何か勇者(一族)と間違われるんだけど   作:ココナッツ春雨

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絶体絶命?

「『勇者御記』って、何?」

 

 

 

 

 

 

 

 樹がそう発したことで、我に返る金と石上。

 

 深い藍色で彩られた和紙に包まれた謎の書物。風貌は古びているものの、箱の中に入っていたためか状態は悪くない。

 当然、金にはこの書物に全く見覚えがない。石上が気を利かせて例の本の表紙を変えた可能性があるが、それならもっと別の、人気漫画の表紙など紛らわしい何かにするはずだ。

 そもそも勇者の御記とは、文字通りの内容なのだろうか。

 

「おい、石上...あれ、何だよ。あんなの隠した覚えないぞ...」

 

「....分からん。俺もあんな表紙見たことねえ。官能小説か...?でも、『勇者御記』って、確か....」

 

 ぼんくら男子中学生2人では全く処理しきれない難題に、金たちは風に助けを求めてみることに。

 

 しかし彼女の様子は疑問とは程遠い、不安と後悔が混ざりあったような、複雑な表情をしていた。

 

 金には、学校で見たあの園子の表情が重なって見えた。

 

 

「これ、一旦預からせてもらってもいい?」

 

「ふぇあ?」

 

 唐突な風の質問にアホみたいな声を出してしまう金。

 

「じょ、女子力は上がらないと思いますけど....」

 

「今は女子力はいいのっ!

 .....題名見て分かると思うけど、これは多分そういうものなのよ」

 

 あくまで可能性として考えていたことが現実味を帯びだす。

 ここで石上が勘づいたかのように口を開く。

 

「もしかしてそれ、この前授業でやった勇者の記録ってやつじゃない?」

 

「....そんな事やったっけ?」

 

「おま、授業やったの一昨日やぞ...」

 

 金の記憶能力の無さが浮き彫りになった瞬間である。

 

 石上曰く、学校で習った"勇者の記録"というものは勇者が日々の記録を日記形式に記した書物のことらしく、それらは大赦が今後の研究に活かすべく大切に保管していると教えられたらしい。写真等の資料は無かったため確証はないが、目星はついた。

 

 試しに風が内容を確認すべく書物を開いてみる。

 

「さてと、どれどれ.....って、ほとんど読めないじゃないこれ!!!」

 

 中身の文章と思われる箇所のほとんどが上から黒く塗りつぶされていた。

 御記は半分程度しか書かれておらず、それ以降は白紙であった。

 

「これは....読ませる気が無いというか、消してますな」

 

 何故消す必要があったのか、そもそもこの御記はいつ誰が書いたものなのか.....謎は深まるばかりだ。

 

「ちょっと待って。紙がくっ付いてて気づかなかったんだけど、最初の方は消されてないみたいよ」

 

「マジですか!?何か書いてありました?」

 

「ちょ、ちょっと待ってね...今剥がしてみるから」

 

 ここで風が序盤の1、2ページだけ黒塗りされていない箇所を発見する。時間が経っていたためか、黒塗りのせいか、ページ同士がくっ付いていたらしい。

 

「このページなんだけど....っ、如何せん、しっかりくっ付いてて、慎重に剥がさないと破れそ.....う」

 

「ちょ、お姉ちゃん、破いちゃだめだよ...?一応人の物かもしれないから....」

 

「分かってるわよ樹。この私が何年家事やってると思ってるの。こんなの裁縫と比べたらちょちょいのちょいよ!」

 

 徐々にフラグを建てていく風。一級フラグ建築士も夢ではないと思われた所で、石上が二人の会話に水を差す。

 

「風さんって家事もできるんですね。冗談抜きで女子力高くないすか?」

 

 冷静に考えても風の女子力は男子お墨付きにしてもいいレベルに高水準だ。それでも尚女子力を欲する姿勢にはもはや頭が上がらない。

 

「なっ、何よいきなり...そんなに持ち上げられると嬉しくなっちゃうじゃな〜い♪」

 

「いやいや、謙遜とかじゃなくて。

 僕は真面目に思ってます。風さん、絶対良いお嫁さんになれますよ」

 

 石上の瞳は、風を真っ直ぐ捉えて揺るがない。

 

「えっ....///」

 

「おいこんな所で口説くなバカタレ」

 

 金が石上の首根っこを引っ張って茶番を対処。

 この空気の中でどう転べば口説こうと思えるのか....

