エヴァのない世界の3年後   作:ヨスキ

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家路

 

「いやあ、えぇもん見せてもらったなぁ。なぁサクラ。」

「ホンマやねぇ。お肌つやつやになったわ。」

「ホンマかいな。」

「ホンマやて。」

「んなことあるわけないやろ。ちょっと触らせてみぃ。あ、ほんまや。」

「にゃはははははははは。」

「フフッ。」

「いやケンスケも男上げたなぁ。昔は碇ほどモテへんけど、碇みたいにパっとせん男やったのに。」

「ひどいな。トウジも似たようなもんだったじゃない。」

「やっぱあれや、男は女が付いてくるような男じゃなきゃいかんな。」

「いやおにいちゃん、今回女付いてきてないで。逃げた女を男が追いかけてきたんや。」

「せやったな。」

「時代は変わったんやな。」

「そういうこっちゃ。女は男が付いてくるほど魅力的じゃなきゃあかんのや。」

「女には辛い時代やな。どうやったら男付いてくるようなるんかな?」

「そらお前あれやろ。ハートをしっかり射止めといたらええんや。」

「どうやって?」

「そらお前こうやってやな・・・こ~~~~う・・・」

 トウジがサクラさんの胸元に、弓矢の形をしてしっかりと溜めてから

「ビシッ!!」

「ウウウウッッッッ!!ちょっと私にもやらしてぇ。こ~~~~う・・・」

 サクラさんがトウジの胸元に、弓矢の形をしてしっかりと溜めてから

「ビシッ!」

「イヤアアアアァァァァァン。」

「なんで女になってんねん!」

「うるさいのよおっ!」

 いつの間にか近くに来ていたアスカが、真っ赤な顔で叫んでいた。

 

「最初っから最後まで、声がちょっとだけ聞こえてんのよぉ!うるっさいのあんたらはぁ!!」

「うるさいのはお前だぁ!今何時だと思ってんだ!」

 びっくりしてみんなで見ると、公園に面したアパートのベランダから、40代くらいの男の人がパンツと下着姿でこっちにむかって怒鳴っていた。

 どうやら近所迷惑だったようだ。

 みんなで慌てて車のほうに駆け出そうとしているが、アスカだけ憤怒の表情で怒っている。ケンスケが慌ててジャケットを引っ張ってアスカを呼んでるけど、喧嘩腰がおさまらない。僕も手助けした。

「夜中に乳繰り合ってんじゃねぇ!」

「うっさいわね、おっさん!なんだそのパンツ!」

「やばいやばい行こう行こう行こうアスカ」

 7人が笑いながら駐車場に走って行って、一気にバンに飛び乗って、すぐにケンスケが車を出した。後ろの方でおっさんががなっているのが聞こえるから、急発進で逃げ出した。

 

 車の中でみんなクスクス笑っていた。アスカ以外。アスカは、きっとまだ恥ずかしかったんだろうけど、みんな、アスカが心を開いて仲直りしてくれたことで安心していたから、幸せな気持ちになっていた。

 ケンスケが運転して、トウジが助手席。

 右側が前からアスカ、リツコさん。

 左側が前からサクラさん、マリ、僕。

 アスカを見ると不満げというか、恥ずかしいのを隠してるのか足を組んで、腕も組んでそっぽを向こうとしている。でも車内では中心だから、所在なさげといった感じで落ち着かなかった。

「アスカさん。良かったですねぇ。私あんなに感動したのはじめて」

「ンンッ!!!」

 不満げという雰囲気を存分に出しながらのどを鳴らして、アスカはサクラさんを威嚇した。サクラさんはその雰囲気を感じ取って黙ってしまい、助手席からのぞきこんできたトウジは、下あごを思いっきり引いて顔を隠した。その表情がすでに笑わせてきているから、僕もマリもリツコさんもクスクス笑っていた。

