エヴァのない世界の3年後   作:ヨスキ

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再会

 国鉄ウベシンカワ駅南口ロータリーには、学生や社員がそれぞれ軽い足取りで帰路に就いていた。海の色を映した青色の空が、紫色の幕を引いて橙色を交えて、まばらにある白色の雲を覆っていくと、頑張った一日を終えようと浮足立つ人たちが祭りにでも向かうように流れていく。

 僕とマリは、会社を出てすぐに合流して、一緒に電車に乗ってウベシンカワ駅に着いた。これからどこか外でご飯を食べて、どちらかの家に泊まる、という話になった。いつもと同じ。これが今の日常、だ。パイロットとしてではなく、一般企業の社員として働いているが、とても楽しく日々を過ごしている。

 紺のスーツの薄手のハーフコートの僕と、ピンク色のパンツスーツのマリ。マリは最近ではおさげを作ることもほとんどない。大人の雰囲気、だ。

 ネオンジェネシスとしての日々を過ごして、取り戻されたことの一つに、季節がある。わずかだが、四季、というものがあることを肌で感じるようになったことは、僕が考えていたこと以上の喜ばしい変化の一つだった。肌寒いという感覚が、愛おしく思えるほど、日々は充実していた。もしかしたら、僕たちが暮らしているこの国でも、雪が見えるようになるかもしれない。

 駅舎の前には広いロータリーがあり、まばらな人の影が歩いて分かれ、徒歩で自宅に向かう人や、自転車の駐輪場に向かう人、あるいは本数の少ないバスに乗るため停留所へ向かう人がいる。

 駅をでて左手に伸びるバスへの道の間に目をやると、アルミ製の柵に腰を預けていた女性が、ゆっくりとこちらに正対して立つのが見えた。

 明るい茶色で軽くウェーブしている髪が肩下まで伸びボリュームがある。薄いフライトジャケットにスリムジーンズなのでワイルドに見えるが、スタイルがよく映画に出てきそうだ。脇を通る中年男性が、振り返っていた。

 

「アスカ!」

 

 僕がそういうと驚いたようにマリも振り返った。マリの視線もアスカの姿をとらえる。マリの口元には自然と笑みがこぼれる。

 僕たちはしばらく顔を合わせていない。時折メールを返すくらいだが、村での生活が楽しいのか、マリには最小限度の、僕には、時折皮肉った憎まれ口のメールをたまに返すくらいで、実際に会ったのは1年以上前だろうか。

 僕ら二人とアスカの距離は、まだ20メートルくらい離れていた。お互いの存在を確認し歩いて近づいていたが、アスカの方はというと正対して手をポケットに入れたまま動かない。嬉しそうに近づく僕の右後ろをついていくマリの顔が、笑顔からけげんな表情に変わったのが目の端で見えた。

 

 「ダメ」

 

 あと10メートルくらいというところで、グッとマリは僕の袖を引いて止めて、僕とアスカの間に入ってアスカの視線を射すくめていた。アスカというと表情も変えず動じず、まっすぐこちらを見ていた。僕を見ているのかマリを見ているのか、よくわからない。

 

「ダメだよ」

 

 マリが少し力を込めて、アスカに聞こえるようにもう一度言った。

 何がダメ、なのか、何が起きたのかもわからなかった。ただマリの声色と、二人の表情を見て、どちらかが話し出すまで待った方が良い気がした。

 マリは呼吸が深くなり、薄いグロスを塗った唇を少しだけ開けてなおもアスカを見ていた。左手は僕の胸付近にあてられて、これ以上アスカに近づかないように添えられている。アスカは仁王立ちのまま動かない。表情も変わらない。にらむでもなく、怒るでもなく、まっすぐマリを見ている。

 古代ローマの劇でも始まるのではないかという緊張感だった。まだ何も会話をしていなかったが、去れ、そうすればこちらからは追わずにいてやろう、とか言い出しそうだな、と呑気に思っていた。緊張感はあったが、マリとアスカがまた会えたことの嬉しさが勝っていた。はたから見れば、駅のロータリーで、女性二人とその後ろに男が立っていてにらみあっているのだから、修羅場の予感がありそうだが、僕にしてみれば仲の良かった二人が久しぶりに会えたから、ただうれしかった。