 

「まぁでも、石上の言う事も間違ってはいないですね。普通に女子力カンストしてますよ、風さん。俺も結婚するなら風さんみたいな人としてみたいなぁ」

 

「なっっっっっっ.....///////」

 

 風が目をくるくるさせながら樹の足元にパタリと倒れた。

 

「えええええ!?

 ちょっと、おねーちゃん!!!しっかりして〜!!!」

 

 

「....金、お前も大概やぞ」

 

「ぽぇ?」

 

「....無自覚系主人公が。ムカつくなぁそれ」

 

 

 少しの間再起不能となった風のかわりに樹が鞄からハサミを取り出し、いとも簡単に綺麗に剥がし終えた。やはり犬吠埼姉妹はハイクラスの女子力をお持ちだ。

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 樹が風を起こした後、改めて剥がれたページを確認することに。

 

「いくわよ、3人とも、準備はいい...?」

 

「う、うん」

 

「おけです」

 

「ちゃっちゃとめくっちゃってくださいよ!」

 

 

「っしゃー!それじゃ早速いくわよー!!!

 

 3、2、1、ほいっ!!!!」

 

 風が勢いよくページを開く。そこに書かれていたのは...

 

 

 たった数文字だけだった。

 

 

 

 

 

 

「....ぇ」

 

 

 

 

 

「....は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『勇者一族 三ノ輪様』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「三ノ輪って....お姉ちゃん、確か....」

 

 

「ええ、これは....」

 

 

 何かを察する犬吠埼姉妹をよそに、石上は念の為確認を取る。

 

「....違うよな?」

 

「....当たり前だろ」

 

 この時金は、思っていた。

 

 またか、と。

 

 今まで散々この一家のせいで何度も災難を被ってきた。

 勇者に対する、町の人たちの暑苦しいまでの接待。この名字のせいで、何度も学校に遅刻した。この名字のせいで、押し付けがましい見知らぬ好意を何度も受け取った。何もしてないのに。本当は本物の三ノ輪家が受け取るべき感謝を何度も受け取った。何も知らないのに。

 背徳感が酷い。他人の功績を努力も無しに利用している気がして、気持ち悪かった。俺は何もしてないのに。

 嘘をつきたくないのに、嘘をついている。そんな状態だった。

 

 "三ノ輪"から兎に角離れよう、そう思った。

 だから名字もあまり名乗らないようにしてた。

 なのに。

 

 

 またかよ....。

 

 

 

「おい金!急に黙り込んでどうしたよ?それともギャグか?」

 

「....あぁ、ギャグだ」

 

「笑えねぇ顔でギャグすんのまじでやめろ。

 悩みがあれば言えよ、絶対隠すな」

 

 こいつはいっつも変な所で妙に鋭くなる。本当にお節介だ、全く。

 

「....PAPICO買う金無くて悩んでるんだ」

 

「」

 

 

 金たちがわらわら話してるよそで、風と樹は考えをまとめたらしく、ようやく金たちに話題を振った。

 

「とにかく、一旦これは私たちが預かるわ。これは多分あたしたちの問題だろうから。変な空気にしてごめんね」

 

 てっきり大赦等の施設に預けると思っていた石上が、予想外の展開に口を挟む。

 

「ちょっと待ってくださいよ!学校の先生や大赦の人に渡した方が良くないですか?これって本物なら勇者の記録ってことだしかなり貴重な物かも....てか何で風さんたちが関わってることになってるんすか?」

 

 子供では解決しようのない代物に、諦めて大人に頼るべきだと石上は風に説明するも、

 

「大丈夫よ、あんな気味悪い連中よりよっぽど頼りになる人がいるの。その人に聞いてみるわ。

 それに....多分これはその人に渡すべきだと思うの」

 

「気味悪いて....マジですか」

 

 大赦を気味悪い連中と評した風に脱帽する石上。一体何を経験したらそんな啖呵が切れるのか....