 それでもアスカが不機嫌な顔をしているから、笑っちゃいけないんだという雰囲気になって車内は割と静かになった。

「碇、足元に缶コーヒーの段ボールあるから飲んでいいよ。」

「やった。ありがとう。」

 僕がガサゴソ缶コーヒーを探っている間も、誰も車内でしゃべらなかった。

トウジが耐え切れずしゃべりだした。

「中学校の時に、スペーシーマンってやってたやん?」

 突然話し始めた内容が何を意味するのかわからなくて、みんなきょとんとしていた。

 スペーシーマンは僕たちが子供の時にやっていた特撮番組だ。特に夏休みに昔のシリーズを集中で再放送していて、小さい子供はもちろん中学生でもみんな見ていた。相手の怪獣も魅力的で、ゼストン、ブルーキング、バスター星人・・・。昼休みにみんなで物まねをよくしていた。

「さっきのおっさんのパンツ、スペーシーマンだったよな?」

 おっさんのパンツ。確かにそうだったかもしれない。 

 フフッと、サクラさんとマリがこらえるように笑った。アスカはまゆげをピクッとさせただけだった。

「きったない体してたけど、ちょうどスペーシーマンの上半身でなぁ?」

 バン!

「いたっ。アスカ僕じゃないよ。」

 アスカがケンスケの使っているヘッドレストをたたいた。とばっちりだ。

 マリもサクラさんも小さく笑いをこらえている。リツコさんも口が笑っている。

 トウジがかまわず話し続ける。

「ちょうど股間の中心が例のタイマーでな?」

「アハハハハハ。痛っ。ごめん。」

 バン!とアスカがもっと強めに叩いた。

 マリもサクラさんも、もうほとんどクスクス笑いだしている。中学の女子ってこういう笑い方を女同士でしていた気がするな。

 しばらく無言が続いた。

 トウジが頃合いを見てこりずに話し出す。

「やっぱあれかな?活動限界が3分っていう意味なのかな?」

「ハッハッハッハ。」

バンバンバンバン!

真っ赤な顔でアスカが何回も叩いているけど、もはやケンスケも笑うのをやめなかった。

「プックククク」

 女子二人が顔を寄せて笑っている。

 トウジだけ真面目な口調なのが、また面白かった。

 また無言が続いた。

僕も笑いをこらえながら、缶コーヒーを口に含んでいた。

「おっさんの顔はバスター星人やったけど」

 おっさんの顔

「ブハッッッッッ!!」

 コーヒーをぶちまけた。

「キャアアアッ!」

「あぁっ!もうなにしてはるんですか碇さん!」

「にゃっはははははははははは。」

「もおおおおおおおおう!」バンバンバンバンバン!

「アッハッハッハッハッハ」

 トウジがサクラさんにハイタッチを求めてた。笑いながら口を押えて、サクラさんがハイタッチにこたえてた。

 もう止められなくて、みんな大声で笑いあった。

 笑いすぎて涙が出てきた。

 アスカは怒っていたけど、合間に僕やマリの顔を見て笑っていた。

 トウジは上機嫌でおどけてた。リツコさんも声を出して笑ってた。

 幸せな気分になった。

 

「シ、ふふっ。シンジ君、いつまで笑ってんの?」

「フッ・・・つ、・・・辛い」

 お腹を押さえて、笑いをこらえきれない僕を見て、またマリが笑った。

 サクラさんもアスカも笑っていた。

 それからトウジがバスター星人の笑い声を携帯電話で流して、もう一度みんなで大笑いした。

 サクラさんのマンションの前で彼女を降ろした。

 サクラさんは車から降りるとき、アスカの手をつかんで振りながら

「ホンマ感動しました。お幸せになってください。」

と、すごい真面目な顔で語っていた。その目がすごく真剣だから、アスカもあいまいな返事しか出来なかった。

 手を振って見送るサクラさんから離れたところで、

「やっぱりなんか似てるわね。」

とアスカがトウジに言うと、トウジは

「あいつ意外とワシよりヤバいで。」

と言った。

「知ってるわ。」

と笑いながらリツコさんが言った。

 