 ほんの数秒間二人の表情を交互に見ていたが、先に動き出したのはアスカの方だった。フライトジャケットから手を出すと、速足でこちらに近づいてくる。マリが一瞬うろたえたものの、負けじと相手に近づくと、二人のテリトリーが重なり合った。アスカがマリの体をどかそうと肩付近に手をかけようとした瞬間、マリはその両手の首を、両手でつかまえて両者は膠着した。

 

 

「ダメだって、言ってるで、しょ」

 

「な、に、よ。どきなさいよコネメガネ」

 

「もう昔の呼び名で呼ばないでほしい、なぁ。お、と、ななんだから。」

 

「大して昔じゃないでしょ」

 

「でもおとなだもん」

 

「いい、から、どきなさいよっ」

 

「だからダメだって」

 

 相当力が入っているらしく声が震えていて、気迫のこもった声でとぎれとぎれにしゃべっている。マリは口だけ笑顔で対応しようとつとめているが、目が笑ってない。たまに見る猫っぽい表情だ。

 何が起きているかはわからないが、気高き女性同士の戦いには、参加する資格がないと思って二人の行動を眺めていた。行く末を案ずる、とはこういうことを言うのだろうか。

 そういえば、父さんと槍を持って向かい合って、ちょうどこんな風に対決したっけ。

 そんなことを考えていた。

 ATフィールド同士がぶつかる音が聞こえた気がした。

 

 

「あんたに用は、な、い、のよ。」

 

「シンジ君に何のよ・う・か・な」

 

「あんたに関係ないでしょっ」

 

「関係あるもん」

 

「うるさいな、はやくどきなさいよ」

 

「ダ、メ」

 

 二人の両手は少しずつ上がったり下がったりをしていた。

 

「アスカ、どうしたの」

 

 マリの横に歩み寄ってアスカに話しかけると、二人ともハッとしてこちらを見た。ロータリーを歩く何人かが、こちらを心配そうに見ていることに気が付いて、さすがに事の収拾に動いたのだが、二人は周りの視線を忘れるほどだったようだ。

 アスカは目線を一瞬僕に向けたものの、マリの腕には相変わらず力が込められていたから、また視線をマリに戻して膠着状態が続いた。人目を惹く美人の女性二人は、駅前の道路でカマキリ同士の喧嘩のような姿を見せ続けた。

 その時アスカの右肩付近に何かキラリと光る物を見つけた。なんだろう、と思って手を伸ばすと、アスカもマリも驚いて僕の方を見た。お互いが腕の力を弱めたところで、マリの肩に手をおきつつ、もう片方の腕を伸ばして、アスカのフライトジャケットについていた何か小さいものをつまんだ。アスカは少し緊張して体をこわばらせたが、僕はそれをつまんでよく見てみると、すぐに地面に捨てた。ガラスの破片だった。

 

「なんかガラスついてたよ。どうかしたの?」

 

 一瞬アスカがきまずい、という表情をした後、力を抜いてマリとのつかみあいをやめた。それから自分のジャケットに手をつっこむと、顔を横に向けて不機嫌そうに言った。

 

「しらない」

 

 これはたぶん、何か知ってる。

 アスカのその表情を見て、何か懐かしい気になって、つい笑ってしまった。

 

 

 

 

「なに笑ってんのよ」

 

「いや。フフッ。」

 

 バカシンジ

 相変わらず軽い笑顔してる。大人になっても。

イライラして車に乗って飛び出した。山の中を走らせていたら、気が付くと街の方に向かっていた。ただ家に帰りたくなかったから、意味もなく街の中に入って、適当な駐車場にケンスケの車をとめてウロウロしているうちにこの駅に来てしまった。

今さらまた人前でコネメガネと組みあうわけにもいかず、両手をまた両ポケットにしまって話をすることにした。コネメガネは眉間にしわをよせ、片方の腕をもう片方の腕で抱いて、斜に構えてから横目でこのあたしの動きを監視している。

 

「久しぶりだねアスカ。街に用があったの?」

 