 

「ちなみに、その頼りがいのある協力者さんは一体誰なんです?」

 

 話の流れのついでに石上が例の"その人"について風に尋ねた。

 

「そりゃあこの手の物を捌ける人物っていったら、ねぇ樹」

 

「うん、園子さんしかいないでしょうね」

 

 突然の乃木園子ワードに驚く金たち。

 

「え、園子さんってあの乃木園子さん?」

 

「他に誰がいるのよ。乃木って言ったら園子しかいないじゃない。校内でも超有名人なはずでしょ、あの子」

 

「いやまあ、それはそうなんですけど....」

 

 彼女らが勇者園子と関わりがあったという事実に驚く金たち。金たち一般人からすれば園子はかの名家乃木家の娘であり、天上人のような存在である。それ故にすらっと交友関係を語られたことに驚きを隠せない。

 

「学年違うのにお知り合いとは、さすがです風さん〜

 .....ところで、一体どのようにしてお近付きに?」

 

 後半の本音ダダ漏れを厭わず風に迫る石上。

 

「ちょ、近い近い近い!近いってば!!!

 

 そんなお近付きなるも何も、うちの部員だし仲良くなるに決まってるじゃない!」

 

「なるほど!同じ部活に入部して合法的にお近付きになる.....

 って、ん?」

 

 

 

 最後の違和感に金と石上は顔を合わせる。

 

 

 

 

 

「「同じ部活だってぇぇえええええぇぇぇえぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇええぇぇ!?!?!?!?!?!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰宅部、巡り巡って遂に勇者部と出会う。

 

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

「あんだけ人助けして新聞にも取り上げられて知名度もうなぎ登りだったっていうのに、金君たちあたしらのこと知らなかったの!?!?!?」

 

「すんません....勇者といえば同じクラスの乃木さんくらいしか面識無くて....学校で配られる公報系の資料とかも基本読まず捨ててまして.....知りませんでした」

 

「うちの中学なら何かしら部活入ってるでしょ?なら顧問の先生から何か聞かなかったの?」

 

「その、なんていうか......

 

 帰宅部で、すいましぇん...!!!」

 

「なにぃいいぃぃいいぃいいいぃいぃぃぃい!?」

 

 学校を二の次に考え過ぎていたが故の事態。常に楽な方へ流されていた金と石上は、宿題やテストの情報以外は完全シャットアウトし、部活なんて面倒な組織には関わらず、お互いにゲームや漫画の事ばかり考えていた。そのため、勇者の存在も知識についても興味が無く、たまに園子の武勇伝を噂で聞くぐらいだったのだ。

 

 恐る恐る石上が風たちに最終確認を取る。

 

「....てことは、樹ちゃんと風さんも、乃木さんと同じ勇者って、ことですよね....?」

 

 

「そうよ」

「そうです....」

 

 

「「大変申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁぁあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!!」」

 

 

 謝罪の最上級"THE DOGEZA"をかちこみ、額を地面に擦り付けた。

 まさかさっきまで普通に会話してた女子がモノホンの勇者様だったとは.....

 

「はぁ.....私たちの活動は一体何の意味があったの....

 まさか、こんな身近な人に知られていなかったなんて....」

 

 2人の目の前で露骨に落ち込む風。樹が擁護するも完全に風の目はぴえん状態になっている。

 金と石上は、ただ土下座して固まるだけだった。

 

「全ては我らの怠惰が招いた愚行....

 煮るなり焼くなり、好きにしてください.....」

 

「そ、そんなに額を地面にすりつけないでください!

 別に怒ってるとかそんなんじゃないですから....

 

 ただちょっと、悲しいなぁ....って.....」

 

 そう語りながら金たちに愛想笑いをしながら浮かべた樹の表情は、残念さに包まれていた。

 これはやっちまったな...

 

「「........マジですみませんでした」」

 

 ここで先程まで伸びきっていた風が唐突に立ち上がる。

 そして金たちを指差しながら、

 

「君たち!明日の放課後部室に来なさい!そこで勇者部のこと隅から隅まで叩き込んであげるから!!!!」

 

「...って、え!?明日の放課後、ですか?しかも部室に!?

 園子様にお近付きになれるのは至極の極みですが、僕たち部外者が入っていい場所でh」

 

「場所は家庭科準備室のとこよ!分かったわね?」

 

 う....でも明日は....明日だけは外せない用事が....!!!

 

「(おい石上!明日イベント最終日だぞ!最後の追い込みで周回しないと絶対間に合わないって!!!

