転生したら果実だった件。 ☆そうだ! ボクが魔王様だ!☆ 作:ワソピース♪
記憶の残滓が自分の周囲を漂っているのが解る。
でも、それらを掬い取る事が一切出来ない。どれだけ掬い上げようとしても手から水が零れるかの様に留める事が出来ず、流れ落ちてしまう。
あれだけ、
歯がゆさが残るけれど、一部だけ例外があった。
例え手から流れ落ちてしまったとしても、手には水滴が残る様にほんの僅か、ほんの僅かだが
だから、自分の中での優先事項。最優先事項は決まっている。
「っほ~~。じゃあ、お前さんは時期が来たら白ひげの船から降りるってのか?」
「う~~ん……、直ぐにって話じゃないし、パパには一宿一飯どころの話じゃないくらい大恩があるから……、そんな簡単に白ひげ海賊団抜ける~みたいな事言いたくないんだけど、やっぱり僕にはしたい事があるから。認めて貰える様にここで働いてるんだよ」
「働いてる、って。見た目とのギャップが凄まじすぎて引くわ」
ロジャー海賊団の面々と共に酒を飲み交わすのも楽しい。
つい先ほどまで全力で殺し合いをしていたとは思えない程陽気で、楽しく、明るく、酒を片手に歌までうたえる。
もしも、船で待ってるトキがここに居たら、酒は絶対止められていただろうから、ハルトは出来る内に楽しむ事にしていた。
そして、ちょっとした身の内話をしながら。
「――――……アホンダラぁ。オレがテメェを認めてねぇ訳がねェだろ。当たり前の様に認めてるわ」
白ひげが話を聞いていたのか、酒を煽りながらハルトにそう言い返してきた。
でも、何処となくその言葉にはいつもの調子が無いのも知ってる。
「……ぼくが降りるって話になったら、パパ、凄く嫌そうな顔してるけどね」
ハルトの話に関しては、勿論白ひげも聞いてる。
話を聞いた当初は好きにすれば良い。海賊ならな、と白ひげは寛容な姿勢を見せていたのだが……年月を重ねるごとに、何となく嫌そうな顔をしているのが目に着く。
「それこそ当たり前だろうがアホンダラぁ!! テメーみてぇな、マジモンのガキをたった1人で降ろすのなんざ、まさに鬼畜の所業ってもんだろうが!!」
「うげっっ!! で、でもそんな直ぐの話じゃないってば!」
「あ~~、まぁ、世間じゃ俺の事《鬼》だなんだ言われてるが、そりゃ、俺も嫌だわな~。赤子ほっぽりだすとか」
「だーかーらー直ぐにじゃないって! それにもう赤子でもなくなってるってば!」
「大して変わんねぇじゃねぇか! わっはっはっはっは!」
白ひげ(お仕置き弱)パンチを頭にゴツンッ! と受けるハルト。
ロジャーもその辺りは白ひげと同意している様だ。戦場で、若しくは敵対する海賊、海軍らと戦う時のロジャーの姿はまさに鬼! と呼ばれる程のモノではある……が、それは強さゆえの象徴、仁義ある戦いにおいて恐れられている異名であり、真なる意味で鬼畜な所業はした事が無いし、するつもりも無い。何よりも自由で居たいし、前人未到の世界一周は目指しているが、越えてはならないラインと言うモノは明確に定めているから。
「だ、だいじょうぶだよぅ……。パパ、ほんとに優しいんだから……」
「る、るせぇ!」
「おーおー、ニューゲートが顔赤くしてらぁ! パパか! こりゃ、おもしれぇ! ……
「喧しいわ!!」
また、ロジャーと白ひげはケンカを始めてしまった。
仲良いのか悪いのか、ただただケンカ好きなだけなのか、解ったものじゃない。
「わっはっはっは! そりゃ、お前も人の事言えねぇなぁ! ハルト!」
「ちょっと、心読まないでよ、おでん」
「お前さんの考えてる事なんざ、手に取る様だわ! ……っつっても、俺も白吉っちゃんとは同意見だ。小せぇ子が2人も居る本物の
おでんは、にっ、と笑うとハルトの頭を撫でながら言った。
「お前も海賊なんだ! 自由にやろうぜぇ!」
「ッ———うん!! ……あ、でもねぇ」
ハルトはおでんの言葉に思わず感動しそう―――になったが、直ぐに息を潜めて遠い目をした。
「パパってば、一緒にやってやる!! って感満載だったから」