 優しい笑顔で話しかける。なんだか気恥ずかしくなったが、反動で余計に腹が立ってくる。子供のようだと自覚していても、ぶぜんとした表情になってしまう。横目でその表情を見ていたコネメガネが、さらに不機嫌な顔になっていった。

 

「バカシンジ。ちょっと話があるんだけど。」

 

「うん。なに?」

 

 前よりも声が低くなって大人になったのに、どうしてこう鈍感なんだろうか。立ち話でさっと話せるようなことじゃないのは分かりそうなものだが。

 一瞬開いた口から適切な言葉を発せず、視線をそらして口をとがらせた。

 そもそも、話さなければいけない何かってなんだっただろう。

 ケンスケの言い方に怒って家を飛び出して、あてつけのようにシンジに会いに来た。大人げない、格好の悪いことだという自覚もある。それでも電車から降りてくる人影の中からシンジの姿を探し続けるのをやめなかったのは、何か自分が話さなければならないことがある気がしたからだ。隣にはコネメガネ、マリが一緒にいるだろうということも分かっていた。

 結局のところ自分でも何をすべきか理解していなかった。

 

「そういえば、どうやってここまできたの?」

 

「ケ・・・電車。」

 

 ケンスケの名前を出すのがはばかられて、とっさに嘘をついた。眉間にしわを寄せて監視しているコネメガネの前だったので、恥ずかしかった。本当はケンスケの車が、近くの駐車場であたしの帰りを待っている。

 

「ホームか改札で待ってたらよかったのに。携帯は?」

 

「忘れた」

 

 ロータリーでも人を見失うほどの人数はないのだが、電車で落ち合うならわざわざ改札の外にいると入れ違いになっていたかもしれない。こちとら車で来て、離れた駐車場にとめているのだが、改札前で待っているのもバカっぽい。

 もし今日会えなかったら、そういうものだとあきらめもついたかもしれない。

 第3村に通じるローカル線と、シンジたちが使う線はこの駅で合流する。村に行くには電車を利用する方法もある。ただ本数も少ないし、その後もバスや徒歩で移動が必要なので、車が使えるのであれば、車の方が便利だ。そのうち、この駅に乗り入れる本数が無くなってしまうかもしれない。村はどんどん小さくなるのかも。

 第3村へ通じるホームで、対岸のホームにいるバカシンジとコネメガネが楽しそうに話すのを、見たことがある。いつかのホームで、レイと楽しそうに話すバカシンジを苦々しく見た覚えがあって、でもそのいつかが思い出せなくて、不思議な感覚になった。

 バカシンジとコネメガネがホームで仲良くしているのを見て、その時は何も思わなかった。楽しくやってんのね、ぐらいだ。不満なんてなかった。わざわざ話しかけにもいかなかった。

 今日は、その時と少し勝手が違った。横恋慕なんて、そんなことは考えていない。ただ、何かこのバカに何かを言わなきゃいけない気がしただけだ。あるいはケンスケに対して、何かしたいと思っただけだ。そんなあたしもバカだけど、とにかく行動しないことにはあの村で生きていくこともできない。

 そう思っていたから待ってたのに、やはりコネメガネが一緒にいた。

 なんであんたがそこにいんのよ

 

 

 私から多くは口を挟まなかった。

 アスカはシンジに会いに来た。何か強い気持ちをもって。それは間違いない。

 詳しくはわからないが、たぶん相田君と何かあったんだろう。それでシンジを何かを頼りにきたのか、何かを決意してここにきた。

 それはダメだ。

 ダメだよ、姫。

 アスカは好きだ。出会ってすぐに好きになった。かわいくて、健気で、力強くて、気持ちよくて、燃え尽きてしまいそうで、儚げで、切ない。

 頭が良くて、楽しくて、同じ年の男の子に恋をしていた。

 男の子も優しい心を持っていて、年相応に自分のことに手一杯で、葛藤して、大きすぎる悲劇を抱えて、自分の殻にこもっていた。料理が得意で、笑顔が可愛かった男の子だった。その少年は大人になって、父親を超えて、世界を変えてみせた。

