プロローグ
ずっと、普通に生きてきた。
でも、ちょっとだけ頭が良かった。
それだけなのに理不尽に避けられてしまって。
もう、いなくなりたかった。
でも、見つけたんだ。大切にしたいものを。
ある夜。月が嫌なほどきれいに光っていた。
桃井朱莉はベランダから下を除き、つぶやいた。
「うん、この高さなら死ねるよね」と,自室のベランダから確認してから、時計に目をやる。
まだ十一時。死ぬって決めたのは深夜十二時ちょうど。
朱莉は自殺の準備がうまくいきすぎて時間を余らせてしまったのだ。
「この時間どうしようかな……って、通知?」
朱莉は目の端で何かが光ったのを見逃さなかった。スマホの、インターネット上の友達からの通知と思いスマホを覗く。が、
「なんにも来てない……」
朱莉は光の正体を探すために、これから魂が消える予定の体を動かす。
「ゲーム機の光か……! なつかしいー!」
光った正体は昔、お姉ちゃんが買ってくれたゲーム機だった。すぐ夢中になってプレイしたけど、最近は切羽詰まってあんまりしていなかったな、とゲーム機を開く。ゲームのラインナップを見ながらなつかしい思いに浸る。
「なにこのゲーム……? こんなゲームあったっけ……? まぁいいや、一時間でできるだけやってみよう。どうせ」
死ぬんだし、という言葉は宙にかき消された。
そんな地獄のような時から三年。
「ふぅ……作業もとりあえずはひと段落、かな。」
んーっと、背中を反らす。ずっと画面に向いていてガッチガチになった背中が、ポキポキっと音を鳴らした。
深夜二時、朱莉はパソコンとひたすらにらめっこしていた。
朱莉はあの日からゲームを作り始めた。
はじめてのゲーム制作は大変だったけど今はそれもいい思い出。プログラミングが出来なかったらきっと心が折れていた気がするけど。
「そうだ! サウンドちゃんと保存してたよね?」
保存できているか唐突に不安になるのはパソコンでいろいろ作業してる人の日常だ。できていなかった時の絶望といえば……あぁ、思い出したくない。
ファイルを覗くと、ちゃんとサウンドが保存されていたようで一安心。
しかし朱莉は首をかしげた。
「……なに、これ。Untitled(アンタイトル)? こんなサウンド作ってたっけ……?」
まぁいいや。聞いてみるか、思い出すかも知れないし。
Untitledを再生したその刹那、画面が白く光った。太陽くらいまぶしく光った。
「へ!? 何これ!? 眩し……!」
パッと目を見開くと、そこには、
「あ! 初めましてだね、朱莉!」
見知らぬセカイが広がっていた。
「ここどこ!? これは……コンピューター? あ、プログラミング言語だ……C言語、だね」
「正解。よくわかったね」
そしてゆったりとあらわれた、電子の歌姫が声をかける。
「は、初音ミク!?」
目を見開く。こんなにびっくりしたのなんて何年ぶりだろうか。
「ボクもいるよー! ボクのこと、知ってるよね?」
「か、鏡音レン!? そっか、これは夢だ。遅くまで起きてたからかなぁ、これからはもうちょっと早く寝なきゃ」
「ううん、これは現実。そしてここはセカイ」
そんな朱莉の現実逃避をいともたやすく否定するミク。
そして、朱莉にとって初めて聞く言葉、セカイ。
「そう、ミクの言う通り! ここはセカイで、朱莉の本当の想いから生まれた場所なんだ!」
「私の、想い……? 私の想いはもうあるよ。人の背中を押せるようなゲーム作ること、だ!」
想いという言葉に反応して、ついそう口走ってしまう。
「そう焦らないでよ、朱莉。朱莉の想いは確かに本物。でも、想いとしては不完全なんだ。そしてあたしたちは、朱莉の本当の想いを見つけるお手伝いをするためにここにいるんだよ」
「そうだよ! そして、朱莉が本当の想いを見つけた時、このセカイから歌が生まれるんだ!」
「想いが歌に……何言ってるの?」
もう、わけわからない空間に、現実世界には存在しないはずのミクにレン、想いやセカイの説明など、もう朱莉の寝不足の能はキャパオーバーだった。
「うふふ、まぁ、これからだよ。君の想いは、本物。だから、その想いで朱莉の仲間たちを助けてあげてね」
「そうそう! ボクたちもサポートするから!」
「え!? 仲間って……?」
朱莉はソロでゲームを作っている。一日何時間もかけて、何年も、孤独に。
「それは……今は言えない。だけど、朱莉が本当の想いをずっと持っていて、不完全な想いが完全になったら。その時に答えはわかるんじゃないかな?」
「……ごめん、ミク、レン。私そろそろ眠いんだけど」
さっきから、言おうと思っていたことを言うことにした。もう眠い、瞼がくっつきそうだ。明日も平日だから、学校がある。
「もう深夜だもんね、ごめんね、朱莉。じゃあ、またね!」
「うん! 今度は、ボクたちの仲間も紹介するね!」
「え!? またって!? また来るの、私!? って、眩しいよ……!」
再び朱莉は、セカイに来た時のような浮遊感と眩しさを覚える。朱莉は反射的に目を閉じた。
「あ、れ……? ミクとレンは……? あぁ、夢か。寝落ちしたんだった。久しぶりにベッドで寝ようかな」
はぁ、とため息をつく。なんかすごく大変な夢で、訳が分からなかった、気がする。
「じゃあ、おやすみ」と呟いて、朱莉はベッドのそばのフットライトを消した。
実装曲
奇跡さえも / Omoi (ユニット書き下ろし曲(という設定です)) (歌唱:初音ミク、桃井朱莉、梅宮風音、柚木創、梨田拓真)(3DMV)
はやくそれになりたい / キノシタ(歌唱:鏡音リン、桃井朱莉、梅宮風音)(アナザーボーカル:桃井朱莉/梅宮風音)
ビビッドヒーロー / DIVELA(歌唱:柚木創、梨田拓真)(アナザーボーカル:柚木創/梨田拓真)
妄想感傷代償連盟 / DECO*27(歌唱:桃井朱莉、梅宮風音、柚木創、梨田拓真)(2DMV)
目指せ毎日とうこう! 無理かもしれないけど。