」

 

 数秒彼女らを見つめる金。すると、

 

 

「ちょっと声掛けてくる」

 

 

 反射的に、そう口に出した金は自転車を止めると女子たちのいる川の側まで降りていった。

 

「あ、ちょ、おい!

 .....ったく、相変わらずのお人好しだな」

 

 

 金が近づいていくと、彼女たちの会話が徐々に聞こえてきた。

 

 

「ちょっと、おねーちゃん...ほんとに四つ葉のクローバーって存在するの?どんだけ探しても見つからないんだけど...」

 

「泣き言言わないの樹!確かに全然全く手ごたえ無いけど、依頼が出てからもう3日も経ってるのよ!何としてでも見つけ出すわよ...!」

 

 

 探し物は四つ葉のクローバーだった。

 確か、すぐ近くに沢山生えてる場所があったっけ...

 

 

「あのー、四つ葉のクローバー、探してるんですか?」

 

 

 金が声を掛けた途端、2人の手が止まる。

 

 

「え、まあそうですけど、えーと、どちら様で?」

 

「あ....」

 

 

 ここで金は名乗ろうとしたが、自分の名字のことを考え、名乗るのを躊躇った。2人とも讃州中学生らしいが、顔も名前も知らない。いきなり「三ノ輪」なんて言ったら変に気を使わせてしまうだろう。

 そう思った金は、下の名前だけを名乗ることにした。

 

 

「えと、同じ讃州中学二年の金っていいます。良ければ四つ葉のクローバーが見つかりやすい場所、教えますよ」

 

 瞬間、彼女らの目が輝き出した。

 

「え!?!?!?

 他にも見つかりそうな場所があるの!?知らなかったわぁいやーありがとうめちゃくちゃ助かる!!!」

 

「確かに、胸ポケットの校章は同じ讃州中学のものですね。男子の制服って他校と似たりよったりなので気づきませんでした」

 

 

 違和感なく会話が進んでいる。やはり苗字を隠しておいて正解だったようだ。

 

 

「ついでにと言ってはなんですが、連れのアイツもお手伝いします」

 

 と、金は河川敷の上方にいる石上を指さして応えた。

 

「え、あ、お、俺も....???」

 

 完全に蚊帳の外だと思っていた石上が予想外の展開にしどろもどろになる。

 

「いーだろ。どうせ俺がいないとお前も暇人なんだし」

 

「いや間違ってないけど、そうなんだけど、そうじゃないというか....あーーもう!付き合えばいいんだろ付き合えば!」

 

「そう言ってくれると思ってたぜ、相棒」

 

 金の自転車籠に荷物を置いてくると、石上も川の側まで降りてきた。

 

「あ、えーと、こいつのダチの石上って言います。よろしくです.....アハハ」

 

 妹のいる金と違って女子と接する機会がほとんどない一人っ子の石上は、女子とのコミュニケーションには不慣れだ。

 

「いやーほんと助かる!わざわざありがとうね。

 あ、あたしは三年の犬吠埼風。そんで、こっちのあたしによく似た可愛い女の子はあたしの妹、一年の犬吠埼樹っていうの。よろしくね」

 

「あ、えと、犬吠埼樹です。よろしくお願いします」

 

 こうして、放課後四つ葉のクローバー探しイベントが始まった。風がまさかの上級生だったことに驚く金達だったが、風のオープンな性格に次第に打ち解けるようになっていった。

 

「風さん、もうすぐ着きますよ」

 

 金が案内した場所は、風たちが探していた所と川を挟んで真反対の位置にあった。普段讃州中学生が登下校で通らない場所であるため、金達のようによほどの暇人でない限り、探し出すのは難しいだろう。

 そのかわり、お目当てのクローバーは大量に自生していた。

 

「はえー、こんな所があったとは、灯台下暗しってやつね...」

 

「私もこんな所初めて来ました。普段の部活動でもこちら側まで来ないので」

 

 

 風たちがこの場所に感心しているのを見て、ホッとする金。

 と、ここで、石上が金の肩をちょんちょんとつついた。

 

 

「どした?