 私も多くの狙いがあって動いていたが、世界が明日滅ぼうと、明日自分の命が尽きようと、その瞬間まで自分の生を楽しむことが自分の信条と思っていた。二人といえば、世界がハチャメチャになったところで、二人の気持ちが地球を中心にする二つの月のように離れていても、いずれまた引き合ってめぐり合うのではないかと思わせる何かがあった。きっと運命は味方していた。

 お互いが、心の奥底でまためぐり合うことを望んでいたこともわかっていた。

 そんな二人を見ることが楽しかった。

 二つの月は手を取り合う距離まで近づいて、最後に素敵な挨拶を交わして、一緒になることはなくまた離れてしまった。素敵な別れだった。

 

「僕もアスカの事が好きだったよ。ケンスケによろしく。」

 

「姫。お達者で。」

 

 顔を赤らめていた彼女にそう言ってからもう何年かの月日がたった。二人の心が一番近づいた、歴史的な邂逅だった。奇跡的な偶然が二人を引き合わせて、運命的な必然のように二人は離れていった。涙が出るほどかわいらしいステップを踏んで、舞台の両袖へはけていったようだった。

 新しい世界にはエヴァがなくなった。思い起こすのは母であり、父であり、絆であっただろうが、それらにも別れを告げて、少年は決断して大人の香りをたずさえるようになった。新しい世界で、私は彼と手を取って生活をしている。自分自身がそうなるとは考えていなかった。それでも自然にお互いをひきあって、今も一緒にいる。

ネオンジェネシス、非コア化、戻る命、戻る大地と海、戦後復興、怒涛の展開で暴力的に広がっていた世界がたたまれていって、エヴァパイロットだった私とシンジは、役目を終えて新しい生活を見つけようと街に出た。ドンパチとは全く関係のない、民間企業に入って、直接的ではない平和的な精神的ドンパチをしながらなんとか生きている。

 エヴァンゲリオンを知る第3村で生きる人や、元クルー、元関係者たちは、同じようにコミュニティを残しながら、戦時中だった世界の考え方を、もう必要のない価値観だと理解していて、昔からの間柄で身を寄せ合ったり、あるいは昔を忘れて新しい世界観に身をゆだねて新しい生活を始めたりしている。そうした人たちから、アスカの近況を聞いて、再会したのはしばらくしてからだった。

 戦いが終わった後も、私や、特にシンジは、エヴァのない世界を望んでいたから、以前の人たちと距離をとって生きていこうという意識が強かった。

 会いたいくせに

 クレイディトに間を取り持ってもらって、第3村に行ってみんなと会う機会が設けられた。アスカは相田さんと一緒にいて、シンジと顔を合わせる前から、透明なケーキでもぶつけられた後かのようなゆがんだ顔で迎えていた。そんな姫の分かりやすい態度がまた愛おしく、いつもどおり私は飛びついたわけだが。

 それでも、後悔なんて微塵もなく清々しい気持ちで話すシンジが、ずいぶんと大人になったんだと、安心してみていられた。

 姫の方も、仏頂面だったけど、照れているのが隠しきれていなくて、その表情を見守る相田君の顔も、また愛おしそうだった。

 さて、姫様。

 今宵のわがままはどのような?

 ワンコ君を今までどおり好きにできると、思いなさるな。

 

 

 

「ごめんなぁツバメ。研究所に行かなあかん用事ができてなぁ。先に寝ててなぁ」

 

「んーん。いいよ。」

 

 ヒカリに抱っこされたままのツバメは、詳しいことがわからなくても、父の申し訳なさをやわらげるような反応をするようになっていた。

 控えめに言って天使のようにかわいい反応だ。出された父親の手をにぎってみせて、自分は母と留守番だということは理解していた。

 トウジの家の前でヒカリさんに話をして、用事が出来たので研究所に二人で行くと告げに来ていた。いつものとおりトウジがツバメちゃんをかわいがってから、家の中で待っててと話して地面におろすと、言うとおりにトコトコとおじいちゃんのいる家の中に消えていった。ちょっと前に生まれたばかりだった気もするが、ハイハイもバブバブも通り過ぎてしまったことに、自分が年をとって月日の流れが速くなったと感じた。