 俺は手伝ってる側だから特に問題ないけど、お前は大丈夫なのか!?目当てのTOP10称号貰えなくなるぞ!)」

 

「(分かってる!それだけは...それだけは勘弁だって!今日まで頑張って来た意味が無くなる!!!

 くそっ....推しキャラ入りの称号なのにぃぃぃ!!!)」

 

 瞬間、風が二人の肩をガシッと掴んだ。空気が凍る。

 反射で背筋がピンと伸びる。

 

「....放課後、勇者部室集合。リピートアフターミー?」

 

 もう、逃げられない。

 

「....ほ、ほほほうかご、ゆうしゃぶしつしゅうごう.....」

 

「はいよく出来ましたー!

 んじゃ明日待ってるからーよろしくね〜

 

 あ、クローバーの件ありがとねーそれも明日ついでにお返しするから〜部室で」

 

「ちょ、お姉ちゃん待って!

 え、えと....また明日?今日はありがとうございました〜!!!さよなら!」

 

 樹は金たちに別れの挨拶をし終えると、ご丁寧に箱にしまっていた勇者御記を手に取り、スタスタと風の後を追いかけていった。

 風たちの説教じみた脅迫は、明日の約束をもって幕を閉じたのだった。

 

「....俺の、推し称号が.....(´TωT`)」

 

 一人の男の犠牲はまぁ、置いておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 帰宅部、勇者部に招待される。

 

 

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 風たちが帰った後、急いで金と石上は例の物の安否を確認しに行った。

 

 やはり、例の物は今回見つけた箱の中に入っていた。普通ならすぐ見つかるはずだが、この箱にはひと工夫施されていた。

 

「いやー底2重にしといて良かった〜!!!!

 パッと見じゃただの空箱なんよなこれ。俺らの宝物はこの、下の板に、隠されてるよっと!」

 

 真の箱底から覗く、長年金たちが集めてきたお宝。

 秘伝:石上の底2重箱作戦により、見事危機を回避した金たち。しかし、上段に入っていたあの本が無ければ、意外とすぐ見抜かれていたかもしれない。勇者御記さまさまである。

 

「いや〜石上ナイスすぎ!やっぱお前天才だわ!

 流石数学学年2位なだけあるな」

 

「あー、そのネタまだちょっと引きずってるからやめて」

 

 直近の数学学年テストで、数学を超得意科目として学年1位を目指し張り切っていた石上は、乃木さんにわずか5点差で敗北した。勝敗の決め手は最後の図形問題だったそうな。

 

「あ、スマソ....でも乃木さんと張り合えただけで十分すげぇよお前。そこまで乃木さんと戦えるのはこの中学で間違いなくお前しかいない。誇っていいぞ」

 

「乃木さんの数学力はレベチだって分かってるつもりだったけど、あのテスト解いた後時間余って居眠りしてたしなー。俺は時間ギリギリで解ききれなかったのにさ。実力差を存分に見せつけられたよ」

 

「まじか...俺もテスト中寝てて気づかなかった....」

 

「お前の寝るは意味が全然違うからな」

 

 それでも、ここまで露骨に落ち込む石上は久々に見た。よっぽど自信があったのだろう。

 

「次は絶対、負けない」

 

 そう啖呵をきった石上の目は、静かに燃えていた。

 昔から地味に負けず嫌いな所がある石上は、こうやって何度も壁にぶつかっては乗り越えてきた。今の頭の良さがあるのも、その積み重ねのおかげなのだろう。

 

「まあまあ、一難去ったことだし、お気に入りの物でも読みましょうや石上さんよ」

 

「せやな。これ読んでまずはリフレッシュや!

 っーと、俺のお気に入りのアレはどこに.....」

 

 ガサゴソと箱の中を探ること5分。金のお気に入りは出てきたが、石上の物だけ一向に見つからない。

 

「....あれ?おっかしいな。確かいつでも取り出せる様に1番上に置いといたはずなんだけ、ど.......」

 

 瞬間、全ての辻褄が重なり合った。

 

「おい、1番上って、まさかお前.....」

 

「.....その、まさかかも、しれない......」

 

 

「おいおい、それってつまりどういう事なん、だ.....?」

 

 

 石上のアレだけ上段にしまわれていたことが発覚。

 そして、上段には今、何も残っていない。

 

 つまり.....