「そりゃ、ほっとけねぇだろ。白吉っちゃんがぱぱなら、オレぁお前の叔父になるんだぜ? オレだってついてくぞ。誰とだって戦ってやるし、襲おう奪おうとするもんがいたら承知しねぇ!!」
「……本当、男前が多すぎて良いよね。
唯一、僅かに漂う残滓から掬い取った僅かな記憶。
それらを組み合わせ、どうにかこうにか思い起こして、プランもそれなりに練った。
目的の為の正面衝突は、……正直、後々を考えると分が悪い。
相手には、キレイさっぱり消し去った! と思わせなければならないのだから。
「有象無象な海賊相手なら、絶対に問題ないと思うんだけど……、
「ふーん。……そりゃそうか。つまり色々と多彩な妖術、能力を操れるハルトが適任って訳か?」
「そーそー! 流石おでん! 解ってくれた?? ……後は、トキさんをどうにか抑えてくれると助かるよ」
白ひげの次に……、いや、一番大きな関門はトキだったりする。もう1人の息子の様にあつかってくれて、嬉しいのは嬉しいんだけど……、ヤバい所に飛び込もうとしていたら、それもこの
「あぁ~~、そりゃ難しい相談だなぁ」
「かかあ天下になっちゃってんじゃないよ。まったく」
心苦しいけれど、ハルトは目的の為にトキをも振り切るつもりではある。
勿論、後でしっかりと再会する事だけは約束して――――。
この時のハルトは、再会できると信じて疑わなかったのである。
そして、更に言えばこの時は考えもしなかった。最大の関門だと思っていたトキ関係が、アッサリと突破してしまう―――などと言う事に。
「わはっはっはっは! 飲み直すぞニューゲート!」
「グラララララ! 上等だロジャー!」
ある程度楽しんだ様な2人は、またいつの間にやら笑いながら戻ってきた。
シッカリとそれぞれの
「よーよー! ハルトぉ! 飲んでっかぁ!?」
「ちょっと飲み休み、食休み~だよ、シャン兄」
「そかそか! ならもっとのめのめ!! 迎え酒じゃ~~!」
「ぐおっっ!?」
顔を真っ赤にさせて、いつの間にかやってきていた赤髪のシャンクスがハルトに腕を回しつつ、酒を思いっきり飲ませた。ラッパ飲みで。
「幼児虐待、の様に見えなくもねぇな~~」
「ぷはっっ! そー思ってんなら止めてよ、バギー!」
「ギャハハハハ! 酒の席で酒を止めるヤツなんざ、海賊とは言えねぇよ!! つか、何でシャンクスだけ、兄で俺の事ぁ、呼び捨てなんだよ!!」
「だって、バギーって呼びやすい名だし。シャンクスは、文字数多い。シャンクス~って呼ぶより、シャン兄! って呼んだ方が呼びやすい。語呂も良い」
「だーーっはっはっはっは! 単純に、器の違いってヤツを見計られた結果なのさバギー! 気ぃ使われちまったなぁ? オレとお前じゃ、そんなもんだ!」
「今、名の呼びやすさ、っつってたよなぁ、クラぁ!! テメーの名が無駄になげーからだろーが!」
「無駄とはなんだオラぁ!!」
違いに酒の飲ませ合いに発展。
あかっぱなに負けづと劣らない赤さになっていく2人。そして、此処からが長い。
「―――ほんっと、オメーはよぉ。何処でも誰とでも直ぐ仲良くなりやがる」
そこに、いつの間にやらやってきたマルコがハルトの横に腰かけた。
「そりゃ、パパたちが認めてる相手に限る、だよ? 当然」
「……だろうよい。それくらい解ってる」
確かに相手は敵だ。
何度も何度も、海軍を除けばぶっちぎりでぶつかってる最早、この時代の宿敵、象徴とも呼んで良い相手だ。
でも、だからと言って憎み合ってる訳じゃない。
海賊として、生きている以上。海賊として、この海を進んでいる以上、ぶつかったときは、大きな力でぶつけられた時には、同じくぶつけ返すだけなのだ。
そして、満足いったら後は宴で〆る。それがロジャー海賊団と白ひげ海賊団のルーティンの様なモノだ。
そんな時———だった。
「大変だ!! ロジャー船長が白ひげに頭下げてる!!」
誰が叫び出したのか、その声が場に響き渡った。
陽気な歌声さえ響くこの場で、一気に空気が緊迫、殺伐としたものへと変わっていくのが解る。
如何に楽しそうに、仲良くケンカの後は宴だ! をやってたとしても、お互いどちらが上とかは無い、同等の関係だ。頭を下げる、と言う事は己を相手より下にする行為。