 僕の住むマンションの前で、僕とマリが降りた。せっかくだからと、みんなが車から降りて見送ってくれた。

「トウジ」

「おう」

「ありがとう」

「いやぁ楽しませてもらったわ」

と笑って言っていたのだけど、僕はその姿がまぶしかった。

「ずっと、笑わせながら、僕らを見守ってくれたね。」

 少しとまどった表情を見せたトウジだったが、顔の前に掌をひらひらさせて、おどけていった。

「ワシがそんな立派な人間に見えるかぁ?」

「見えるよ」

 掌のひらひらがとまった。

「見える」

 おちゃらけてたトウジの顔が、真面目な優しい顔になって、黙って、顔をかきながら視線だけ横に逃げた。照れてるようで、中学の時から変わらないな、と思った。

「お前はむかしっから、けったいなやっちゃで。」

「助かったよ。ほら。」

 そういって、僕とトウジの横にいるアスカに目を向けた。唇を鼻に近づけるような、いじけるような顔をして横を向いて固まってる。

「アスカもそう思ってる。」

「ブワハハハ」

「はっはっはっは」

 ケンスケもつられて笑い出した。

 アスカが真っ赤な顔になって

「三バカ!」

と叫んだ。

「本当にありがとう」

 そういって、トウジと握手した。せっかくと思って、少し抱き合った。距離が少し近くなって、中学の時間が大人の僕に近づいた気がした。

 

「マリ」

「にゃぁにかなぁ?姫ぇ?」

 久しぶりにいじわるそうなマリのしゃべり方を聞いた。

「ごめんね」

 珍しく、本当に素直にそう言った。小さい声で。

 その姿がよほどかわいかったのか、マリは指をわきわきした後アスカに飛びついて、抱きしめていた。

「またいつでもおいで。姫。いつだって大歓迎だよ。」

「うん」

「でも、うちのダーリンにも同じように言ってくれるかなん?」

 眉間にしわを寄せてるのが、見なくてもわかる。でもマリに連れられて、僕の方にやってきた。

「シンジ」

「うん」

「・・・・・・・・・・・・ごめんね。」

 たまらなくかわいかった。抱きつかなかったけど。

「また、いつでもおいで。」

 本当に幸せな気持ちになったので、本心で笑いながらそう言った。

 でもなぜか赤い顔したアスカに脛を蹴られて、赤い顔したマリに肩を殴られた。

 なぜ。

 ケンスケが横で笑っていた。

 

 あとで聞いた話だけど、リツコさんを研究所で降ろした時に、

「あまり、こういうこと言わないけど、また、みんなであつまりたいわ。」

と言っていたそうだ。

 僕もみんなと集まりたい。

 僕を良く思っていない人とも。

 仲良くなれるかはわからなくても、話がしてみたいと思った。 

 

 

 

 家族を起こさないように静かに家の台所にいた。今日はちょっと疲れた。時間を考えれば当たり前で、もう家族のみんなは深い眠りの中にいる。コップに水を入れて飲もうとしていたところで、後ろの戸が開いて、ヒカリが近づいてきたのがわかった。

「おかえりなさい。」

「あぁ、すまん、起こしてもうたな。」

「んん。寝れなくて。」

 自分に気を使って、そう言ってくれているんだろうと、思った。愛おしくて、申し訳なくて、それ以上何も言わなかったし、聞かなかった。台所のシンクに手を付きながら、水を飲んでいると、何かをしなければいけないわけでもないのに、自分に並んで立っているヒカリを、小さいオレンジ色の電球の光が包んでいた。

「すまんかったな。連絡いれなくて。」

「いいのよ。アスカは?」

「万事うまくいったわ。ケンスケのところにおる。」

「そう、よかった。あなたもゆっくり休んで。」

 ヒカリから目が離せなくて、しばらくぼんやりと見ていた。寝間着に寒くないように布を羽織っている。

   君は幸せになるべきだと思ったんだ

   勝手ね

 公園でケンスケが言ったセリフが思い起こされた。勝手な言い分だ。

 でも気持ちがわかってしまった。

 ヒカリは、もっと幸せになるべき存在なんじゃないか?