 優しいまなざしでツバメちゃんを見送ってから、家の前でヒカリさんが両手を組んでトウジに正対してこういった。

 

「アスカのことでしょ」

 

 いつもとは違う低い声だった。

 

「なにが?」

 

 ギクッとしたトウジがとぼけようとしてくれるが、ヒカリさんがジロッとトウジと僕を見渡すと、僕ら二人は背筋を伸ばして視線をそらしてしまった。大人になってから、中学の時の委員長然とした態度はとらなくなったが、ヒカリさんが怒るときは昔以上に委員長たる迫力が備わる。トウジは頭が上がらないし、僕はしたことで後ろめたくて、その雰囲気に一切抵抗できなかった。中学校の時の関係の方がまだかわいいものだったのに、不思議なものだ。

 

「アスカが家出して、探しに行くんでしょ?」

 

「なんのことや?」

 

「とぼけても無駄。もう知ってるの。すごい表情で相田君の車で走っていったのを見た人がいたんですって」

 

 さすが村、だな、と思った。もう各家庭の夕食の話題をさらってしまっているだろう。少し気持ちが落ち込んでしまった。そういえば何人か自分の方を見て話をしていた人もいたようだ。

 

「んー、まぁそうやねん。せやから、探してうまく話してくるわ」

 

 観念して事実を答えるトウジだが、説明というより懇願という感じだった。

 

「話すのは相田君よね」

 

 ギクッという自分の心臓の音を聞いた。腕を組んだままのヒカリさんの視線が痛い。トウジは気の毒そうに僕を見るだけだ。

 

「そうだね。ちゃんと話をして連れ戻してくるよ」

 

 素直にそう答えた。

 

「ダメ、強引に引っ張っちゃ。ちゃんと話さなきゃダメよ。」

 

「・・・うん。」

 

 ヒカリさんは細かい事情は知らないから、みなまではいわん、と言いたげな、武士のような表情だった。さながらお白洲で裁きを受けている感覚だ。内容を告げたら、昔のようなカミナリが落ちるかもしれない。トウジの父親の威厳も失墜するほどの、巨大な雷だ。

 

「夫婦みたいに暮らしているんだから、何か二人にしかわからない問題があるんだろうけど、アスカを泣かしたりしないでね。」

 

「うん。はい。」

 

 あまりの迫力につい言い直してしまった。

 

「優しくね」

 

「はい」

 

「あなたも、助けてあげてね」

 

「はい」

 

 これじゃ委員長と言うより、怖い先生とダメな生徒だ。

 

 

 運転席に乗って、トウジは助手席に乗り込んだ。ヒカリさんは車まで見送りにきた。トウジが窓を開けてヒカリさんと話している。

 

「気を付けてね。」

 

「うん。」

 

「何かわかったら連絡して。」

 

「わかった。」

 

「くれぐれも泣かさないでよ。」

 

「わかったて。」

 

「帰りは遅くなるだろうから、帰りの運転も気を付けて、あまり遅いようなら泊っていいからね。」

 

「うん、わかった。ありがとうな。」

 

 シートベルトを締めている間にそこまで会話を続けていた。昔みたいに委員長としてのヒカリさんを久しぶりに見た気がして、昔とは違うトウジの、温かくも一辺倒な返答のやり取りを見て、やはり、うらやましかった。

 車を走らせて、バックミラーを見ると、ヒカリさんはこちらが見えなくなるまで見送っていた。

 少し車を走らせて、トウジがまぶしい目線をミラーと外の景色に送って、一息ついてから、照れ隠しにわざとらしく言った。

 

「おっかない、かみさんやなぁ!」

 

 二人で笑った。

 




 ウベシンカワ駅っていうところにしよう、本家がそうだったから、みたいなことを考えていました。実際というか本家の解釈はこう、みたいなのはあるんでしょうけど、自己都合での願望二次創作です。マリさんのキャラクターについて、ってことについて、見直してみると、あぁそうか、たしかに深堀しようとは思ってなかったなぁ、と思ったりして。
 トウジヒカリ夫婦のやり取りが気に入ってます。
 あとTVシリーズの方が気持ち入ってる気がする。なんであんたがそこにいんのよ、とか。
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