それが、一船の船長、それも大海賊であるロジャー海賊団船長のロジャーであれば尚更見たくない。
「おい!! やめてくれロジャー船長! 相手は、敵なんだぞ!! 一緒に酒呑んでるけど敵なんだぞ!!」
「うん。そりゃそうツッコむよね。と言うか、何あったの? アレだけ楽しそうにケンカして、楽しそうに酒盛りして、何処に頭下げる要素があった?」
「あああ!? こっちが聞きてぇよ!! おら、ハルト! お前んトコの親父止めてこい!」
「えええ、いやいや、どっちかと言えば、ロジャーの頭を上げさせに行きなよ」
ギャバンが思わずロジャーに声をかけ、いつの間にか隣で浮いて絡んできたハルトに絡み返して……周りも騒然とする。
そうこうしている内に、事の発端が明らかになった。
「フザけんなロジャー!!! 俺から《家族》を奪おうってのか!!?」
「うわああ―――――!! 親父が怒ってる!!」
「ちょっっ、島が沈むぞ!!??」
大海賊白ひげ“エドワード・ニューゲート”の怒りによって。
島が揺れる、海そのものが揺れる。世界を揺らす怒りによって。
かの大海賊が最も嫌う事、最も許せない事。何よりも大切なもの。
それは仲間の命。……家族を奪おうとする者は如何なる相手だろうと許さない。
その家族とやらが誰を指すのか、まだまだハッキリしないが……いや、大体察しがついた。
今の今までロジャーと一緒に話をしていて、今も彼らと共に居る男は、白ひげを除けば1人しかいないから。
「白吉っちゃん……! 行ってみたい! 行かせてくれねぇか!!?」
3人の内の1人はおでん。
ワノ国の侍、光月おでんその人だったから。
ロジャーはおでんを引き抜こうとした。閉ざされた国から、侍が飛び出してきたのだ。興味がない訳がないだろう。……ただ、それ以上におでんの力をロジャーが欲しているのも理解できる。
おでんは、その力量は勿論の事、何よりこの場で唯一【
いや、恐らくロジャーは、おでんの能力以上に、その人柄にも一目置いてる事だろう。或いは惚れこまれたか。
勿論、おでんの願いに対して白ひげの顔は物凄く歪む。顔はこれでもか、と引きつっている。
「メチャクチャ イヤそう!!」
「あああ゛!? イヤそうだと!? イヤに決まってんだろうが!! オレとお前は兄弟分だろう!!!」
「1年だ! 1年だけ!! 頼む、頼む白吉っちゃん! オレ、コイツと一緒に行ってみてぇんだ!!」
その後———
いや、鎮める事が出来たかどうかは甚だ疑問。
何せ最後は殆ど喧嘩別れみたいなモノで、会話すらもう無かったのだから。
ただ、白ひげはおでんに対して『船から降りろ!!』とは言ってない。
何時帰ってきても構わないと言うスタンスは崩してない。
その代わり……前回以上のヤキ入れが待ってるかもしれないが。何でも、前回は3日3晩 船に引き摺られて、鎖を離さなければOKなモノ。……中々に鬼だ。
「……まさか、おでんがここから出ていくとは思わなかったよ。ちょっと前まで、ぼくが降りるって話してなかったっけ?」
「わっはっはっは! そうさそうさ! オレもそうさ! 実に驚いてる!! ……でも、それ以上にワクワクしてるんだ。戻ってきたら、いっぱい聞かせてやっからな!? それまで、ハルトも白吉っちゃんを頼むぞ!」
ズキン、ズキン、と頭が痛くなってくる。
記憶の断片と言うのは本当に嫌らしいモノだとこの時程思った事は無い。
目標に関する記憶はハッキリと残っているのにも関わらず、他の記憶がまるで穴だらけで全く繋がって来ないのだ。
ロジャーやシャンクスと言った彼らの名は間違いなく覚えていると言うのに、思い出そうとすればするほど霞がかって見えやしない。
「わっはっはっは! なんだぁ? 心配してくれてんのか?」
「―――そりゃ、もう随分な付き合いだし……?」
「幼子にここまでの心配されるたぁ、初めてな経験だな。……この先、どんな冒険が待っていようと、お前さん……ハルト程の衝撃はきっと訪れねぇ。それだけは断言できる!」
「この海で、それは多分無いんじゃない?」
「わっはっはっはっは!! かもな!!」
おでんを見れば見る程不安になるのは何故だろうか?