 街は発展してどんどん便利になる。村も発展していけばいいと思うけど、反対にもしかしたら小さくなっていくのかもしれない。世の中の流れは、自分の考えに合わせてはくれない、ということも大人になって分かったことだ。自分が街で暮らすということが、どうにも想像できない。年齢を重ねると、自分の自由が少なくなっていく、と聞いたことがあったが、実感として付きまとうようになった。

 いや、環境が、じゃない。自分みたいな人間に寄り添うことで、この女性がその魂に見合う幸せを、自分のせいで取りこぼしているんじゃないか。そう思うといたたまれなくなった。

 コップをシンクに置くと、ヒカリの手首をつかんでから、近づいて胸に抱き寄せた。ヒカリはちょっとだけとまどった顔をしたけど、何も言わず自分の背中に手をまわしてくれた。

「・・・どうしたの?」

「・・・ありがとうな。ほんま、ありがとう。」

 そういうと、ヒカリも何も聞かなかった。

 綾波、ケンスケ、式波、シンジ・・・

 今日は久しぶりに、古いなじみに一度に会った。それであてられてしまったのかもしれない。

 ツバメの寝顔が、まだ見ていないのに、瞼にうかんだ。

 なぜか急にさみしさが押し寄せてきた。ヒカリの匂いがして、その安心感で、さみしさを消していた。

「あなた、あのね・・・」

 

 

 

 シンジ君の家に着いた。

 みんなと別れて二人っきりになってから、まだ一度も会話していない。

 姫が幸せになれた余韻もあったけど、それとは別の理由で黙ってた。

 まだ口きいてあげない。

 もらった鍵で玄関開けて、シンジ君より先に電気つけましたよ。

 勝手知ったるなんとやらですから。

 シンジ君も何も言わないくらいの仲ですよ。

 しかし普通さ、あそこまでしますかね。

 今の恋人の前で。

 そりゃ姫のことは私も好きですよ?

 でもそれとこれとは話が別じゃないですか?

 なんでもいうこと聞くよ、だって。

 私にそんなこと言ったことありましたっけ?

 階段ホールで何してたわけ?

 何したっていいよ?

 姫を救うためだもんね。

 冷たく突き放せなんて野暮は言いませんよ。

 スーツに涙の跡がついててもね。

 わざわざ細かく聞きませんよ?

 イイ女だから。

 でも私もたまにはね。

 甘えたくなる女ですよ?

 みんなそうでしょ?

 なんかフォローとか大事でしょ?

 そりゃね。私も待ってますよ。

 わざとのんびりジャケットを椅子に掛けたりしてますしね。

 荷物もゆっくり棚に置いてますし。

 シンジ君が甘えて、後ろから音もたてずに近づいてくるのを待ってますよ。

 ほらきた。

「だ~れだっ。」

 そういってシンジ君は後ろから抱き着いてきた。普通目を隠しそうなものだが、腕は私のお腹を巻いていた。胸の方まできたら腕をはがして怒ってやろうと思ったけど、それなりに紳士なのが、彼らしいよね。

 それに、力が強めに感じたので、はがさないで、シャツ越しに彼の腕をさすってる。私も私だ。

「女に甘い、イイ男」

 ちょっと意地悪にそう返した。

「・・・まだ怒ってる?」

「なぁにが~ぁ?」

 シンジ君の腕をさすりながらそう答えた。手の甲のちょっとゴツゴツしてるのが私のお気に入り。あと指が細い。それと匂い。

 シンジ君も私の肩に鼻をつけてにおいをかいでる。

こしょばゆい。

 でもまだ許してあげない。

「マリ」

「なぁにぃ?」

「ごめんね。」

「なぁにがぁ?」

 さてどうしたものか。

「ねぇ。」

「ん~?」

「君を許してあげるにゃん、って言って。」

 

 目を細めて彼の方を見た。目を伏せて固まっている。少し怖がっているのかにゃ。

 いじわる心を刺激する子だね。君は。

 でもそろそろ許してあげようか。

 左手を下から彼の頬に添えて、私の方に近づけた。耳の裏の匂いがした。

 唇を近づけて言った。 

「絶対許してあげないにゃん。」

 