 

 

 

 

「お持ち帰りイベント、発生したわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 [犬吠埼家にて]

 

 

 風と樹で2人暮らしの犬吠埼家では、晩御飯を済ませ入浴を済ませ、寝る準備をしていた。

 

「樹ー、ちゃんと温かくして寝るのよ。今夜は寒くなるらしいから」

 

「うん、分かった。あ、そうだお姉ちゃん、これお姉ちゃんが預かっててよ。明日学校に持っていくの忘れそうでさ....」

 

 そう言って樹が取り出したのは、放課後の騒動で見つけた勇者御記。既に学校鞄の中にしまっていたが、その時点でも忘れるビジョンが浮かんだらしい。

 

「樹、物忘れ激しいからね....1度言ったことも10秒経ったら忘れちゃうし」

 

「それもうおじいちゃんだよ....

 でも否定できない自分がいる....」

 

「アハハ.....まあ取り敢えずこれはお姉ちゃんが預かっとくから、樹はちゃっちゃと寝なさい」

 

「うん、分かった。ありがと、お姉ちゃん。お休み」

 

「うん、お休み」

 

 風が勇者御記を手に樹の寝室を離れた後、樹は筆箱を鞄にしまい忘れていたことに気がついた。明日になってからでは忘れる危険があるため、今のうちにしまっておくことにした。

 

「あーぁ、また机の上に筆箱置きっぱなしだよ.....

 これじゃ本当におじいちゃん...いや、おばあちゃんかも....」

 

 そう言いながら鞄に筆箱をしまっていると、

 パスンと、鞄から何やら雑誌のようなものが裏向きに落ちた。

 

「ん?何だろうこれ?毎月買ってたファッション雑誌かな?でも、私こんなの持ってたっけ.....」

 

 取り敢えず拾って表紙を確認してみた。

 すると、

 

 

 

 

 

『厳選!!!グ○ビア巨○美少女 〜完全版〜』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「....ヘ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「巨○.....完全版......」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!」

 

 チュピーーーーン

 ドカドカ ガッシャーーン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なになになになにどうしたの樹!!!!!?!?!?!?

 えげつない悲鳴聞こえたけど、も、もしかしてGでも出た??????

 って、どうして変身してんの!?!?!?!?」

 

 食器洗いを放り出して慌てて樹の寝室に来た風。

 ドアを開けると、部屋中超細分化されビリビリになった紙くずが散乱していた。

 そして目の前には勇者姿に変身した樹。

 

「な、何コレ....ちょ、樹、これは......」

 

「お姉ちゃん」

 

 樹の鋭い声が風を一瞬静止させる。

 

「はい」

 

 

「...明日、燃えるゴミの日だよね?」

 

「そ、そうですが....何か?」

 

「なら丁度良かった。

 ここに散らかってるゴミ全部、燃やす」

 

 急に何を言ってるのか分からなくなった風。落ち着いて情報を整理する。

 

「も、燃やすのは最終段階ね....うちらがやるのはゴミ出しよ...」

 

「燃やす」

 

「と、取り敢えず散らかってるゴミ集めよっか。ね?」

 

 

「」

 

 

「あのー、?樹さーん、聞こえてますk」

 

「燃やすったら燃やす!!!!燃やす燃やす燃やす燃やす燃やす燃やす燃やす燃やす燃えろぉぉぉぉぉぉお!!!!!!!!!!」

 

 

「ちょ、ちょわわわ!!!!ライターしまって!!!火付けないで!!!!お家燃えちゃうから!!!!火事起きちゃうから!!!!!」

 

 

「あ、そういやお姉ちゃん、G出てたよ」

 

 急に暴れて、急に静かになる樹に、完全に置いてかれた風。

 

「何、今度はGの話....?お姉ちゃんもうついていけないよ....んで、何処で出てたの?怖いならアタシがちゃちゃっと捕まえちゃうから....」

 

 

「Gカップ、出てたよ。何だろう、この単語。私には全然理解できなかったよ。お姉ちゃん分かる?意味分からないよね。ハハッ」

 

 

 

 

「いつきいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいっっっっっっっっ!!!!!!しっかりしてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぁぇぇぇぇぇぇぇゑーーーーー!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 犬吠埼家は、今日も賑やかである。

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