そんな顔がきっと表に出ているのだろう。おでんは、そっとハルトの頭を撫でた。
「おでん様。我々は残りますよ」
次に話しかけたのはイゾウ。
ワノ国より、おでんと共に? 白ひげの船に乗って世界を冒険していたクルーの1人であり、元はおでんの従者の1人だった。
本来なら、おでんの傍に居るのが通常なのだが……この船に乗って過ごして来て考え方が変わった様だ。
「おお、勿論だ。お前らももう立派な海賊だからな! 自由にやろうぜ!!」
ワノ国の窮屈さ。
おでんがいつも口癖の様に言っていた《窮屈》と言う言葉の本当の意味をその身で知ったイゾウは、笑顔を向けた。
「……トキさん」
「名残惜しいですが、ハルト。また、会いましょう。無茶しては駄目ですよ?」
ただ、離れるのが寂しいと言うだけじゃない。
どうしても、ズキリと頭が痛む。思い出せないのが歯痒い。
「つぎ! しょうぶ、だからな! はると!!」
手を必死に伸ばしてくるモモの介。そして母の腕の中で笑顔を向けてくれる日和。
何だか輪郭が霞んで見えてしまうのは……気のせいなんかじゃない。でも、その根源がどうしても解らないんだ。
「おでんさん」
「ん? おう」
トキは、日和をおでんに預けるとハルトを無言で抱きしめ続けるのだった。
今生の別れ―――と言う事でもあるまい? と陽気にしばしの別れの挨拶を夫々が済ませていた。
因みに、かくいう白ひげは……もう出航の時間が来てるのにまだ出てくる様子はない。
ハルトは、そんな白ひげの方へとふよふよ~~と飛んでいき、眼前でニコッと笑いながら言う。
「ほらほら、パパ。いつまでも拗ねてないでさ? また戻ってくるよきっと。だっておでんだもん」
「誰が拗ねてるだアホンダラぁ!!」
ぐおおお! とハルトは、白ひげのその声量だけで思いっきり吹っ飛ばされそうになったけれど、何とか堪えて留まる。やっぱり素直じゃない。ある程度は理解を示している様なのに。
息子と呼ぶ船員は沢山増えたが、弟と呼ぶ存在はおでんだけだ。だからこそだと言うのも勿論解るが。
「オヤジオヤジ! もう行っちまうよ! 見送らねぇんで??」
「ハルトの言う通りだ。拗ねんなよぅ、オヤジィ~!」
「それに、ロジャーのヤツが礼にありったけの積み荷、置いて行きましたよ! ほらほら! スゲー額!!」
「換金しねーと詳しくは解らねぇけど、これ……下手すりゃ10億くらい?」
「食料の量だってやべーー!」
ここで漸く白ひげは動いた。
と言うより、怒りの火が着いた。
「食料は突き返さねぇかアホンダラぁァァ!! おでんの一家を空腹にさせたら許さねぇぞ!!」
再び海と島を揺らせる。
ほらやっぱり、心配しているんじゃないか。
おでんの海賊としての第一幕は終焉を迎える。
そして―――ハルトの物語は更に先へと進んだ。