「・・・ぷっ。」

「フフッ・・・。」

 二人で部屋の中でクスクスと笑い出した。こういうところが私のお気に入り。

「マリの猫言葉、久しぶりに聞いたワン。」

「あ、ワンコ君だ。」

 また二人でクスクス笑い出した。

 彼の部屋で二人きり。

 幸せな時間だった。

 

 そのうち犬の真似をして、肩をむっちゃ吸ってきた。

 キャアキャア言いながら、二人で笑いあった。

 姫も自分の家で彼と二人きり。

 君も彼と仲良くすると良いよ。

 おやすみ。

 また今度。

 

 

 

 エンジンを切って、二人とも車から降りて、カギを閉めた。

 しばらく出番はないと思う。でもいい働きをしてくれた車をねぎらう気持ちで少しながめた。

 

「さぁ、帰ろうか。」

 

 僕がそう言って、まだ続く上り坂を見た。これから5分くらい上ると、愛しの我が家だ。小さくて、古くて、愛おしくて、アスカのいる家だ。ずいぶん夜遅くになってしまった。街路灯代わりになんとかなっている、ソーラー充電式のライトが無ければ、ほとんど見えないかもしれない。ただ、今日は月の光がとても綺麗だった。

 ようやく帰ってきたんだ。

 

「やだ」

「・・・えっ?」

振り返ると、アスカが両手をポケットに突っ込んで、口を軽く結んでいる。

「やだ」

「やだって・・・帰ろうよ。」

「おんぶ」

「え?」

「おんぶ」

「おんぶ?」

 アスカの目は子供のようになっていて、言うことを聞いてくれないと梃子でも動かない、と決意したみたいだった。僕は口を開けて何か言い返そうとかと思ったんだけど、固まってしまって、それを見てるアスカはずっと固まっていた。

 でも登坂だし、小さい女の子ってわけじゃないから、なかなかおんぶといっても大変だよな、とも思ったけど、もう、これはしょうがないのか。

観念してアスカに背中を見せた。

 

「さぁっ、お姫様、これでよろしいで・・・うぉっ!」

 

 僕が準備している最中にも関わらず、僕の両肩に体重を乗せた反動でアスカが飛び乗ってきたから、足がつんのめって、倒れはしなかったけどふらふらと千鳥足になった。

 

「ほらっ。頑張れっ。お父さんっ。」

「お父さんって。」

 

 バランスをとって、なんとか立て直すと、アスカを背負いなおした。大人の女性の体だった。

 首にまわしたアスカの腕からいい匂いがした。背中に感じるアスカの体温が愛おしかった。だっこしてあげたいんだけど、大人だから、これでも十分なのかもしれない。僕にとっても、アスカにとっても。

「思った以上に力強く歩くね。」

「そりゃ、毎日歩いてるから足腰は強いよ。アスカも軽いし。」

「当然でしょ。」

「・・・惚れた?」

「うん。」

 自分で聞いてて、照れてしまった。メガネがずれる。全くいい年して何を聞いているんだか。

 でも、悪くない。大人も、子供も。

 だんだんと家が見えてくると、窓ガラスが一部割れた、愛しの我が家の引き戸が見えた。

「あら?窓ガラスが少し割れてるわ。」

「本当だね。」

「誰がやったのかしら。」

「誰だろうね。」

「山賊かしら?」

「そうかもしれないね。」

「怖いわね。」

「かわいい山賊なら別にいいよ。」

「フフッ。」

 首にまわす腕の力が、少し強くなった。

 玄関の前でアスカを降ろして、向き合った。手をとった。お互い目は合わせなかった。恥ずかしかったわけでもないけど、愛おしくてぼうっとしていた。

 それから扉を開けて、中を見た。

ヒカリさんが言っていたおまじない。いろいろあるけど、これはどういう意味だっけ。

 とにかく、言えることが嬉しかった。アスカと声をそろえて言った。

「ただいま」

 

 




 エンディングに向けて、っていうつもりで話を楽しく、でもまとまるようにしようとしました。互いのパートナーと、うまくまとまって、話がまとまる、を目指して。
 スペーシーマン、ってもじってたけど、気にすることなかったかな?ピースフルな雰囲気を作りたかったんです。難しい。
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