 あー、PAPICOならこれ終わった帰りに買ってやるから」

 

「違う、そんなんじゃない。

 お前、ここに何があるか忘れたわけじゃないよな...?」

 

「え...」

 

 瞬間、金はとんでもない事を忘れていたことに気が付いた。

 冷や汗そして鳥肌が一気に立った。

 

「そ、そうだった...っ、ここには...!!!」

 

 

 金達の大切なエ〇本が、隠してある場所だった。

 

 

「...お前、何てことを...それでも男か!!!!(小声)」

 

「す、すまん!完全に忘れてた...!俺としたことが....(小声)」

 

「....場所、忘れてないよな?」

 

「...ああ。忘れられる訳がない」

 

「よし、なら分かっていると思うが、

 ぜっっっっっっっったいに、そこに連れてくなよ...?」

 

 

 今いるクローバー自生地の少し奥まった場所に例のブツは箱にしまって隠してある。余程のことがない限りは雑草の生い茂る隠し場に女子が近づくことはないだろう。

 

 

「おねーちゃん!見て見て!こっちに五つ葉クローバーがあったよ!」

 

「うわ、凄いじゃないこれ!こんなの生まれて初めて見たわ〜さすが私の妹ね!ヨシヨシヨシ」

 

「ちょ、ちょっと、おねーちゃん、恥ずかしいよ....」

 

「あ、金君たちのこと忘れてた。ごめんごめん」

 

 

 と、和やかな姉妹のやり取りとは裏腹に、金たちは絶望的な状況に立たされていた。

 

 それもそのはず、樹が五つ葉のクローバーを見つけた場所のすぐ側には、例のブツが眠っているのだ。

 このままでは見つかるのも時間の問題。

 すぐさま石上が機転を利かせる。

 

 

「げ、ゲホンゲホンっ!

 そういえば、あっちの方で7つ葉のクローバーを見つけたことありま」

 

「うわ!これ7つ葉じゃない!?よっしゃー!!!アタシの女子力もこれで7倍よ!!!」

 

 

 何ィ....

 

 

「これひょっとして、この奥探すともっと凄いクローバー見つかりそうじゃない!?」

 

 

 まずぃぃぃぃぃぃいいいい!!!!!!!!!!

 

 

「ゲッホンゲホンゲホンっ!

 ふ、風さん!見てください!15つ葉のクローバー見つけました!!!!これで女子力15倍!!!こっちの方にまだまだありそうです!一緒に探しましょう!こっちで!!!」

 

 金が最終手段、クローバーを集め葉の枚数を増やし、あたかも超レアクローバーに見えるブラフクローバーを使用。

 

 

「.....金君、それ何枚重なってんの」

 

 

 オワタ。

 

 

「?あれ、何だろうこの箱。なんか古っぽいし」

 

「なになに、お宝!?まさかこの観音寺に財宝が眠ってたなんて!!!

 早く開けちゃいなさい樹!!!」

 

 

 ああああああああああああああああそれはまずいいいいいいいいいいいい

 

 

「ちょ、ちょっと待った!

 もし、その箱から、仮に、仮にですよ....?

 

 お化けが出てきたらどうするんです....?」

 

 金がなけなしの悪あがきをする。

 

「え、何言ってるんですか?お化けなんて出るはずないじゃないですかー」

 

 ですよねー。

 

 

「そそそ、それもそう、ね......

 やっぱり開けるのやめておこうかしら」

 

 ただし、1人だけには効果てきめんだった。

 

「え?」

 

 本当に効果があると思わず、まさかの返答に戸惑う金。

 そこにすかさず石上が畳み掛ける。

 

 

「ですよね〜怖いですよね〜僕も同じです風さん!

 同じ怖いもの嫌いのよしみとして、ここは一旦保留にしましょうそうしましょう」

 

 石上の口車に上手いこと乗せられていく風。

 

「そ、そうね...怖い目にあってからじゃあ遅いものね、うん」

 

 

 これで漸く万事休すかと思われた。が、

 

 

「え、もう開けちゃったよ」

 

 

 時すでにおすし。

 

 

 金たちの心の中にある、何かとても大切なものが砕け散った。

 二人は同時に悟った。

 

(( さようなら、俺達の青春....(´TωT`) ))

 

 

 

 

 樹が蓋を開け中身を確認する。

 

「えーと、中身は....何だろう、これ...?」

 

 

「.....嘘でしょ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『勇者御記』って、何?」

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